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お客様や部下への接し方を、自分の大切な守るべき人(幼児や高齢者など)に置き換えて考えれば、サービスやリスク回避のためにできることは、まだまだあると思います。コンシェルジュ的発想で「おもてなし」を中心に、気づきを綴ります。

従業員満足から始めよう!

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 みなさん、こんにちは。業務改善アドバイザー「ミエール・デ・キール」の片所(かたしょ)と申します。「よいしょ! どっこいしょ! かたしょ!」と覚えてください。
 このたび、誠ブログに参加させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

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 4月入社の新人たちは、もう仕事に慣れた頃でしょうか? 今月は株主総会があり、それに伴う大きな人事異動が発令されるケースが多いと思われます。これからの異動や中途採用で、新しく入ってくる仲間に対して迎える側ができることとは何でしょうか?

 不慣れな人に思いやりの心をもって親切に応対することは、職場のコミュニケーション上、とても重要なことです。「相手が何を望んでいるか?」「自分は何をしてあげられるだろうか?」と、日頃から上司も新人も分け隔てなくお客様と同様に考えて接していれば、その積み重ね(訓練)は必ず、CS(お客様満足)の向上に結び付きます。

 「従業員は『お客様』ではないし・・・」
はたしてそうでしょうか? 会社を辞めたらお客様に変わることもあります。従業員の家族が、お客様になってくれるチャンスをムダにはできません。

 「新人が入ってきても、なんか続かないんだよなぁ」「今度来た人、あまりなじまないなぁ」
 そういう声はよく聞かれます。「配属時に何がわからなくて、どう困ったのか」などの、会社側の説明が不足していた項目について、それを聴取し次回から補おうとするシステムは整っていません。そもそも新人は入ったばかりの会社に対して「こうだったら良かったのに」などと言えるはずもなく、みんなその場で聞いて解決したらそこで終わり。自分が迎える側になった頃には、その職場の環境に慣れてしまっていて、初めての人の不安な気持ちをなど、すっかり忘れてしまっているのではないでしょうか?

  • 職場のみんなの名前がわからない。どこに何があるのかがわからない。
  • 忙しそうで聞きにくい。聞くと嫌な顔をされる。たらい回しに遭う。
  • 人によって教える内容が違っている。(でも「それが原因で間違えた」とは言いにくい)
  • 決まりごとを知らなかったために、いつも誰かに迷惑を掛けていたらしい。
  • 良かれと思ってやったら「人のテリトリーを侵害した」とか「嫌味だ」と受け取られた。
  • 当たり触らず言われたことだけをやっていたら「気が利かない」と思われていた。
  • 上記のことが原因で、噂話(悪口)のネタになっていた...

 では、そうならないようにするには、どうしたらいいのでしょう? 「やるべきこと」と「してはいけないこと」を明確にし、「必要な情報をファイルにまとめておく」ことです。

 雇用形態の変化によってパートや派遣の採用も多く、人事の異動も頻繁にあります。しかし、そのたびに上級者がつきっきりで新しい担当者がノートを取りながら引き継ぎをしていたのでは非効率です。引き継ぎは「マニュアルを見ながら実際の業務手順を確認」するだけでよいと思います。

 マニュアル作成にはとても時間が掛かり、大変な作業ですが、

  • 忙しい時に話し掛けられなくて済む
  • 言った・言わないの水掛け論を防ぐ
  • 教える人によって内容が違う、ということがなくなる(従業員間の認識の違いを防止)
  • 同じことを何度も聞かれてイライラすることもなくなる
  • 悪口のネタを減らすことができる
  • 聞く時間・聞かれる時間、双方の短縮ができる
  • ミスや苦情の防止になる

と考えます。担当者が病気やケガで突然休むことになった時「その件については担当者が不在の為わかりません」という返事では会社の信用にかかわってきます。

 マニュアルは上級者だけで作ってはダメです。必ず新人を参加させて、新人が充分に理解できるものを作ります。できあがったら他の部署の人を呼んで、そのマニュアルを見て仕事がこなせるかどうかを確認します。そうして加筆修正を重ねながら「誰にでもすぐにできる」マニュアルを完成させます。
 マニュアルはひとつの仕事について作業単位を細かく区切り、できるだけそれぞれがA4の紙1枚に収まるようにすると見やすいです。こうすれば、誰かに手伝ってもらいたい時は、そのマニュアル1枚をコピーするだけで「この部分をお願いします」と素早く簡単に確実に頼むことができます。

 ここで、どの職場でも共通する「配属された新しい仲間に渡したい情報」を挙げてみます。これらの資料は、クリアポケット入れてインデックスを付けてバインダーに綴じます。クリアポケットに入れることで、情報更新の際に差し替えがラクにできます。必要な時にすぐに確認できるように、手元に置いてもらいましょう。

(1)すぐに必要となる情報

  • フロアのレイアウト(係・名前・肩書き・内線番号・コピー機やシュレッダー・会議室・物品庫・トイレ等)
  • 主要なお客様や取引業者と取り次ぎ先担当者の一覧(電話での名前の聞き間違いを避け、迅速な取り次ぎができます)
  • 近隣の地図(コンビニ・飲食店・市役所・郵便局・銀行・駅・税務署・法務局・文具店など)
  • 電話番号簿(タクシー・事務機器の保守点検業者・仕出し弁当屋・花屋など)
  • 緊急時の連絡先(連絡網)・避難場所の確認
  • 電話応対用の「最寄り駅から職場までの道案内」(目印の建物など)と時刻表
  • 郵便物の取り扱い(発信締め切り時間と持ち込み方法、受取時の注意について)
  • 旅費交通費の請求の仕方

