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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

いまのままでいいと思ったときから企業は衰退する

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 先日はEMCの新社長会見に参加した。RSA買収のタイミングからEMCの代表取締役社長となった山野 修氏がエグゼクティブ アドバイザーに退き、後任に日本オラクルでハードウェア関連ビジネスの責任者を務めていた大塚俊彦氏が就任した。

 別の記事でもこの件は少し取り上げたけれど、当日の発表会でどんな話題が出たのかちょっと紹介しておく。新社長の就任会見にはアジアパシフィックおよびJapan担当のシニア・バイスプレジデント デビッド・ウェブスター氏が来日しており「EMCのようなIT企業は、変化に十分に追随しなければなりません」とまず語った。ウェブスター氏は「企業の外部の変化速度が内部の変化速度より速ければ、その企業の存続は危うくなる」というジャック・ウエルチ氏の言葉を引用し、企業が変化を速くする必要性を強調する。決算数字が良くても悪くても、変化はしなければならない。このままでいいと思い、立ち止まっていては企業は衰退するということだろう。

 EMCの米国本社では、変化スピードを速くするためにここ最近になってクラウド周りのソリューションとしてCloudscaling、Maginatics、Spanningなどを相次いで買収している。さらにはシスコとの合弁会社として別会社として立ち上げたVCEの株も取得し傘下に収めている。製品周りの組織も変えているそうで「新しくクラウドのビジネスユニットも立ち上げています。グローバルで営業組織の改革もしています。顧客は製品やテクノロジーを買いたいのではなくビジネスインパクト、ビジネスの結果、すなわちソリューションを求めています。そのための変革をしています」とウェブスター氏は言う。

 こういった本社側の変化を、当然ながらブランチにも波及させることになる。各国の現状を見て今後の能力、どんなものが変わりゆく市場で必要になるかを見てきたわけで、この件については前社長の山野氏と半年ほど前から会話してきたそうだ。

「これまでとは違ったアプローチを顧客は求めています。なので変革しないとならない。それをリーダーのレベルで変えていこう、それについて山野氏とも合意しました。これまでとは違った能力を持つリーダーが必要だと考えました」(ウェブスター氏)

 これ、まあ話し合いの上での合意であることは間違いないだろうけれど、山野氏にとっては次のリーダーは君ではないという話をされたわけで、外資系の厳しさを垣間見る出来事だなぁと思うところだ。

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 で、これまでとは違った能力を持つリーダーとして抜擢されたのが大塚氏だ。大塚氏には、Oracleなどでハードウェアとソフトウェア、さらにはサービスのビジネス経験がある。そしてこれまでに変革、変化を重視してきた企業に所属し、その変化をリードしてきた実績があると評価されたようだ。大塚氏にたどり着いたエピソードの1つとして、他のIT企業の社長などさまざまな人と話をしてきた際に、是非この人に会うべきだと推薦されたのが大塚氏だったらしい。他人からの評価がいかに大事かが分かるところだ。

 大塚氏は「OracleにいたころにSunの買収、統合を経験しました。異なる企業文化を統合する、これは非常に大変でした。そういったことを学ぶと同時に肌で感じることができた。IT業界で30年間やってきて、一番大切なのは変化し続けることです。変化をし続けて変化を生み続ける。そうしないと差別化した価値を生み出せないと考えています」と言う。そして、EMCという会社は変化をし続ける企業だとも。その原動力はイノベーションに対するたゆまぬ投資があること。継続した売り上げの12%を研究開発に、約10%を企業買収に投資している。もう1つのEMCの印象がカスタマーファースト。「これは、強く感じる企業文化です」と言う。顧客の成功に貢献する。そのために如何に迅速に企業の力を発揮するか。そこにはフラットでオープンな会社の組織、風土があるとも。

「EMCはビジネス領域が広がっています。そのため、顧客とのライフサイクルでの付き合いをしていかなければなりません。顧客から信頼される取り組みをし、ビジネスインパクトを具体的に分かりやすく提供できる企業になる。そのために顧客とのリレーションシップを第一に考えます。それからパートナーとの共存共栄関係、それは一層強化していきます。それで顧客に貢献し、パートナーのビジネスにも貢献する。EMCジャパンがまだまだリーチしていないマーケットもあります。それは、パートナーと供にカバーしていきます」(大塚氏)

 買収などでポートフォリオも急速に拡大しているEMC。新しい第三のプラットフォームの時代に、ベンダーとしてどんな役割を示せるのか。「事業戦略を分かりやすく伝えていきたい」と大塚氏。ともすると、まだまだストレージベンダーのイメージもあるEMCの真のメッセージ、真のITベンダーとしての姿が顧客にどこまで正確に伝えられるのか。そのあたりが、ビジネスの成否の鍵となりそうだ。仮に大企業で順調そうに見えていても、企業は立ち止まっていてはあとは衰退するだけというのは、とにかく肝に銘じておきたいことだなぁと。

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