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「理由がある」と考えてみる

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今期のアニメ「ガッチャマン クラウズ」が一部で好評です。私は映像を除けばいまひとつ好きになれないのですが、ヒロインの一ノ瀬はじめが興味深いことを言います。電車でお年寄りに席を譲らない若者に憤る先輩ガッチャマンの橘清音に対して「みんな疲れてるかもしれないし、病気の人もいるかもしれない」、狭い道路で飛ばしていく車には「病人が乗ってたかもしれないし、奥さんが産気づいたのかも」と言い、そして「そう考えてみれば、あまり腹も立たないんじゃないですか?」と。

ネット上に限ったことではありませんが、「おかしな法律」や「既得権」に対する不平・不満をしばしば目にします。しかし、何事も「何の理由もなく」そこにあるのではありません。あなたの預金は、預金のない人から見れば引き出すお金を持っているという既得権ですし、あなたの定職は、定職のない人から見れば次の日も仕事があるという既得権です。それらが突然降って湧いたわけではないように、世の中の“既得権”もまた、過去の積み重ねで得られた権利です。預金や定職が突然なくなったら困りますし、そうならないような(あるいはなったときに補償される)制度もあります。自分が気に入らない、という理由だけで既得権を潰そうとしたり、前エントリで取り上げたように皆が「他人の既得権は破壊すべきだが、自分の既得権は守るべきだ」と言い始めたら、何もまとまらなくなります

たとえば、最近目にした「再販制度」について取り上げてみます。私も再販制度には否定的なのですが「再販制度には何の意味もないのだ」とは思いません。通常、再販制度は、返品制度と連動しています(近年、書店側の利益率を高める代わりに無条件での返品を認めない責任販売制も増えてきたようですが、これは脇に置いておきます)。書店は一定期間は無条件で返品できるので、売れ残ることをあまり恐れずに多様な書籍を仕入れることができます。日本の書籍流通が「委託販売制」と言われる理由です。一方、出版社は大量の部数が出荷されて喜んでも、店頭で売れなければ大量に返品されるリスクがあります。

再販制度(返品制度)をやめると、原則としては“売れない場合”のリスクが出版社から書店へ移ります。では、出版社は再販制度をやめたがっているかというと、そうでもないようです。いまさらリスク管理のノウハウのない書店が潰れて、ネット販売のamazon依存度が高まってしまいます。再販制度のおかげで、小規模な出版社の書籍でも、書店に置いてもらいやすいということもあるでしょう。小規模な出版社が淘汰されない(寡占化が進まない)ことを是とするか否とするかは、人それぞれ考えも違うでしょう。しかし、一般論として、自分が反対する意見に対しては、賛成する側にはどのような理由があるだろうか、と考えることは、反対意見をより強化するためにも役立つはずです。逆に、そうした考察のない主張は、反論を受けやすいともいえます。

ところで「ガッチャマン クラウズ」がいまひとつだと思ったのは、3話で「品質検査をすり抜けた牛乳が販売機で売られるのを阻止するために鍵を巡ってひと騒動起こした」あたりです。「貼り紙、貼れよ」

ちなみに、同じ日テレで「帰宅部活動記録」という(ギャグ)アニメが放送されています。ジブリアニメとは違った意味で“声優の妙”を楽しめるという点はさておき、なかなか面白くなってきています。日テレの放送以外は有料配信しかないのですが、ちょうどさきほどから次回放送(木曜深夜26:48)まで無料配信されています(会員登録は必要)。今配信されている7話がなかなか見ごたえのあるギャグアニメでした。興味のある方は、ぜひ見てみてください。という紹介をしたかったのが、久々に本エントリを書いた「理由」です。

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