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世界経営者会議(8)2日目:タイ石油公社(PTT) パイリン・チョーチョーターウォン社長兼CEO タイはバイオハブになる

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世界経営者会議レポートの続きです。

タイ石油公社(PTT) 社長兼CEOのパイリンさんは、東京工業大学に留学され、修士と博士を取得された方でもあり、「東京は第二の故郷」とおっしゃっています。

 

【講演より】

PTTはグローバルFortune 84位にランクされる国営石油公社だ。積極的に多角化を進めている。そこで世界で何が起こっているか、その中でPTTの戦略が何かをお話ししたい。

世界では経済的・社会的な変革が起こっている。

高齢化が進展し2050年には65才以上の人口が3倍になる。グローバル化も進んでいるし、気候変動・資源減少の問題もある。一方で人々は、ICTの発達でソーシャルネットワークによりいつでもどこでも常に繋がるようになり、仕事とプライベートの境界が失われつつある。つまりノンストップでビジネスが進んでいる。

ビル・ゲイツが1999年に著書で「全てがリアルタイムに繋がり、ネットワーク化していく」と述べている状況が、まさに生まれている。

私は2014/4/21にシスコCEOのジョン・チェンバレンの招きでシスコ・リーダーシップ・カウンシルに参加した。その際、チェンバレンCEOは「企業は常に環境変化についていくことが必要だ。全ての企業がテクノロジー・カンパニーになっていく」と述べている。

常にイノベーションを生み出し続ける企業が生き残るということだ。だから私も、PTTをそういう会社になるように主導している。

では、イノベーションの観点でどうあるべきなのか?

社会は「サプライ・プッシュ」から「デマンド・プル」に変っている。供給が需要を生んでいたのは昔の話だ。新しい技術に基づいた新しいニーズが、革新的な製品を作る。最終的には消費者ニーズそのものが市場を作り出し、イノベーションがより速い速度で進んでいる。

では未来のマーケティングはどうあるべきなのか?

フィリップ・コトラーは「マーケティング3.0」で、「価値観と人間のスピリットが大切になる」と言っている。さらに我々は環境への影響が大きい生活をしている。持続可能性(サステナビリティ)がビジネスの場でも重要になっている。

 
では世界では何が起こっているのか?

2014/11/2に開催されたIPCC (気候変動に関する政府間パネル)は、「2050年までに再生可能エネルギー比率を現在の30%から80%に増やさなければいけない。さもないと、21世紀終わりには気温が5度上がる」と提言している。

また2014/9/23のClimate Summit 2014では、世界のリーダーたちが「世界の温度上昇を2度に抑える」と合意している。

エネルギーの供給サイド、需要サイドでも取り組みが始まっている、

まず供給サイド。世界最大の石油ガス会社であるサウジアラムコのCEOは2014/10/1に、CO2回収実証プロジェクトを始めるとともに、研究開発費を5倍に増やして排出削減を図ることを表明している。

一方の需要サイドでは、イケアも2014/9/23に、2020年まで販売する家具製品を100%再生可能にすると表明している。

 

このような状況で、PTTの戦略をお話ししたい。

まず「Bio-material (生物材料)時代が始まった」ということだ。

PTTは公営石油会社だが、資源ベースから知識をベースにした企業に変革していく。

既にPTTはバイオプラスティックスでは世界のリーダーだ。さらにタイを「バイオ・ハブ」とするために、エコな工業団地を建設するとともに、バイオハブのバリューチェーンを構築していく。2020年には売上の2%をグリーン関連製品から生み出す目標だ。

 

【質疑応答より】

(「中間所得者層が急拡大したこの10-20年で何が変わったか?」という質問に対して)
タイは日本に似ている。出生率は低く、高齢化が進み始めている。こういった経済的プレッシャーから、共働きがほとんどだ。色々なサービスが生まれている。たとえばガソリンスタンドがコミュニティセンターになっている。夫婦が待ち合わせをして、買い物をしたりおしゃべりをしたりして帰る。ライフスタイルがどんどん変わってきている。コンピュータも24時間x365日運用であり、アジア大陸全体を網羅している。X世代、Y世代が増えるに従って、こういうインフラも増えていく。デパートに行かなくなりガソリンスタンドに行くようになっているので、消費者に対応できるようにするため、たとえばPTTのガソリンスタンドではコーヒーも売っている。このような個人主義的な消費者に対応できるようにしている。

(「チャンスは多いが、課題は何か」という質問に対して)
タイは資金はあるが、ASEAN全体では資金が足りない。いかにして資金を調達するかが課題である。またタイは人的資本が不足している。失業率はマイナスになっているので、近隣諸国から移民を取り込んでいる。自由な労働力の流れが、ASEANの経済に追い風になっている。

(「AEC (ASEAN経済共同体)が2015年末から始まると言われているが、これはうまくいくと思うか?」という質問に対して)
PTTは色々な国で既に数百億ドルもの投資を行ってきた。AECが実現すれば、その投資を拡大していきたいし、ASEANを再活性化できる。6億人の人口を抱えるASEANは中国やインドとも繋がっている。中国やインドとビジネスをしたい人たちにもASEANに来て欲しい。
ASEAN統合はタイにとっても強みになるし、フィリピンと補完関係にある。まだまだ投資が必要だ。ASEAN諸国が我々の投資先になっていく。共同体には期待が高い。政府は、ASEANの他国は、ライバルではなくパートナーなのだ、というように考えを変えなければならない。

(「この5年、10年の中国の役割を聞きたい。特に中国が提唱しているAIIB(アジアインフラ投資銀行)についてどう思うか?」という質問に対して)
→AIIBは、最も歓迎する中国からのメッセージだ。インフラ投資を拡大するにはAIIBはよいコンセプトだと思う。
米国はアジア開発銀行(ADB)を主導している。AIIBとAIDは、もう一つの米中対決なのかもしれない。両国の狭間に入ってしまうので、いかにASEANが独自性を持つかというゲームなのかもしれない。ADB、 AIIBいずれであっても、ASEANにキチンと投資してくれるのであれば歓迎したい。


【所感】

まずパイリンさんのマーケティングへの深い造詣に感服しました。必死にメモを取り、後日、動画と講演資料も見直しました。

アジアで、しかも公営企業が、大きなマーケティング戦略をもって、このようにグリーンプロジェクトに統合的な取り組みをなさっていることに感銘しました。

一方の日本は要素技術はあるものの、このように全体を統合した取り組みはなかなか見られないのが現実ではないでしょうか。むしろ対抗しようとするのではなく、このようなプロジェクトには積極的に参画し、協業していくことが必要だと思います。

ASEAN統合本番が迫っていて、アジア各国の企業が大きな期待を寄せていることも印象的でした。

SMインベストメントのコソン副会長のお話と併せて、アジアのダイナミックな経済活動の一端に触れることができた、貴重なお話しでした。

 

明日も、ASEANにある他企業トップの講演をご紹介します。

 

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