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「移動制限」「搬出制限」区域での「対策」と「無策」

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前のエントリーとコメント欄で、「口蹄疫への対策は、とにかく殺処分を進め、消毒を徹底すること」であることを、えびの市の事例を通じてご紹介しましたが、今回は、現在の川南町を中心とする地域で取られている対策について整理します。

 

公式発表情報(農林水産省:口蹄疫に関する情報)

http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/

 

の「宮崎県の口蹄疫に対する防疫措置について」を見ると、発生農場周辺では、

  • 半径10 km以内における移動制限の継続中。 移動制限区域内のすべての牛・豚を対象に、殺処分を前提としたワクチン接種を実施。
  • 半径10~20 km以内における搬出制限の継続中。搬出制限区域内の牛・豚の早期出荷を促進。

 

という措置が実施されています。地図上で見ると、以下のようになります。 

http://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_fmd/pdf/hassei0607.pdf

 

6月4日、えびの市の移動制限(ワクチン接種は行われなかった)、および搬出制限が解除されました。これは、移動制限については「最終発生例の殺処分完了後21日間」、搬出制限については「発生から21日間」 が経過したためです。

 

以下、「移動制限」および「搬出制限」内の状況について、簡単に整理しておきたいと思います。

 

「移動制限」区域内では、とにかく「殺処分」を進めるしかない

 

「移動制限」区域内(半径10km以内)では、まず、「牛」に比べて圧倒的に感染力の強い「豚」の処分が優先的に進められています。以前ご紹介した個人によるブログ「データで見る口蹄疫対策:2010宮崎」(最新エントリーは「データで見る口蹄疫対策の遅れ」)では、豚の殺処分が比較的早い速度で進められている様子が分かります。

http://konstantin.cocolog-nifty.com/blog/

 

ただし、例えば現時点で一番処理日数のかかっている「82例目」の豚の場合、発生日が5月12日。前エントリーのえびの市の処分スピードとは対照的に、さまざまな理由で殺処分が進まない事例があることが伺えます。

 

また、豚の作業が優先的に進められているために、牛の処分が遅れている様子も見てとれます。

 

川南町を中心とする宮崎県中央部のエリア内では、まだ殺処分は完了しておらず、また新規の発生も続いているため、収束、制限解除の具体的な目処は立っていませんが、新規発生の件数がかなり少なくなっているのは、さしあたり明るい材料です。

 

「搬出制限」区域内の措置は、そもそも「対策」と呼べるものだったのか?

 

「搬出制限」区域内(半径10~20 km以内)については、 「牛・豚の早期出荷を促進」することが謳われています。まず、2週間前の読売新聞の記事を参照しましょう。

本当にできる?全頭出荷...矛盾だらけの国の対策(読売新聞:2010年5月24日)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100524-OYT1T00640.htm

 

記事によると、

・5月19日の政府の総合対策では、「搬出制限」区域の全家畜を1週間以内に食肉加工して出荷することで、「家畜の空白地帯」を作ることがうたわれていた。すべての牛と豚を1週間以内に食肉加工し、その後、一定期間新たな畜産を行わないという内容。

・しかし、同区域内の加工場は、北部の日向市内にある1カ所。処理できるのは豚だけ。1日の処理頭数は700頭程度(同地域内の豚は15000頭程度)。また、南部からこの工場へは、口蹄疫の蔓延地域があり、通り抜けができない。

・牛の食肉加工場は移動制限区域の都農(つの)町に1か所あるが、この加工場は1例目の感染が確認された4月20日に稼働が停止され、再開の時期は未定だ。区域外には、都城市などにも加工場があるが、家畜伝染病予防法上、この区域から家畜を外に出すことはできない。

・「1週間」で出荷を終えたいとしていたが、農林水産省によると、この区域では、牛は1頭も出荷できていない。

とのこと。

 

その後、都濃町の加工場は、稼動を再開したようですが、さらに読売新聞では、6月3日に以下の記事が出ています。

詳細は記事をご覧下さい。

 

搬出制限区域近くの食肉加工場、出荷ゼロ続く(読売新聞:6月5日)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100605-OYT1T00606.htm

 

記事に出てくる「ミヤチク」都濃工場のホームページを見ると、

http://www.miyachiku.jp/factory/tsuno.html

「と殺解体能力/豚820頭/日 牛60頭/日」となっています。同地域内の牛の数は、前出の読売新聞によると15000頭。割り算をすると250日という数字が出てきます。

 

つまり、10km圏内の拡大が完全に止まったと言えない状況のなか、「搬出制限」区域の対策は、その内容に問題があることが1週間程度で明らかであった。にも関わらず、該当地域の畜産農家は飼っている牛や豚を食肉加工することもできず、また当然、エリア外のどこかに動かすこともできないため、じりじりと待たされていた状況にあり、いまもそうだということです。

 

繰り返し強調していますが、現場では最大限の努力が行われ、それが功を奏して被害範囲も限られたエリアにとどまっています。しかし、「移動制限」区域内の殺処分の遅れがあり、また隣接する「搬出制限」区域の対策はほとんど行われていません。このような状況において、ごく当面の間は「終息に向けた条件が整った」とは断定しずらい局面にあるのではないかと考えています。ワクチンの接種についても、これで完全に「予防」できるというわけでもないようです(効果が続く期間などを要確認)。

引き続き殺処分を進め、消毒などの徹底が必要な状況が続きます。

 

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