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「ジャパン・アズ・ナンバーワン」から30年、ヴォーゲル氏に聞く日本

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先週の木曜日、MIT Sloan校のStudent Clubの1つであるJapan Clubさんが主催の講演会に参加してきました。講演者はなんと「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の著者として有名なハーバード大学名誉教授、エズラ・F・ヴォーゲル氏。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が出版されたのが1979年ですので、来年でもう30年経つのですね。

平日のランチタイム(12~13時)を使って行われた講演でしたが、授業の合間にMITキャンパスに駆けつけたのは私だけではないようで、私が20分遅れて駆けつけた時には小さなオーディトリアムはほぼ満席でした。ヴォーゲル氏は今年で78歳ですが、ゆっくりはっきりとした口調でお話され、次から次に繰り出される質問にも丁寧に答えていらっしゃいました。

まず日本企業の特徴として、社会の一員としての存在(役割)、社員のロイヤルティ(忠誠)、そして社員を育てていくという風土をあげ、それによって日本企業は継続性(continuity)に優れている、と述べられました。現在M&Aによる業界再編が起こっていますが、その状況は特殊であり、基本的にはM&Aによってドラスティックに新しい組織を作っていく、というやり方は日本にはあまり合わないと考えられているようでした。また、日本はベーシックな教育レベルが高いのが強みである、地域の政府による教育のコントロールも良いとおっしゃられましたが、同時に、世界の大学トップ10の中には日本の大学は入らない、高等教育においては改善の余地があることも指摘しました。また、今後の日本の方向性としては、日本の強みである製造業の「高品質」を追求していくべき、とし、海外に生産を委託しても、ブラックボックスにしてコアの部分は日本で押さえている、そのやり方で行くべきと指南。一方、競争にさらされなかったサービス業については、グローバルレベルのサービスが日本で育っていない、と指摘。今後の方向性については、年功序列ではなくもっとフレキシブルな組織にし、若くて優秀な人や外国人を組織に上手に取り込むようにしていく必要があることなどを話されました。

ヴォーゲル氏はその他、今の総裁選挙の候補についてもコメントを述べられたり、と大変によく今の日本の状況もご存知でした。今回、限られた時間の中であまりつっこんだ話が聞けなかったのが残念ですが、外部の視点で冷静に日本を見つめることの大事さをとても感じました。また、恥ずかしながら、日本の政治・社会の仕組み・法律について自分自身知らないことが多いことに気づき、改めてヴォーゲル氏の著作を通して勉強しようかと思っています。昨今、中国はじめアジア各国の目覚しい成長に押され、世界での日本の存在感がどんどんなくなってきているのを感じていますが、他国の人に「日本から学ぼう」(反面教師ではなく)と思ってもらえるようなものをいっぱい増やしていけたらいいと思います。

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