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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

2012年は始めの一歩、さて2013年以降の電子書籍はどうなるのか

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 エンタープライズITの展望的なことを書いたので、もう1つの注力分野である電子書籍の展望についても書いてみたい。

 Koboの提供開始、Kindle Storeのオープンなどもあり、本当の意味での電子書籍元年だった2012年。これでやっと、先行する欧米と同様な電子書籍環境が手に入ったことになる。あ、もちろん、読める電子書籍の数は、まだまだ追いついているわけではないけれど。

 年初には、残る1つのApple iBooks Storeも近々、日本でオープンするのではとの報道もあり、さらに追い風は吹いている。とはいえ、電子書籍ストアーは、日本では乱立している情況、今年はむしろその淘汰が早くも始まるかもしれない。強いのは、やっぱりAmazon Kindleか。個人的には紀伊國屋のKinoppyに頑張って欲しい。最後発になるAppleはiPadのデファクトとして、ある程度のシェアを確保できるとは思う。けれど、出版社がどのような対応をするのか、その結果どのようなバラエティを揃えられるかで成長率が変わりそうだ。

 ユーザーとしては、最初はいくつか試すことになるかもしれないが、やがては1つか2つに集約することになるだろう。その際にポイントとなるのは、クラウドの活用か。Kindleのどの端末で読んでも読書が継続できるというのは、優位性になりそう。マルチデバイスに対応しないApple iBooksは、ちょっと不利な面もありそうだ。

 さて、ここまでの電子書籍の情況は、これから本格化する電子書籍の世界における、「最初の一歩」にすぎないと思っている。現情はあくまでも紙の書籍流通を電子に置き換えただけ。まだまだ、電子ならではの「良さ」みたいなものは、十分に発揮されていない。むしろ、紙と遜色のない「読書環境を再現する」のに苦労してきたと言ったところ。なので、端末の出来そのものが話題になりやすいというわけだ。

 電子ならではの、「次のステップ」がこれからやって来るはずだ。少しずつはじまっているのは、シリーズもののセット売りとかだろうか。コミックの1巻だけは格安や無料で提供するといった、マーケティング的施策との連携も電子はやりやすい。時間を区切ったタイムセールスなんてものも、紙の書籍ではなかったものか。とはいえ、これらだって紙でやろうと思えば出来なくもない。

 今後とてしは、動きのある電子書籍や、インタラクティブ性のあるコンテンツなどが出てくるはず(と信じている)。動画を埋め込めばいいというわけではないけれど、操作マニュアルなどは文章や写真よりも動画のほうが明らかに理解しやすい。さらに読み上げのような機能も、まだまだこれからだろう。たとえば、電車が空いているときは「読む」けれど、混んできて読むのもままならなければ「聞く」なんていう「読書スタイル」も電子書籍なら可能だ。

 インタラクティブ性を追求しすぎると、Webとどこが違うのだという話しになりかねない。しかしながら、Web的なテクノロジーについては、「見せ方」の話しというよりはコンテンツそのもの表現の選択だと思っている。

 まあ、「電子書籍」という言葉や形に拘っていても、新しい革新的なものは生まれてこないだろう。であれば、どこかでそれを捨てることも考えていくべきかもしれない。

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