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「宮崎のそとにいる人同士で情報交換したい」「宮崎に住んでいる方に、そとの方々と自然につながっていただきたい」と考えて作ったコミュニティ、「みやざきつながり」。ここでは誠ブログにみやざきつながりの“出張所”を構えて、口蹄疫の話題を中心に宮崎の現状を発信します。

拡大する被害を前に、小さなブログで果たしたいこと

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 口蹄疫は、大変残念ながら、昨日の都城市(高崎町)での発生に続き、日向市、西都市、宮崎市で新規発生が確認される事態となりました。

 これまで「移動制限」区域(半径10km以内)と「搬出制限」区域(半径10km~20km)を設定し、家畜の空白地帯を作ることによってウィルスを封じ込めるという作戦が取られてきましたが、報道された3地域は「移動制限」区域を、また都城市の発生事例は「搬出制限」範囲を大きく超えたところでの新規発生です。昨日のエントリーで「二正面作戦」という表現を使ったのですが、これで、さらに「戦線」が拡大し、「全面展開」のなかで守勢を強いられる状況になってきました。 

この拡大に関してはいくつもの記事が出ているようですので、本日のこのエントリーでは、

•畜産や防疫の問題にド素人の「みやざきつながり」事務局が、なぜ口蹄疫に関わるようになったのか?
•なぜ、ブログ等を通じて情報提供を行うようになったのか?

という点について、「みやざきつながり」誠出張所の立ち位置をご理解いただくためにも書いておこうと思います。


一言でいうと、「思い余って」というほかないのですが、まずは「思い余って」しまうまでの経緯を、なるべく整理してお伝えします。

 本エントリーの筆者(たなか・事務局)は、経済団体の事務局で10年間過ごした後、個人や企業の社会貢献活動の推進をはかる仕事に就きたいと考え、独立して5年になります。
 そのささやかなモデルケースとして独自に「コミュニティ」の運営も行うこととし、自身の故郷である宮崎をテーマに選びました。それが「みやざきつながり」です。「みやざきつながり」は、東京に住む宮崎出身である二人の事務局(荒川と私)、そして120名近くの正会員を中心に、手弁当で運営されています。

 口蹄疫について気になりだしたのは、連休中の4月末。「みやざきつながり」メンバーのなかに、口蹄疫の現場近くの方、あるいは実際に行政職員として資料をまとめる立場にある方などがいらっしゃったことがきっかけで、かなり大変な様子であることを知りました。連休明けには義援金を集めることを決定し、準備を開始。

 偶然、宮崎への帰省を兼ねた出張があったため、その際に義援金の拠出先を決定するための材料を得たいと考えていました。この時点では、「5月中にも被害は収束するはずなので、義援金は前向きなイベントか何かに使うかな」などという認識。

 実際の宮崎出張は5月19日です。「非常事態宣言」の翌日と重なってしまい、予定していた公のイベントや会合は中止となりました。その代わり、仲介者のご紹介で、4日間にわたり、口蹄疫の現場で頑張る皆さんのお話を伺うことができました。畜産農家の方、農業法人関係の方、行政、市民活動・まちづくり団体の方などから、大変貴重なお話をいただきました。

 集めていた義援金の出捐者に対する報告義務として、この出張でのお話をもとに、本当に簡単なレポートをまとめました。
 その内容がこれです。「みやざきつながり」のブログの形で公開しました。

口蹄疫の被害に関する状況と、民間による支援、義援金の状況について(メモ)
~極めて困難な状況で、人の輪が被害拡大防止、そして現場と地域を支えている

 http://sns.myzki.jp/blog/blog.php?key=1720


 あえて淡々と書いてありますが、ポイントは、

・「特に10km~20kmの搬出移動制限区域において、実際には『何の対策も進んでいない』、『そもそも対策になっていない』」、
・「このままでは拡大がとまらない可能性がある。危ないかもしれない」

という伝聞と、民間による支援の困難さという点です。

 ただ、このメモは5月22日までに聞いたお話をもとに急ぎまとめたもの。刻々と状況が変化するなかでアップデートが必要だと思い、数日後に現場の皆さんにお電話しました。

ところが、

・「新しいことはまったくなされていない」
・「現場では混乱が広がるばかり」
・「もう宮崎だけで封じ込められないかもしれない。他所に広がったら大変なことになる」

などとおっしゃるではありませんか。

あらためてもう一度自分の書いたメモを読み返しても、そもそも状況が好転しそうな材料が何一つない。コメント欄の素朴な質問に答えるための良いソースがない。

 この時点が、私個人が「さすがにこれはヤバイんじゃないか?」と「思い余り」はじめたポイントです。ようやく、これまでお世話になった方に「何とかする方法がないのか?」と調べて回りはじめました。

 そうしたところ、普段からとても尊敬しているある方が、

・民主党の先生に個人的にツテがあったとしても、政府と党が完全に分離している今の状況では、伝わらない可能性が高い。
・政府自体は沖縄の問題などがあり、口蹄疫まで手が回っていないのではないか
・結局、マスコミを通じて現場の事実を伝え、いわばアオってもらうのが一番の方法だ

