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スターバックスのインスタント「VIA」が、意外に美味しい

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あのスターバックスは、実はインスタントコーヒーを開発・販売しています。

インスタントコーヒーを開発した経緯については「スターバックス再生物語」の第27-28章(p.304-332)に書かれています。

ドン・バレンシアという細胞生物学者が、自分の研究室で細胞をフリーズドライにする機械と手法を使って風味と香りを保ったままコーヒー濃縮液を乾燥させようとしてチャレンジした試作品がもとになりました。

ドンはこの試作品をスターバックスに持ち込み、その試作品を1989年に飲んだCEOのハワード・シュルツは「これがインスタント」と知って驚愕します。

1993年、ハワード・シュルツの招きで、ドン・バレンシアはスターバックスの研究開発責任者に就任。

「インスタントコーヒーを飲まない人が飲むためのインスタントコーヒーを作る」ことを目標に試行錯誤が続けられ、2007年に製品は完成。同じ2007年末、ドン・バレンシアは癌でこの世を去りました。

「スターバックス再生物語」で、ハワード・シュルツはなぜインスタントコーヒー発売を決意したかを述べています。

---(以下、p.321から引用)----

インスタントコーヒーを販売するという大きな決定ができるのは、その商品が成功することを知識に基づいて信じているからだ。まず、品質が素晴らしいということ。また、巨大な市場があるということ(だから開発した)。世界的にインスタントコーヒーは全コーヒー消費の40%を占め、年間売上は200億ドル。そのうち高級市場は34億ドルに近い。何十年も革新が起こっていない市場は、刷新の機が熟している。消費財事業を本気で大きな収益源にしようとするのであれば、インスタントコーヒーはまさに最適だ。

--(以上、引用)---

2009年2月、この商品は「VIA」と名付けられて発売されました。イタリア語で「道」という意味があり、さらに開発者のドン・バレンシア(ValencIA)の意味も込められていました。

スターバックスがインスタントコーヒーを発売することについては、投資サイトに「スターバックスよ、やめてくれ!」という見出しの記事が掲載されるなど、大きな反響がありました。

2009年2月17日の記者会見場では、いつも通り、会見前にコーヒーが提供されました。しかしその日提供されたのは、名前を伏せた新製品のVIAでした。

記者会見の後、各社の記事では、

「筋金入りのコーヒー中毒者たちは驚いた。店舗で買うドリップコーヒーと区別がつかなかった」(アドエイジ・ドットコム)

「スターバックスのヴィアを試してみて驚いた。コーヒーの味がするのだ」(スマートマネー・ドットコム)

といったような反応がありました。

 

実は「スターバックス再生物語」のこの部分、近所のスターバックスで読みました。

ふと見ると、店頭でVIAが売っています。

「ライトノート ブレンド」「コロンビア」「イタリアン ロースト」の3本のスティックがセットで300円。「インスタントコーヒー」と考えるとかなり高いですが、購入。

自宅で飲んでみました。お湯を注ぐと、インスタントにない香りに驚き。味もこれまで飲んだことがあるインスタントとは別世界と思えるような美味しいものでした。飲みながら仕事をしましたが、気がつくとコーヒーカップが空になっていました。

私はあまりコーヒーの味覚には詳しくないので、ご参考までに、GIGAZINE編集部での評価があったのでご紹介します。→リンク

誠の記事によると、日本発売は2010年4月だったようです。

 

確かに美味しいのですが、1本100円という価格も「ちょっと別物」という感じです。

先日、近所の東急ストアーに買い物に行ったところ、店頭でもVIAは売っていました。スターバックスの小売戦略は着実に浸透しています。

一方で、日本のインスタントコーヒー市場で70%の圧倒的シェアを持つネスレ日本も、2013年8月末に「さよならインスタント」という大きなイベントを行い、製品を刷新。

コーヒー業界でインスタントコーヒー市場がどのような方向に向うのか、今後の展開を注目したいところです。

 

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