(2)小さな決まりごと
 職場のルールについては社員全員で話し合ってテキスト化し、同じ認識を持つことが大切です。テキスト化しておかないと「知らなかった」「あれ? それって○○じゃないの?」と言う人が必ず出てきます。わざわざ書かなくても良いような口伝えの細かいことこそ、実は最も人間関係を崩しやすい原因につながっているような気がします。
 「こんなことも知らないの?」「誰か教えなかったの?」「こうするのが常識だよね?」と言われ、「それなら最初に言ってくれたら良かったのに」というように、何か不都合が起きてからでは注意する方もされる方も嫌な思いをすることになります。

  • 離席時のパソコンの取り扱いについて(ログオフする・電源を切る)
  • 印章の取り扱いについて(外出時の社外持ち出し・昼休みや休暇時の保管場所など)
  • 昼休みの外出について(お弁当の買い出し以外は原則禁止・外食禁止など)
  • 食堂の座席について(男女・係・個人など、暗黙ルールを含む座席ルールの有無)
  • 仕出し弁当の注文について(取扱の有無・業者・価格帯・申込み締切時間・注文方法)
  • ゴミの分別について(弁当の空き箱・生ゴミ・紙類・アルミ・ラップなど)
  • 緑茶・コーヒー・自動販売機・調味料などの有無と冷蔵庫の利用について
  • ガスコンロ・ポット・電子レンジ・トースターの有無と利用について

(3)事務用品については品目ごとに、

  • 会社が用意したものを個人で使うもの
  • 会社が用意したものを共用するもの
  • 会社が指定したものを個人が用意するもの
  • 個人が自由に選んだものを使用できるもの


 以下のような指定があるなら、ハッキリ示しておくことも必要です。
「シャープペンの芯はいただけるのですか?」
「みんな自分で買っていますよ? それぐらい自分で用意してください」
なんて、冷たい視線を浴びせることのないようにしましょう。


(4)会社で使用するものの在庫管理について、食堂やトイレの物品も含め、

  • ここの在庫がなくなったら
  • どこから持ってきて補充する
  • その在庫がどのくらいになったら
  • 誰が
  • 誰に報告して
  • いつ(就業時間中・終業後・昼休み・毎月○日)
  • どこで(どのスーパー・取引先・大型店・ネット)
  • どのくらいを(数・単位)購入し
  • どのようにして代金を支払うのか(現金・振込・翌月一括)
  • 領収証の宛名は(   )で発行してもらう
  • 経費は(  )費からどのように処理する
 

 これらについてマニュアルだけでなく、それぞれ現物の保管場所にもその旨の掲示をしておけば分かりやすいでしょう。

「○○が少なくなりましたが、どうしたらいいですか?」
「あ~それね、どこの担当だっけ? ○○さんに聞いてみて」
「○○さん、○○が少なくなりましたが、ご連絡はこちらでよろしいですか?」
「う~ん、今ちょっと忙しいから、悪いんだけど2階の倉庫から持ってきてくれる?」
「2階の倉庫ってどこですか?」
「階段上がって、まっすぐ行って突き当りを右に曲がって......、ええっと3つ目の扉!」
「あの~ 倉庫に行ったら、鍵がかかっていて入れませんでした」
「あ~ 鍵は、○○課長が管理しているから、理由を言って借りて」
「課長、○○を出したいので、倉庫の鍵をお借りしたいのですが」
「鍵の受け渡し簿には記入しましたか?」
「え? それはどこにありますか?」
「○○さんに聞いてください」  

中略

「2階の倉庫にも在庫がありませんでした」
「え~! 誰が最後に使ったの? ちゃんと連絡くれなきゃ困るのに」
「じゃぁ、○○業者に電話して、至急持ってきてもらって」
「○○業者の電話番号は何番でしょう?」
「あ~、もう!」

......というように、ひとつの作業が完了するまでに何人もの人に聞かなくてはならず、聞かれた人は自分の仕事を遮られて鬱陶しく、つい感情が顔に出てしまいがちです。
 在庫不足を報告した結果、たらい回しになって嫌な思いをしたはずの新人も、月日が経って覚えてしまえばその痛みをすっかり忘れてしまい、あとから来る誰かのために困ったことやあの時どうしてほしかったのかについて書き留めることもありません。先輩方のやり方を否定するような気がするので改善策などとても言い出せない、などの環境もあって、毎回、上記の会話のような流れが繰り返されているのです。
 ですから「決まりきったこと・わかりきったことだからこそ書いておけばいい」と思うのです。このような無駄なやり取りの時間は、紙1枚で解消しましょう。

 また、本来の業務を支える重要な役割でありながら、在庫管理や掃除分担等においては「誰かは知らないけど、いつもやってくれているみたい」というように無関心で、結果的に「気が付いた人がいつもやらなくてはならない」というケースは意外に多く、親切な誰かに任せっきりにして気が付かないふりをする人が出てきます。そういった不公平感を生みださないように配慮しなくてはなりません。

 情報をテキスト化して共有することで無用なトラブルを避け、良好なコミュニケーションの中で効率的な仕事ができるように、この機会に職場環境の再確認をしてみましょう。

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