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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

機能はたくさんいらない

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 10月に開催されるCloudforce 2010 Japanのイベントに、ブレインハーツ株式会社が出展することになった。そんなわけで、最近ちょっとばたばたしている。

 ここのところ、各種イベントやカンファレンスには取材する立場で参加していたけれど、出展社になるのはずいぶんと久しぶり。なにをどう用意していけばいいのか、過去を思い出しながら準備している状況だ。今回出展するのは、SalesforceをPaaSととらえ、その上で動くOEMアプリケーションだ。内容は幼稚園や保育園など、給食を提供している施設のための給食管理システム。もともとはMicrosoft Accessベースのスタンドアローンアプリケーションだったのだが、それをApexコードを用いforce.comのネイティブアプリとして移植を行った。

 なぜにクラウド化したかというと、スタンドアローンのアプリでは、どうしても出張してサポートすることになり、その手間がばかにならないこと。さらに、PCのOSやらパッチやら環境が変わるたびになんらか対応するのは、顧客にとってもアプリ提供側にとっても負担だということがあげられる。クラウド化することで、Webブラウザさえあれば職場でも家に帰ってからでも、どこでも作業ができるというメリットも新たに生まれる。

 ところで、SalesforceのOEMアプリケーションにするにあたり、製品の今後の拡張を考えるために、ユーザーにあらためてヒアリングを行った。こんな機能が欲しいという要望が出てくるものだと思っていたら、「これ以上機能は増やさなくていい」とのお言葉。顧客から我々の製品への評価は、「本当に利用する機能に絞り込まれてシンプルなところがいい」というものだったのだ。世の中には弊社の製品よりも多機能でよくできているものもあるけれど、ほとんどの機能が多くのユーザーには必要ないとのこと。機能が増えると使い方が難しくなるし、コストが上がることを懸念しているとのことだった。

 ということで、機能を増やすのではなく、使い勝手の向上などにしばらくは注力することになりそうだ。ただし、このヒアリングの際に、別のアイデアはもらえた。それはこの給食管理システムと直接連携するものではないが、関連するアプリケーションとして開発できそうなものであり、まだあまりシステム化がなされていないとのこと。そしてこのアイデアは、Salesforeをプラットホームにするのなら比較的に短期間で実現できそうなものだった。ということもあり、急ぎこの新しいアイデアの実現に力を割く方向に修正されたのだった。

 ユーザー的には、シンプルに自分の欲しい機能だけを選べるほうがいいとのこと。今回のようにITに関しては比較的スキルフルじゃない顧客を対象にする際には、とくにこういう傾向は強くなるのかもしれない。こういった顧客に対応するには、じつはクラウドの仕組みはけっこう向いている。独立性の高い形で機能をクラウド上に用意しておき、ユーザーには自分の使いたいものを自由に選んでもらうのだ。この必要なものを選ぶというのは、iPhone/iPadのサービス形態にも通じるところがあるなあと思うところだ。

 よい製品を作ってたくさん売りたいと考えたときに、技術者的にはあれもできてこんなこともできて、競合製品よりも機能豊富なところが売りということになりがちだが、むしろ如何にして余分なものを切り捨ててシンプルにできるか、それを素早く安価に実現できるかを考えたほうがよさそうだ。それがクラウド時代の製品開発における、有力な1つの方向性なのかもしれないと思うところだ。

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