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鳥のように高いところからの俯瞰はできませんが、ITのことをちょっと違った視線から

人月からの脱出

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 先週の@ITのニュースのトップアクセスは「要件定義カード1枚8万円──脱・人月商売宣言」という記事だったとのこと。カード1枚分の要件定義8万円と決められ、システム開発という作業の費用が明確化するというニュースだ。

 脱人月という話は、いったいいつごろから言われている話だろうか。少なくとも10年以上前には、すでにこの話題はあったように思う。とはいえ、いまだこの考え方から脱することができない。10年以上これじゃあいけない、と思っている人が大勢いるということ。だからこそ、このニュースにアクセスが集まったのだろう。

 個人的には、この方法でも労働の「量」の積み上げであって、費用を明確化するというメリットは確かに大きいが、今一歩脱しきれてはいないように思っている。こういう方法で作業量の部分(実際は難しさも考慮した上での量なのだろう)を明確化するとともに、たとえば通常なら開発期間に3ヶ月かかるものを、今回のメンバーなら1ヶ月で終了できるのでその場合は2倍の費用であるとか、構築したシステムでおこうなうビジネスから得られる利益の数パーセントが費用に加算されるであるとか、何らかの構築の「質」というかシステムそのものの「質」に対する対価を、開発側が得られる仕組みが必要ではとも思うのだが。

 これを実現するのは難しい。発注側からは通常システム構築は費用だとみなされているからだ。作る側には価値でも、受け取る側が単なるコストだと思っているならば、削られることこそあれ追加費用を上載せしてくれる可能性は低い。

 レストランでいいサービスを受けたらチップを払うのとはもちろん違うが、質のいいサービスにはなんらか対価があってもいいのでは。そういったものがないと、提供側の3K状態はなかなか変わらない気がしている。もちろん、提供側の内部で工夫するというのはあるのだろう。上記のカードで明確化する場合でも、要件定義は実施しカードにはするが、内部のノウハウの蓄積で実際の構築はほとんど発生させないカードをたくさんもっていれば、質的な部分を内包できる可能性はある。

 どちらにしても、システム構築を発注する側、受ける側ともに大きく発想を変えない限りは、10年以上続く人月からの脱出という課題は解決しないだろう。

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