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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

OracleとSunの融合から4年、4年の歳月を経て、両社のコラボレーションの本命がやっと登場するのかも

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 8月1日に「企業のクラウド基盤を支えるオラクル・ハードウェア製品戦略」という説明会に参加した。OracleがSunを買収してすでに4年が経過したそうだ。時間の経過はずいぶんと速い。

 当時は買収先候補にIBMの名前も挙がっていたっけ。ハードウェアビジネスをスリム化しているIBMの現状を見ると、買収したのがOracleでよかったのかなとも思うところ。

 個人的にはIT業界に入った25年ほど前からしばらくは、端末はずっとSunのワークステーションだった。Sun3、Sun4、Sun Sparcといったマシンを開発やら雑誌の編集やらで占有できた時代で、それはすごく恵まれていて使いやすい環境だったことを覚えている。おかげで、いまだにキーボードは[A]の横に[Control]がないとダメだし、エディタはEmacsだし。

 そんなことはさておき、4年経ってやっとハードウェアのビジネスは復調の兆しだとのこと。いま注力しているのは、ソフトウェア・イン・シリコン。先日発表されたOracle Databaseのインメモリデータベース機能の技術とも一層コラボレーションしさらに加速させる。SPARCプロセッサのロードマップは5年先までが公表されており、順調にリリースしていく。次世代のT7、M7(仮称)もすでに最終のテスト段階に来ているようだ。

 さらに次の世代についは新しいコアを作ることになっており、それが8シリーズになってくる。8シリーズのコアなどを拡張するのが9シリーズというところまでがロードマップに載っているところだ。このリリースのペースはSunの時代よりも速く、Oracleになってからよりたくさんのプロセッサを出荷している。決してOracleになってハードウェア投資が小さくなったということはないことが強調されていた。

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 ハードウェアに近いところにあるSunのもう1つの資産が、OSであるSolarisだろう。最新版となる11.2が7月31日にリリースされた。今回のバージョンでは「完全なマルチテナント分離」を実現したそうで、仮想的に完全な分離をすることでセキュリティを担保できると日本オラクル システム事業統括 プロダクト・マネジメント・オフィス 本部長の宮坂美樹氏は言う。仮に侵入されても、分離された環境に閉じ込められるというわけだ。その分離の完全性が高まったようだ。

 もう1つSolarisでの追加は、OSのレベルでOpenStackに対応したこと。これでOracleのハードウェア、ソフトウェアでなくても対応可能なハイブリッドクラウド環境に対応する。垂直統合に力を入れるOracleのOpenStack対応というのは、業界的にも注目を集めそうだ。

 また11.2では、物理環境で作っていたさまざまな設定をテンプレートとしてクラウド側に流し込むことができるようになり、物理からプライベートでもパブリックでもクラウドに移行しやすくなる。もちろん逆にクラウドから物理に戻すのも容易だ。

 そんなOracleの日本でのハードウェア戦略は3本柱で、1つめがホワイトスペースにアプローチするというもの。これは人事やマーケティング、会計などのアプリケーションに対するニーズに対して、ハードウェアを組み合わせて攻めるというもの。

 2つめがOracle On Oracleで、ソフトウェアとハードウェアの組み合わせ。ここはいわゆるエンジニアードシステムが武器となる領域だ。3つめがパートナービジネスの強化で、このあたりはこれまでやってきたことの延長線上だろう。それをCTCと共同で設置したOracle製品の検証施設である「Oracle Authorized Solution Center」みたいなものを活用してより強化していくことのようだ。

 ところで、今後もOracleではハードウェアのチームとソフトウェアのチームが綿密に連携していくのが基本の戦略だ。それにより、ハードウェアだけで速さなりを追求するのではなく、ソフトウェアやアプリケーションを含めたシステム全体の性能向上を目指していく。これはすごく理解できるのだけれど、であればなぜフラグシップである「Oracle Exadata Database Machine」は「Intel+Linux」が基本の構成なのだろうか。「SPARC+Solaris」のほうがよりハードウェアとソフトウェアの連携は密にできるのでは。そのほうがOracleのフラグシップの環境にはふさわしいのではと、かねてから思っている。

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 これについて、日本オラクルの常務執行役員 システム事業統括 飯尾光國氏は、SPARC+SolarisのSuperClusterのほうが米国などでは成長率は高いと言う。米国ではSPARCかIntelかではなく、Oracleのエンジニアードシステムとしてハードウェアが評価されており、適材適所で選択されていると言うのだ。なるほどねと思う一方、そうであってもなお個人的にはExadataの名前を冠したSPARC+Solarisベースのハイエンド・データベースマシンの登場を期待してしまう。

 実際にそんなマシンが登場するかどうかは分からないが、来月米国で開催される「Hot Chips: A Symposium on High Performance Chips」というイベントにはOracleもプロセッサーベンダーとして参加し、新たな発表を行うようだ。このイベントで、どうやら「驚くような発表」があるのではとのこと。

 OracleがSunを買収してから4年、プロセッサの開発には最低でも3年はかかることを考えると、Oracleとの融合による本当の意味での効果が出てくるのがこれからということになる。つまりは、SPARCのソフトウェア・イン・シリコンのあたりの機能の本命的なものが発表されるのではと。これが本当ならSPARC版のExadataもまんざらない話しではないのではと思えてくる。

 Hot Chipsの後には、Oracleの年次イベントOracle OpenWorldが控えている。今年の発表の目玉は、そのあたりなのかなと想像してみたり。ハードウェアの新製品は、なんだかちょっとわくわくする。

 ところで、下の写真は本日のランチ付きの説明会で配られたジュースの缶。夏らしいスイカのサイダーで、オラクルレッドの缶ということで、わざわざ通販で取り寄せたのだとか。お味のほうは、ちょっと甘め。


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