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 セールスジャパンの経営を始め、様々な事業活動に携わるマイク丹治が、日々仕事を通じて感じていることをつづります。国際舞台での活動も多いので、日本の政治・社会・産業の課題などについて、グローバルな視点から、コメントしていきたいと考えています。

市民の意識を知ることの大事さと民主主義

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報道の自由に関する我が国の世界での順位は72位だそうだ。確かに、特定秘密保護法案とか共謀罪とか、どう考えても我が国は自由主義、民主主義の国とは思えないし、現政権が国家至上主義であることも明白だ。だからこそ「忖度」かどうかは知らないが、森友事件も起こるわけだし、一件温和で正常であるかのような現政権のトップが実は内面は恐ろしい暴君であるのかもしれないと感じるのは、私だけではないだろう。

それにしても、世界の政治の中心にいる人々の感性の低さには驚きを隠せない。Brexitもそうだし、トランプ政権の誕生もそうだったが、今回フランスの大統領選において、マクロン氏は確かに優勢だが、だからと言って簡単に勝利宣言をしたり、更には現大統領がその指示をしたりすることが、市民にどう映るか、もう少し深く考えた方が良いと感じる。そういう態度、これまでの秩序を代表するような考え方に嫌気がさしているのが市民の気持ちだとすれば、このような無神経な対応が更に忌避感を生む可能性は否定できない。

我が国においては、国民は比較的おとなしいわけだが、いつまでも唯我独尊のような政治を続けていると、そして原発対応においても、米国追随型の安全保障においても、結果としての国民の安全を顧みない政策を続けていると、どこかで大きな動きが起こるような気がする。そしてだからこそ共謀罪なのかもしれないと深読みしてしまう。

郵政グループの海外投資の失敗が報道されている。考えてみれば、我が国企業も国の経済規模の拡大をベースに巨額の投資を進めてきているが、果たして成功した案件はどのくらいあるのだろうか?私の知る限り、巨額であればあるほど失敗の歴史のような気がするが如何だろうか?郵政のケースは、国内での郵便事業の民営化に伴い、従来から事業展開してきている民間企業との競争力確保のためにシナジーを求めたという図式のようだが、どうも買収先の事業に関する分析が根本的に欠けていたように感じる。

一方で、まさにシナジーを求めて買収しても、シナジーそのものが実現したケースもあまり聞かない。これは恐らく我が国企業のガバナンスや事業運営の在り方が、なかなか海外のオペレーションとは親和性がないということなのだろう。ある意味で、我が国企業が国際経済の中で更に発展していくためには、まだまだ越えなければならないハードルが多々あると感じる。ただ、敢えて私が指摘したいのは、我が国の企業であるからこそ、何を事業の目的にするかを明確にし、それをきちんと海外のオペレーションにも伝播していくことが大事だということだ。

欧米型のガバナンスや利益至上主義を尊重しながら、日本の本社との事業統合を図るなど不可能なことだ。まずは、今一度原点に立ち返り、自社が何を目的にしてきたのか、これかどういう形で社会に貢献するか、ということを明確にして、これをメッセージとして伝えていく、そこからしか日本企業の再生はないと思う。

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