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クラウド上でCRMを提供するOracleとCRMをベースにクラウドを展開するSalesforce.com

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 先日は、Salesforce.comが話題のSalesforce Chatterのお披露目をする盛大なイベントを開催した。そのすぐあとには、OracleがOracle CRM on Demandの新バージョンの発表を、さり気なく行っていたのだった。

 この記事にもあるように、Oracleが認識しているSalesforce.comとの競業状況としては、まず価格では優位性があり、さらに標準機能としてCRMに加え情報活用できるBI機能を持っているのもリードしているところだとのこと。CRMそのものの機能の部分は、両社のサービスは遜色なく顧客の要求に十分に応えられると言うのがOracleの主張だ。

 いくつか、Salesforce.comやOracle CRM on Demandを導入した顧客の声を直接聞く機会を持ったことがある。もちろんそれぞれにさまざまな顧客がおり、彼らの使い方は一様ではない。とはいえ、双方のサービスを利用している顧客には、なんとなく傾向というか特徴的なイメージがあるなぁと思っている。

 Salesforce.comの成功事例の多くでは、force.comのようなプラットホームのサービスが出る前から、Salesforce.comのサービスに独自に手を加え自ら工夫して利用しているイメージが有る。顧客によっては、そこまで手を入れたらそれはCRMとは呼べないのではというくらい徹底的にカスタマイズしている例も見受けられる。確かに、ベースとなる部分は顧客情報だったりするので、CRMと言えないこともないのだけれど、いわゆる標準的なSFAやマーケティング、フィールドサポートの使い方ではなく、その会社独自のビジネスのプロセスを組み込んでいるのだ。

 これに対しOracle CRM on Demandの場合は、いわゆるCRMを実現したくて、そのプラットホームをクラウドに持っていったというような顧客が多いように思える。なので、比較的Oracleの提供するサービスをそのまま利用しているイメージが有るのだ。もちろん独自のカスタマイズは施すのだけれど、あまり基本的なプロセスから逸脱することはなく、比較的標準的なCRMを実現しているように思えるのだ。

 これは、どちらがいいとか悪いとかいう話ではもちろんない。Salesforce.comの場合は、何かしたいとなると顧客自らどんどん手を加えていくことになる場合が多いので、自分たちに合ったものを創りだすことができる反面、自らが相当なSalesforce.comの使い手になることが求められる。そのため、まずはカスタマイズのための研修受けてね、といったようなアプローチになることもある。

 逆にOracle CRM on Demandの場合は、CRMをやるためのものは全部便利に揃っているから、すぐにクラウド上で使い始めましょうというアプローチになりやすい。この場合比べるのは、オンプレミスのCRMシステムではないだろうか。CRM on Demandを利用している顧客の言葉で印象的だったものに「我々は自分たちに合ったシステムを作りたかったのではなく、(CRMのアプリケーションを)すぐに利用したかったのだ」というものがある。つまり、作るよりも利用することを選んだということだ。

 Oracleの場合は、CRMを実現するのにどうするべきかを考え、その答えとしてクラウドもオンプレミスも用意し、それらを用いて最適な回答を用意する。Salesforce.comの場合は、クラウドを活用したい人にCRMという武器をベースに簡単にシステム構築できる環境を提供している。これが、クラウド上でCRMを提供するOracleと、CRMをベースにクラウドを展開するSalesforce.comの違いなのかなと思うところだ。

 この違いにより、Salesforce.comのほうには、Chatterのようにまだビジネスの現場で本当にどのように活用出来るかわからない新しいものでも、どんどん取り入れるスピード感やワクワク感がある。対するOracleは実直にビジネスのためにクラウド上でCRMを実現するにはどうしたらいいかを考え、BIなどの必要な機能を確実に取り込んでくるので、安心感や安定感があるように思えるのだった。

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