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サッカーの「ボール支配率」で分かる、「相関関係」のトリック

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こんにちは。今回もお読みいただき有難うございます。
 

 

冬季オリンピックがいよいよ開幕しました!・・・ということとは関係なく(笑)、敢えてサッカーを題材にしてみます。

 

現在、世界最高峰のクラブチームと言われている、スペインリーグの「FCバルセロナ」。2012~2013年のシーズンでは、勝率81.5%という驚異的な記録を打ち立てています。アルゼンチン代表のリオネル・メッシや、スペイン代表のシャビエル・エルナンデス(通称シャビ)など、トップクラスのプレイヤーが集結した、まさにドリームチームそのものです。

 


そのバルセロナに関連して、こんなニュースが報じられました。(以下、ニュースから引用)

 5日に行われたコパ・デル・レイ(スペイン国王杯)準決勝第1戦でソシエダと対戦し、2-0の完封勝利を収めたバルセロナ。前半終了間際に相手選手が退場し、数的優位な状況で後半を戦ったこともあったが、ボール支配率は今季最高となる83%を記録したと公式HPが伝えている。

 圧倒的に支配した試合となったが、その中で驚くべき数字を残したのがMFシャビ・エルナンデスだ。公式HPによると、この試合でシャビが出したパスの本数は137本。これに対し、ソシエダの全選手が出したパスの本数は157と、シャビ1人が出したパスの本数と大差がなかったのだ。

 1月16日に行われたコパ・デル・レイ5回戦第2戦のヘタフェ戦でバルセロナでの公式戦700試合出場を達成したシャビ。98年にトップチームデビューを飾ってから16年目を迎えた34歳のベテランは、「30歳を過ぎると大げさに言い過ぎる傾向がスペインではあるし、ここでキャリアを終えることになるか分からない」と語っていたが、チームの中心として君臨すべき力があることを改めて証明してみせた。

このニュースで登場する「ボール支配率」
サッカーに詳しくない方も、この言葉の意味するところは何となくお分かりかもしれませんが、念のために説明をします。ボール支配率とは、試合時間内でチームがボールを保持している時間、のことです。

 

この説明だけで、何となく想像できる命題があります。

「ボール支配率が高いチームは、勝率が高い。」

確かにサッカーは、自分たちのチームがボールを持たなければ、得点することができません。相手側に「お願い、オウンゴールして!」と土下座でもすれば別ですが・・・そんなことは現実的にはありえませんよね。ですから、まずは自分たちがボールを支配することで、ゲームの主導権を握り、得点のチャンスをたくさん作ることができるような気がしますよね。

実際の統計でも、ボール支配率と勝率の相関関係が見えてきます。

詳しくは筑波大学で研究された結果をご覧ください(こちら)。
※(注意)この資料におけるデータの取り方については細かいところで違和感があるのですが、国内でこの手の分析をしている機関が他に見当たらなかったので、こちらの情報をそのまま提供しています。そのつもりでご覧ください(ボール保持と勝率に相関があること自体は正しいようですので、大勢に影響はありません)。

 

さて、そうなると、こういう結論を私たちは持ってしまいがちです。
「じゃあ、ボール支配率を高めることができれば、勝率も高まるのではないか?」

 


・・・実は、そうでもないのです。

先ほど紹介したのは、あくまでも「相関関係」を示すデータに過ぎません。私たちは日々物事を考えているときに「相関関係」と「因果関係」を混同してしまいがちです。この2つは似ているようで、異なります。

 

例えば、「夏より冬のほうが寒い」。

気象データを見れば、これが真実であることは明らかですから、相関関係は当然あります。
さらにこれには、「地球の地軸が23.4度傾いているため、年間で日照時間が変動している」という因果関係も分かっています。

 

