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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

自ら方向性を示せるか?

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一昨日、とあるフォーラムで司会とセッションのファシリテーターをした。

課題は一つは企業の決算の開示や、企業の評価の在り方。もう一つはガバナンスの仕組みと、経営者の養成。

上場企業の四半期決算短信における業績予想欄は記載しなくて良くなったが、大部分の企業は第一四半期の短信においてこの欄を記載した。もちろん上場企業だから最低月次で管理会計上は管理しているからやろうと思えば出来るのはわかるが、一方でこの数値があるために、季節性の数値の変化によるものでも一時的な業況を踏まえて短期的に株の売り買いをする投機家が売買するために、株価が不必要に変動することになるし、それ以上にこの数値を公表するために、社内で財務だけではない様々な人々の時間が奪われているのも事実だ。

社会の一員である企業にとって、永続的に社会に貢献し続けるためには、常にイノベーションを興しながら中長期的な視点での経営を行い、株主への配当や短期的な売買によって利益を上げるための株価の上昇を目的とするのではなく、中長期的な成長を可能とする様々な関係者、つまり従業員や取引先、地域社会や環境にも配意しつつ、高い品質の顧客ニーズに合った製品やサービスを常に生みだしていくことが必要であり、そのための中長期的な研究開発や投資が必要になるはずだ。

そして、そのような企業の理念に基づいた行動を評価する投資家との対話を行うために、それに相応しい情報の提供を自ら考え示していくべきで、お仕着せの数字などを示せばよいというものではない。もちろん投資家にとって比較は重要だから、ある程度の比較のためのKPIなどは必要かもしれないが、そもそも大事なのは企業の経営方針をきちんと理解していただくことであり、数字だけを見て日々株式を売買していただくことではない。

株式は有価証券であり、市場で取引されるのはその性質上否定はできないが、その本質は資金調達であって、その資金調達に応じる投資家は、そもそもその企業が何をするのかということを考えて投資を検討するのであって、短期的な数値の変動を見るものではないはずだ。

もちろん個々の企業で、投資家や外部に対し、様々な形で情報を伝えるべく尽力しているところは多々ある。だが、一方でお仕着せの情報もまた提供し続ける。加えて、今度は投資家と情報交換の場を持ったら逆に一人だけに特定の情報を流すことは不適切なので、フェア・ディスクロージャーのルールまでが出来ている。だが、このような極端なパターナリズムが本当に適切なのか?

ガバナンスの仕組みをきちんとしないと不祥事が起きるということで、会社法やコードを含めて、様々なルールが次々と作られる。では、それで不祥事はなくなるのか?ルールに完璧なものは存在しないし、ルールがあれば必ずその隙間を狙う輩が出てくる大事なのはルールではなく、事業活動を通じて社会に貢献するという、社会的存在である企業の本質を認識した経営者を育てることではないか?それがこの何十年かのうちに徐々に弱くなってきたのではないか?ただ、短期的な収益を上げることが大事、という経営が行われてきたのではないか?今一度、良く考えてみるべきではないだろうか?

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