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7世代先のことを考えて行動する

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 「極東ロシアのタイガの森から 日本とつながる生物多様性」というセミナーに参加してきた。生物多様性を確保していこうという話は、理解はできるけれど実際のところどのように関わっていけばいいのか、ちょっと難しいところもある。

 かの養老孟司氏は、生物多様性は言葉というか概念で理解しようとするのではなく、感性で理解すべきものだというようなことを言っているとか。さまざまな生物が暮らしている状況というのは、たしかになんとなく心地よい環境のようには思えてくる。

 とはいえ、企業なりが生物多様性保全の活動を実施するには、さすがに感性だけでは理由が付かないだろう。完全な社会貢献として携わるにしても、それを行うことが社会的にどのような意味をなすのかを明らかにする必要がある。もちろん、何らか数値なりで効果が示せるに越したことはない。

 この企業としては関わりにくい生物多様性分野の社会貢献に、積極的に参画しているのがリコーだ。彼らのいくつかある社会貢献活動の1つとして、生物多様性を確保するための活動に、すでに20年間にわたり携わっているのだ。

 彼らが生物多様性を確保する生態系保全ということを、どのように捉えているかというと、1つには製造業で製品を生産する上での原材料を生物生態系から得ているという。たとえば、水を製造過程で利用するならば、当然それは自然界からやってくる。そのほかのさまざまな原材料も、地球という環境が健全でないと得られないのだ。

 医薬品などは、直接的に自然界から得られるものを使って、新薬などを開発、生産することも多いので、生態系を守らなければならないことは結びつけやすい。しかし、コピーやデジカメの製造と森林や野生動物が豊富にあることを結びつけるのは難しい。それでも、リコーは会社として、これが重要だと考えている。企業が生態系に配慮した活動をしなければ、やがては企業活動が存続できなくなると考えているとのことだ。

 リコーは、2008年に「企業と生物多様性イニシアティブ」へ参画し、ドイツの「ビジネスと生物多様性に関するイニシアティブ」のリーダーシップ宣言にもいち早く署名している。そして、各地で森林保全の活動に参画し、その1つとしてNGOのFoE Japan地球・環境フォーラム、パタゴニア日本支社と協力して「タイガの森フォーラム」の活動を始めたのだ。

 ロシアのタイガの森の樹木は、伐採されて日本で建築材として利用される。タイガの森が伐採されると、日光が凍土に当たるようになり凍土が融けてメタンガスが発生し地球温暖化を促進するという。もちろん、森が減ればそこを生息場所としているアムールトラなどの動物の数も減ることになる。この日本とも関わりの深いタイガの森を、世界遺産になるように働きかけていくとのことだ。

 このセミナーでリコーの社会環境本部 環境コミュニケーション推進室の岸 和幸氏は、「7世代先のことを考えて行動する」という言葉を伝えた。これは、北米の先住民族の言葉らしい。自分たちのため、次世代のためできることから始める。これこそが、リコーグループの環境活動の根底にあるものだ。

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