しかし、これはどうでしょう。

「晴れの日は株価が上がりやすい」。
実はこれ、統計的には天気と株価に相関関係があることが分かっています(アノマリーと呼ばれる現象です)。しかし、なぜそうなるのか?という部分は「天気が良いとなんだか気分が良くなるから株を買いたくなるのかもね~」といったような、想像でしか語ることができませんから、因果関係は不明確です。

このように、相関関係を示すデータが取れたとき、まず必要になるのが「その背景にあるメカニズム」を解明することで「因果関係」を見つけることなのですが、今回のボール支配率と勝率の場合は、どうでしょうか。

 

因果関係を見つけるために、
「ボール支配率が高いチームは、なぜ勝率が高いのか?」
この部分の掘り下げをしてみましょう。

サッカーで勝つためには「得点>失点」である必要がありますので、まず「勝率が高い」という事象を、「得点が多くなる」かつ「失点が少なくなる」という2つの事象に分解して、因果関係を見ていきましょう。


失点の場合は非常にシンプルです。

ボール支配率が高い

ボールを相手が保持している時間が短い

相手のシュート(すなわち、失点の機会)が少ない

失点が少ない

これは理屈がキレイに通っていると思いますから、失点のほうでは因果関係を認めてもよさそうです。


一方の得点についてはどうでしょうか。

ボール支配率が高い

ボールを自分たちが保持している時間が長い
↓ ???(ホントか?)
シュート(すなわち、得点の機会)が多い

得点が多い

ちょっとした違和感に気づくことができるでしょうか?
自分たちがボールを保持していれば、それだけシュートの本数が増えるのか?・・・実はそうともいえないわけです。

なぜか?

ボールを保持する時間がどんなに長くても、そのボールがシュート圏内になければシュートにつながる可能性は、結局ゼロのままだからです。サッカーでは、ボールを保持したまま相手陣地に攻め入り、相手の厳しいディフェンスに負けずにボールをキープして初めてシュートの突破口が開けるですから、そういう技術を高めない限り、自陣でパス回しをしてボールを保持し続けて支配率を高めても意味がない、と言うことになります。


ましてやサッカーでは、自陣でパス回しをしている間に、相手チームが守備を整えることができるわけですから、得点をとるために支配率を高めると言う発想は、時として逆効果になることがあります。

 

いかがでしょうか?相関関係はあるものの、因果関係はむしろ否定される結果になってしまいました。

 

ちなみに、ボール支配率を高めることを目的とするサッカーのことを「ポゼッション・サッカー」と呼びます。先ほどニュースで紹介したFCバルセロナも、このポゼッションサッカーを実践しています。実際、FCバルセロナではほとんどロングパスをしません。ゴールキーパーですら、ボールを持ち上げて遠くにポーンと蹴り出す「パントキック」をすることが非常に少ないのです。このように確実にパスが通る距離でのみ、ボールを渡すので、相手チームがボールを奪うことはきわめて難しい。結果、失点も少ないです。

いっぽうの相手チームからすれば、このような戦術をとるチームに対しては、ボールを奪うことを諦めてゴール前の守備を固めることで、失点を食い止めることもできる・・・はずなのですが、FCバルセロナではどんな守備もドリブルでかいくぐってしまうメッシのような素晴らしい選手がいるために、結局ゴールを奪われてしまう・・・というわけです。

FCバルセロナの支配率が勝率に結びついているのは、先ほど下線で示した部分を実践できるスーパースターがいるから、と言うわけです。


数年前の日本代表は「得点力不足」が深刻でした。メッシのようなキープ力と決定力を兼ね備えた選手が見つからないうちにポゼッション・サッカーを取り入れたとしても、得点が増える可能性はあまり見込めない・・・というわけです。

サッカーでは今回紹介した「支配率」のほか「シュート本数」「枠内シュート本数」「セットプレー回数」「シュートまでに要したパスの数」「選手ごとの走行距離」などなど・・・沢山のデータが使われています。

試合中にそういった情報が出てきたとき、是非今回紹介した相関関係と因果関係の違いを、思い出していただければと思います。

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