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計測できそうでできない多くのこと。エンピリカル(実証的)アプローチで。

near shoreからはじまる請負開発の多層化

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請負の多層化が進んでいる様子を示唆する話を聞いた。このエントリやこのエントリと関連するが、ソフトウェアの分散開発に関するテーマを中心とした会議の講演での話。

講演はシステムインテグレーションやソフトウェア開発を請け負い、オフショア開発している北米の企業によるものだった。nearshore開発のプライマリコントラクタが海外から開発の仕事をとってきた場合、3国にまたがるオフショア開発になる。たとえば北米のユーザから開発委託されたソフトウェアを欧州2拠点でNearShoreする場合、多層化となる。中国やインドが東南アジアの他の国やアフリカへIT教育をして、そこへ再委託しようとしている。多層化の兆しと呼べるだろう。

今回の講演で話されていた多層化の理由はスキルとコストによるものだそうだ。たとえば、UnixサーバとWindowsクライアントが含まれるようなエンタープライズシステムで、Windowsクライアントは安く作れる拠点(拠点A)だが、拠点Aではサーバサイドのプログラムはほとんど開発経験がない場合、その拠点でクライアントは開発するが、サーバは別の拠点で開発する。これ自体は特に珍しい話ではないが、このとき、クライアントとサーバが両方できる拠点を探さず、クライアントの開発はそこに決めて、サーバの開発拠点は他のところを探すそうだ。また、品質が把握できなくなるという理由で、拠点Aにサーバが開発できるパートナをさがしてもらって、その管理も任せるというパターン(商流として下につける)はやらないそうである。あくまで管理は一元化し、比較的明確な区切りがつけばサブシステムに分割して、複数企業や複数拠点で開発することはあまりいとわないようである。

講演では、請負のシステム開発をイテレーティブに進める事例が紹介されていた。要件のヒアリングとイテレーションの結果報告は北米で実施し、ロシアの主要拠点で大まかなイテレーションの計画をたて、主要拠点(設計とコーディング)とNearShoreにあたる副拠点(テスト)で進めていく。実績はそれなりにあるようだ。

求められる品質や納期等、開発のコンテキストについてはほとんど触れられなかったので詳細な情報を見た上で判断する必要があるが、コミュニケーションルールやタスクの分割がある程度うまくできているからこその話ではないかと思う。

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