むささびの視線:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) むささびの視線

鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

 日本オラクルが、プレス、アナリスト向けに2008年度の事業方針の説明をおこなった。多くの企業を吸収したM&Aは、まだこれからも続くだろうとのこと。対象となるのはテクノロジー系の製品よりも、どちらかといえばインダストリーに特化したソリューションを提供するアプリケーション製品が重要視されそうだ。

 オラクルの成長の戦略は、M&Aだけでない。フォーカスしている1つがSaaSだという。将来的にはSaaSにより、ソフトウェアのサービス化はより推進されると予測しているが、しばらくの間は自己所有とSaaS型のハイブリッドとなるだろうとのこと。これは、現在のSaaSサービスが、それだけではすべてのIT要求を満たせない状況をみても明らかだ。

 当然のことながら、ハイブリッドとなれば総合的、網羅的な製品ラインナップをもつオラクルには強みがある。SaaSで先行するSalesforce.comは、ハイブリッド型のシステムを自社だけのソリューションでは構築できない。もちろん、Salesforce.comもこれに対し手をこまねいているわけではない。SaaSプラットホームという新たな戦略で、SaaSの上にシステムを構築し、SaaSからSOAで既存システムと連携するソリューションを展開する。

 始まったばかりのこのSaaSのハイブリドの戦いは、最終的にどんな結末を迎えるのだろうか。この戦いの行方に影響を及ぼすとも思えるのが、ベンダーのライセンスモデルの変革だ。オラクルのように、製品を販売することを軸に極めて高い売上げ、利益を上げているビジネスモデルでは、一度製品を開発すればあとは売れれば売れるだけどんどん儲かる。対してSaaSは、サービスを使ったぶんだけの課金モデル。初期の売上げは小さいが、使い続けてくれれば着実に売上げが積み上がっていく。

 Salesforce.comの場合には、最初からSaaS型の課金モデルしかもっていないのでビジネスモデルの変革というハードルは存在しない。いまのモデルの付加価値や効率を上げていけば、ユーザーが増えビジネスが成功することになる。対するオラクルの場合は、既存のおいしいライセンス販売のモデルから、最初は大きな売上げが期待できないSaaS型にシフトしなければならない。SaaS型へのシフトは確実に起こってくると思われるが、ビジネスの常なる成長が使命のオラクルは、その変革で成長を鈍化させることなくスムーズに乗り換えなければならない。

 オラクルはこれを、グローバルなパワーを活用することで実現するという。ようは市場を世界に広げることで、世界の中でもっとも安くてもっとも優秀な技術者を活用すれば、コストをおさえて良質なSaaS型サービスが提供できるというのだ。その結果、SaaS型がライセンス販売のビジネスよりも利益を得にくいモデルにはならないという。

 この戦いは始まったばかりであり、NetSuiteなどの新たなプレイヤーも参戦してきて、だれが勝者になるかは今の段階では予測がつかない。ところで、国産ベンダーがこの戦いに乗り遅れたり、後塵を拝するようなことがあるとなると、日本のIT産業としてはちょっと寂しい気もする。

kouta
コメント

コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/7040610

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

谷川 耕一

谷川 耕一

有限会社タルク・アイティー 代表取締役社長、ブレインハーツ株式会社 会長

詳しいプロフィール

カレンダー
2010年2月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif Twitter流行に異議アリ?
約240人のブロガーが、ITにまつわる時事ネタなどを日々発信しているビジネス・ブログメディア「ITmedia オルタナティブ・ブログ」。その中から今週は「Twitter」「携帯電話」「経済」をテーマに紹介しよう。(2/5)

news094.gif ソーシャルメディアマーケティングの具体的戦術
ソーシャルメディアマーケティングの戦略を立案する場合、ソーシャルメディアの特性を理解した上で、目標数値に落とし込む必要がある。マーケッターが最低限理解しておくべきポイントを整理しよう。(2/5)

news094.gif ワクワクさせてよ――目標設定の極意
目標は、組織全体からチームに与えられるものと、チームが自発的に考えて決めるものがあります。自分たちで決める目標はどのようなものが良いのか、しんこちゃんと一緒に学びましょう。(2/4)

news094.gif ネットでリアルを楽しくしたい
SE出身の企業広報マンでありながら、趣味は落語で憧れの人はインディ・ジョーンズとアナログ全開の栗原さんに、ブログを書く理由やネットからはじまるコミュニケーションについて伺った。(2/2)

news094.gif やり直せる時代の新教育論(4)
ソフトバンクなどさまざまな企業において豊富なビジネス経験を持つオルタナティブ・ブロガーの大木豊成氏に、新たな教育論を話してもらう企画の第4回。(2/2)