とおっしゃる。ますます途方にくれました。


その後の経緯は、「誠ブログ」の冒頭に掲載させていただいたとおりです。

「口蹄疫の件でご報告です」
 http://blogs.bizmakoto.jp/miyazaki/entry/374.html

 例えば、宮崎から上京された畜産関係者の方に同行する役割をいただき、民主党、農林水産省、農業団体の全国会合などの現場を遠くから拝見するとともに、あわせて新聞やテレビの皆さんにお願いし、現状を知っていただくための努力を行いました。

 あるいは、見聞きした内容をもとに、これまでご縁のあった皆様に対して、伝聞という形ではありますが、できるだけ宮崎の様子をお伝えしました。ジャーナリストの方と、あるいは経済団体、企業、社会福祉団体などでお話させていただきました。こうするうちに、短期間でとても貴重なご縁もできました。

 しかし、大変残念ながら、自らの外側に成果を上げることができたとは言えません。例えば、新聞やテレビの関心を「新たな拡大の危険」に向けることはままなりませんでした。

 5月22日ぐらいに「これは危ない」と感じたわけですが、2週間以上を経た今も、(ウィルスの拡大に追いつかず)状況は好転していません。それぞれのレベルでの善意が不調和して、さっぱり現場に反映されない。

 当初「自身が見聞きした現場の話に拘泥しすぎているため、かなり判断が鈍っているのかもしれない」と感じていた事柄は、さまざまな形で確認するほど「かなり確度の高い事実だ」と考えるようになりました。この基調については、対策本部の設置、口蹄疫特別措置法の施行、あるいは「移動制限」区域内でのワクチン接種の完了など、いくつかのタイミングで好転への期待を持たせてくれながらも、新しい要因が加わりつつ、根本的な変化が起こっていません。

 実際、昨日の時点で、「パンデミック」はさらに拡大する様相を示すに至ってしまいました。一個人としても小さな敗北感があり、大変残念です。宮崎の当事者の皆さんは、さらにどれほどの思いでいらっしゃるか、想像もできません。

 結局、苛烈な苦労を続けているのは現場です。業者同士の助け合い、地域同士の助け合い、獣医師や行政職員の動員、あるいは限られた数の自衛隊員だけで行われている対策に、これからでも何とか変化を加えたい、そう思います。

 中長期的には、危機管理の問題、「食と農」全般の問題に関わることであることは間違いありません。それから、短期的にも、中長期的にも、実際に極めて甚大な経済的損失が生まれ、それが拡大していることも間違いありません。そういう意味では、政府・行政そのものの問題です。

 ただ、一個人としてここでより強調したいのは、例えば最初の罹災地である川南町のことです。開拓者精神に富んだ素晴らしい地域の中心的な産業が壊滅的な被害を被り、生計の糧でありかつ自分の家族同様の家畜を処分せざるを得ず、さらに周辺地域の方々も含め、防疫上の問題から自由な移動もできない、集まりも開けない、市民生活も経済生活も営めないという状況におかれています。子どもがどうしているのか、ほとんど聞こえてこない。
 例えば、地域活性化のモデルとして紹介された「軽トラ市」のような活動も、一切開けない。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20090610/197183/?P=1
 
 そういう状況にある方々が「みやざきつながり」(読んでいらっしゃる方にとっては、例えば「日本」でしょう)の輪のなかにいらっしゃるという事実を耳にして、あるいは直接コミュニケーションを取らせていただいて、少なくとも私たちは「わずかでも何かをせねば」と強く感じました。

 それぞれができることは極めて限られています。また、皆が無理に深刻な姿勢になり、全力で突っ込むべきだとも思いません。何か動きたくても、「防疫上の問題」がタテになって限られた人間しか現場に入ることができない状況で、ヒト、モノ、情報などの面で、極めて相互の動きが分かりにくいことになっています。

 そうしているうちに、被害はあらたな拡大基調に入ってしまいました。こうなると個人でできることはさらに少ないし、効果も目に見えないかもしれません。

 ただ、署名であれ、募金であれ、県外のイベントであれ、あるいはより正確な知識の提供であれ、多様な参加手段が用意されて、それぞれの立場、タイミングでアクションをとるということは、決して無駄ではないと思います。

 私自身、口蹄疫と今の宮崎の状況についてまったく無知だったレベルから、たった2週間である程度様子を理解し、少しだけ行動につなげることができるようになりました。また、「みやざきつながり」としても、応援の気持ちを表明し、少しでも参加できることを提供したいという意味で、まずは「義援金」という手段を提供しました。そして、もっとも効果的な使い道は何か、私たちなりに考えているつもりです。

 また、新たな拡大によって、「宮崎だけ」の問題ではないというシンプルな事実が明らかになりつつあります。もはや、いつ、どこで起きるか分からない「疫病」への備え、それからひとりひとりの関わり方を、立ち止まって考える必要はありそうです。

 そこで、私たちなりにでも、ひとりでも多くの方に、「みやざきつながり」のご関係者や事務局自身の声を伝えたいと思うようになりました。

 そうした経緯や思いが、この小さなブログには込められています。

 皆さんにも、ほんの少しだけでも結構です。それぞれのご専門、ご関心にもとづいて、何か情報収集のアクション、支援への参加について考えてみることをお勧めしたいと思うのです。いかがでしょうか?

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