ポジティブ果実のなる木:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) ポジティブ果実のなる木

基本ポジティブな視点で、テクノロジーのこと、マーケティングのこと、その他いろいろ勝手にレポートしていきます。

「顧客に最高のバリューを提供する」というのは、特に不況下においてコモディティ化して価格競争に陥らないための戦略として良く言われることではないでしょうか?

かといって、完全なカスタマイズというのは高コストで、大量生産ができないため拡大(横展開)できないというデメリットもあります。

コモディティ          ⇔       カスタマイズ
大量生産                    個別生産
拡大しやすい                 拡大しにくい
低付加価値                  高付加価値
低コスト                     高コスト   
顧客プライスセンシティビティ高い     顧客プライスセンシティビティ低い

これをマーケティング活動に置き換えると、例えば、顧客を全て一律に扱うのは左です。同じマーケティング素材、コミュニケーション、人材を使うため、顧客一人あたりのマーケティングコストは低く抑えられますが、一人一人の顧客のニーズに対応したものにはならないでしょう。一方、かなり右に寄ったものが、今日紹介するABM(アカウントベースドマーケティング)です。

ITSMA(ITサービスマーケティング協会)によるとABMは以下のように説明されています。

ITSMA Account-Based Marketing (ABM) is a strategic approach that helps companies bring greater business value to their most important accounts. By treating each account as a market of one, we help companies broaden and strengthen their account relationships, increase awareness and demand for their services and solutions, and help them to gain superior financial results.

ITSMAのABMとは、企業が最高のビジネスバリューを最も重要な顧客に対して提供するための戦略的アプローチです。それぞれの顧客をひとつのマーケットとして扱うことで、企業は顧客との関係を拡大強化し、サービスやソリューションの認知と需要を喚起し、より高い業績をあげることが可能になります。

It is a collaborative strategy that engages sales, marketing, and delivery professionals as well as key executives in the chosen client account to determine where and how to best meet the client’s unique business imperatives. With deep research into the client’s business and key goals fueling the process, this collaborative team creates a well-orchestrated marketing and sales campaign for a single account.

(ABMは、)選び抜かれた顧客に対し、セールス、マーケティング、デリバリーの担当者、キーエグゼクティブが協力して、顧客の個別の要請に対応していく戦略です。顧客のビジネスや主な目標について深いリサーチをすることで、チームは一つの顧客企業に対して、よく練られたマーケティングやセールスのキャンペーンを展開することができます。

つまり、ABMを達成するためには、大胆な組織変更が必要になります。考えてみれば、セールス、マーケティング、エンジニア、などという部門の分け方や製品別の担当者というのは会社側の都合によるものであり、顧客から見れば、一人の担当者が自分の会社に関することを全て知っており、製品の種類に関わらずまとめて診断、提案してくれる方がありがたい、というわけです。それによって、企業側も一つの顧客からの収益を最大化できるということになります。

まさに顧客志向の最高の形ではないでしょうか。

しかし、言うは易し、行うは難しです。
そして、お気づきのとおり、かなりの時間とコストがかかりますので、どこの企業にもABMが適しているということはなく、場合によっては、one-to-oneまでいかなくてone-to-fewという形もありえます。

私が実際に訪ねて行ったとあるボストン郊外の中小企業は、顧客へのサービスのカスタマイズによって高付加価値を実現したい、という思いはあるものの、いくつかの壁にぶち当たっていました。

1.チーム内の売り上げの目標設定、評価分配をどのようにするか
2.P&Lの変更に伴う社内システムの変更にかかるコスト
3.他部門をまとめあげ、クライアントのonly oneコンタクトになれる人材がいない
4.社内で組織を変更する意義の周知、教育が必要
5.新組織の導入に時間を取られているうちに、拡大している市場のシェアを落としかねない

大きな時間とコストを投資するということはそれに見合ったリターンが確保されなければ企業にとってはリスクになります。しかし、本当に大きく一歩を踏み出さなくてはならない時、十分やる価値があると思います。

と、偉そうに知識の受け売りをしましたが、私がこの記事を通して言いたかったことは、「マーケティング」というのはここまでを視野に入れるものだということです。顧客が求めているものは何か?価値を最大化するためにどのような枠組みをつくったらいいか?ということを考え抜いた結果がそうであれば、時には大胆な変化を伴う改革も必要ではないかと思います。

Mamiko

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久野 麻美子

久野 麻美子

IT業界のPRコンサルタントから米国MBA留学を経、現在は中国のインター ネット企業「Alibaba.com」の日本法人にて、マーケティングを担当。

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