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ハーバードビジネススクールの日本スタッフとして働く中で、気づいたこと、感じたこと、考えたことを、ゆるゆるとつづります。

「HBSミーツ東北」第三日目:陸前高田「長洞元気村」で元気をもらい、大船渡で高校生と交流する(1)

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1月13日朝。前日はディナーの後、仙台から20分程度の秋保温泉に行ったせいか、相変わらずの朝早い集合だったけど、どことなくみんなの顔がつやつやしている。今日は、新幹線とバスを乗り継いで、宮城を越えて、岩手県の陸前高田市と大船渡市へと向かう。

一ノ関駅到着。陸前高田でのスケジュールをコーディネートしてくださった柴田亮さんがバスに乗り込んでくる。柴田さんは、経営共創基盤(IGPI)というハンズオン型経営支援を行う会社にお勤め。IGPIが完全子会社として持っている、岩手、福島、茨城のバス会社を運営するみちのりホールディングスの支援のため、しょっちゅう東北にやってきては、復興をテーマにしたツアーの企画・開発を行っている。そのため、復興に向けてがんばっている地元の事業者やコミュニティ、NPOなどと深くつながっていて、そのネットワークをベースに、今回の企画をしてくださった。

「みなさんに岩手にいらしていただいた、ということで、まず見ていただきたいものがあります」といって柴田さんがバスの中でセットしたのが、「釜石の奇跡」というNHKスペシャルの英語版、The Kamaishi Miracle。小学校での防災教育を徹底していた岩手県釜石市で、小学生たちがいかに自分たちの頭で考え、「そんなひどい津波はこないよ」「ここは大丈夫」という過去の知見にとらわれる大人たちを説得し、高台に逃げ、自分も家族も助けたか、ということをまとめた映像だ。

津波の映像の壮絶さ、前例にとらわれることが少ない子供たちの想定外の事態での判断の正しさ、自分の頭で考えて行動することをベースにおいた防災教育の大切さなど、一同えらく感じ入って、見終わった後もバスの中はしばらく静寂が続く。


そして、雪の積もる山を越えて、バスは陸前高田市街があった場所へと入っていく。ちょうど津波の映像を見た直後に、壊れた建物がぽつぽつと見える以外はとにかく一面何もなく、草だけがゆれている風景を目の当たりにして、学生たちはただただ呆然としていた。ここに商店街があっただなんて。駅があっただなんて...

3分の一以上の職員が亡くなったという陸前高田の市役所でバスをとめる。お祈りをしたり、ぐちゃぐちゃに壊れた部屋の前に立ち尽くしたり。日曜日だったせいか静かだったことも、晴れた美しい日だったことも、その光景がより胸にせまる原因だったかもしれない。女川も割合で言うと陸前高田以上の被害を受けたものの、復興の工事の進捗が早いため、それほど悲惨な印象は受けなかったのだろう。ある学生は後から「今回の旅で初めて『The 被災地』を見たのが陸前高田だった。いろいろ理解していたはずなのに、その圧倒的な現実の前に言葉を失った」と言っていた。

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なんとなく重い気持ちのまま、陸前高田でのボランティアの受け入れ先である、仮設集落「長洞元気村」に向かう。でも、村に入った瞬間に急に明るい気分になった。空気がいきいきとはじけている。カラフルな旗がはためき、割烹着を着た「なでしこ会」のみなさんがきびきびと昼ごはんの支度をしている。なんかパオ?みたいなものもみえたり。そしてあちこちにはってある「Welcome, Harvard Business School ようこそ!長洞元気村」という手作りのポスター。うれしいなあ。自然と笑顔がこぼれる。

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元気村の人たちが村の将来を考えたり議論をしたりする際に使っている部屋へ案内される。総勢35名がはいると、動けないぐらいぎゅうぎゅうに。その部屋で、震災以来このコミュニティーのリーダー格をつとめる鳥羽村長と、中学校の先生で仮設集落の運営を担当する事務局長の村上さんら、長洞村についての説明を受けた。村長さんは、まるで誇り高きネイティブインディアンの酋長のような風貌である。

<2へ続く>

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