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沖縄出張講演でお話しした、「沖縄へのご提言」

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昨日のブログで、沖縄政経懇話会21様で講演したことを書きました。

講演の最後にお話しした「沖縄へのご提言」をまとめたいと思います。

エッセンスは、観光業の振興です。

 

世界全体で見ると、国際観光は成長産業です。

下記は2014年度観光白書から引用した、国際観光旅行客の推移です。

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では、世界の中でどこが増えているのか、というと、アジア地域です。

世界全体の国際観光客受入数の中でアジア太平洋地域が占めるシェアは、2003年から2013年の10年間で、17%から23%に増えています。

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このように特にアジア地域で国際観光客数が急増している中、日本の国際観光客数は、世界33位です。

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・1位のフランスは、8302万人。日本の10倍。
・12位の香港は、2377万人。面積ではるかに小さいのに、日本の3倍。
・23位の韓国は、1114万人。人口と国土面積が半分なのに、日本の1.5倍。

高度成長期までの日本は、国内旅行客需要が大きかったですし、アジアも豊かでなかったので大きな問題はありませんでした。しかし今後、人口減少で国内旅行客からの需要は減少します。

日本にとって、国際観光客の受入はまだまだ伸びしろがありますし、国内市場縮小の観点でも取り組まなければならない課題なのです。

 

このような状況で、沖縄の強みはどこにあるのか?

地理的に、世界の中でも国際観光客が急増している東アジアの中心に位置していることです。

那覇を中心とした1500Kmの同心円内に、ソウル、台北、マニラ、上海、香港、東京が入ります。(下記の図は首相官邸より)

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円安の追い風もあって、ここ数年間、日本への観光客が急増しています。日本の「おもてなし」文化はアジア各国からも注目されているのです。

日本人からすると当たり前になっていますが、日本の旅行はとても安心です。

海外を旅行したことがある方はおわかりだと思いますが、なかなか安心して旅行できる国はありません。ある欧州の国に行ったときは、店の勘定が合っているか必ず確認しました。人数をごまかされて過大請求されることが頻繁にあるからですが、日本ではまずこういうことはありません。夜中に安心して歩ける国も、多くはありません。

「日本人は優しい」「日本が好きになった」ということは、日本に観光に来た海外旅行客がよくおっしゃることです。

アジア各国からすぐ近くにある沖縄に、この日本文化があることは、大きな強みでもあります。

2年前に繁華街である国際通りに行った時は、ほとんど日本人観光客でした。今は中国人観光客で賑わっています。中国人観光客のビザを緩和したことによるものだそうです。

つまり、沖縄は「アジアと日本の架け橋」になれるポテンシャルがあるのです。

 

さらに2020年の東京オリンピックで、国を挙げて国際観光客誘致に取り組んでいます。

「それって、2020年までの一過性な需要ではないか?」と思われるかも知れません。

実際には、過去オリンピックを開催した国では、様々な施策を行うことで、オリンピック以降も観光需要が成長しています。(2014年度観光白書から引用)

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オリンピック開催は、外国人旅行客のインバウンド観光にとって追い風になるのです。

 

「天の時、地の利、人の和」という言葉があります。

天の時:アジアの国際観光客数が急増している。加えて日本政府も、東京オリンピック開催で2020年まで国を挙げて観光業振興に本腰を入れる

地の利:東アジアの中心地であり、アジア各国からすると、東京まで行かなくても、身近に日本のおもてなし文化を体験できる。

人の和:沖縄全体で、いかに沖縄の産業を振興させるかを考えている

このように考えると、沖縄の立ち位置を活かして、当面の目標を2020年オリンピック開催に置いて、アジアの観光需要取り込みを図るにはベストなタイミングではないかと思います。

沖縄の半分の面積しかない香港に、日本の3倍もの国際観光客が集まっていることを考えると、市場の潜在規模は極めて高いはずです。

 

そのためには、沖縄の強みを活かして、観光客が「是非沖縄に行ってみたい」と思う「お客様が買う理由」(バリュープロポジション)を創り出すことが必要です。

そして沖縄におられる様々な人たちが自分の強みを徹底的に考えて、様々なターゲット顧客に対して、「是非沖縄に行ってみたい」という理由を数多く創り出していくのです。

たとえば、琉球古武術のことを知れば、少ないながらも「是非学び、体験したい」という人がいるでしょう。

あるいは、リゾートとしての沖縄に魅力を感じる人もいるでしょう。

琉球文化も、素晴らしい観光資源です。

現在検討されているカジノ構想で、是非沖縄に来たいという人もいるでしょう。

そのようなターゲット顧客とニーズを絞込み、「お客様が是非買いたいという理由」を創り上げていく。

それらを数多く作り、情報発信していくことが、沖縄の振興に繋がっていくのではないかと思います。

 

沖縄のますますのご発展を願っております。

  

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