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JR東日本「豪華寝台列車」を分析してみた(1/2)

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 もう1週間ほど前になりますが、JR東日本が豪華寝台列車「クルーズトレイン」を新造し、2016年春に運転を開始すると新聞が報じました。ツアーの料金は20万円にもなるとか。日本経済の持ち直しが期待される中ではありますが、なぜJR東日本はこのようなゴージャスなツーリズムに参入する判断をしたのでしょうか。今回は同社の外部公表資料などをもとに、その分析を試みたいと思います。


●そもそもJR東日本の収益源は何?

 JR東日本はグループ全体で、大きく以下の4つの事業を行っています。

  1. 運輸業:鉄道による旅客を中心とした事業
  2. 駅スペース活用事業:改札の中にある「エキナカ」ショップの運営を中心とした事業
  3. ショッピング・オフィス事業:「ルミネ」や「アトレ」などの駅ビルを中心とした事業
  4. その他:ホテル事業や「ビューカード」の事業など、上記に該当しない事業


 グループ全体の売上高は約2.5兆円ですが、その約7割を「運輸業」が占めています。その運輸業はさらに細分化され「定期」「不定期」の収入に分割されます。

 定期収入は、一言で言えば通勤や通学などの定期券による収入のこと。JR東日本のグループのおおむね2割を、この「定期収入」が占めています。一方の不定期収入は、旅行時の新幹線の利用をはじめ、定期券を利用しない乗車の収入のこと。定期収入よりも少し規模が大きく、全体の5割弱がこの「不定期収入」です。定期収入は、私達の生活を想像すれば分かるとおり、消費者からすれば必需品的な支出ということができます。裏を返せば、JR東日本にとって定期収入は長期・安定的な収入源であるいっぽう、不定期収入は景気などの影響を受けやすいカテゴリと考えることができます。

 今回のクルーズトレインの投入は、主に東日本地域のツーリズムの開拓の一環としてのものであり、直接的には「運輸業」の「不定期収入」にインパクトを与える決断となることが分かります。

●何で「豪華ツアー列車」なのか?

 しかし、JR東日本はいったいどうして、このような決断をしたのでしょうか。

 ここで一般論を紹介すると、企業の戦略の転換は、主に外部環境の変化に適応するために行われるものと言われています。外部環境の変化......というと妙に難しい言葉のように聞こえますが、例えば「円安」や「株高」という経済的な話や、「高齢化」や「スマホの普及」などの社会的な話など、企業の外側で起こっている出来事はその殆どが企業の外部環境の変化に該当します。スマホが普及すれば、スマホに連動したサービスを考える企業がたくさん出るように、企業は、外部環境の変化に合わせてその舵取りをするわけです。

 ちなみにJR東日本は、線路や駅舎、駅ビルやホテルなど、巨大なインフラを基礎としたビジネスを行っていますから、月々の株価などの細かい動きではなく、もっと長期的なスパンで見た外部環境の変化を捉えて戦略を練っていると考えられます。


 さて、ここで少し考えてみましょう。JR東日本のクルーズトレインの背景には、どんな「環境変化」があるでしょうか?

 こうして考えながらニュースを読み解くと、たくさんの気づきを得ることができます。正解を探そうとする必要はありません。とにかく想像してみるのが楽しいのです。慣れてくると、ニュースとニュースが意外なところでつながってきたり、多くのの気づきやヒラメキを感じることができるようになります。


......考えてみましたか?


 答えはひとつではないと思いますが、ズバリ筆者が想像しているのは、人口減、とりわけ「現役世代の減少」という環境変化です。

 ご存知の通り、日本の人口は2000年ごろをピークに減少に転じています。いっぽうで高齢化率は上昇を続けており、現時点ではおおむね4人に1人が高齢者といわれています。
 つまり「通勤・通学」を目的として鉄道を利用する人々は減少を続けているわけで、すなわちJR東日本にとっては「定期収入」の減少が見込まれている状況にあるということがいえるわけです。

 ただ、くどいようですが、答えはひとつとは限りません。皆さんはどのような環境変化を想像したでしょうか? 是非ご意見をお寄せ下さい。


 それと、もうひとつ質問があります。


 ずばり、「定期収入の減少」に対して、JR東日本はどのような打ち手をすることが考えられますか? 私が想像した「人口減による定期収入の減少」という仮説をもとに、できるだけたくさんの答えを考えてみてください。次回、皆さんと答えを共有したいと思います。

 

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