あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

担当領域に貴賤はある。あるいは第2オーボエはソロを吹かない

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3ヶ月ぶりのブログ。
よく久しぶりの更新の冒頭に「更新できなくてすみませんでした」と書いている人がいるけど、なんで謝るんでしょうね。ブログって無料なので、「好きなブログが更新されてたらラッキー」という程度のもの。
書いている人に謝られると読者としては居心地悪くないですか?「いやいや、お好きなペースで更新してくださいよ」と思ってしまう。「更新できなくてごめんなさい」⇒「久しぶりの更新です。これからはもっと書きます」⇒永遠に更新なし、というブログ多いので、ごめんなさいは呪いワードなんじゃないかなー。
書きたいことたくさんあったけど更新しなかったのは、本を書いてたからです。今はいったん編集者さんに原稿わたしてゲラができるのを待っているところで、久しぶりにブログを書く時間ができた。本は12/17に発売予定。内容についてはまたここで書きます。



さて本題。3年前に、こんなことがあった。
・人事領域の業務改革&システム構築プロジェクトでのこと
・プロジェクト計画のリスクを検討していた時に、僕が「しょせん福利厚生だから」と言った(らしい)
・同僚がそれを聞いて、日報に「俺が担当しているのはしょせん福利厚生だから・・」と書いた

福利厚生というのは、寮社宅管理とか、財形貯蓄とか、相互会(互助会)とか、社員のために大企業にある制度の総称だ。人事業務の骨格は、採用/育成/組織開発/人事異動/給与計算というあたりなので、まあ、業務としては傍流だ。
それを指して、「しょせん福利厚生なので、多少のリスクは許容できる」みたいなことを僕が言ったんだと思う。正直言って、当時も本当にそう言ったかは覚えていないのだが、いかにも僕が言いそうなこと、普段から言っていることなので、言ったんでしょうね。

同僚のモチベーションを損なうようなひどい言い方ではあるのだが、僕がそれについて考えていることはいくつかある。


★担当領域には重い/軽い、重要/そうでもない、がある
よく「仕事には貴賤はない」という。世の中の仕事はすべからく何かの役に立っているし、従事している人はその人なりに一生懸命やっているのだから、他人から貶められる由来はない、というような意味だろう。それはそのとおりで、僕の主戦場であるプロジェクトワークにおいても、仕事に貴賤はない。地味な仕事も重要である。
僕も昔、こんなブログも書いている。
雪かきは公共心のメジャーであること、あるいは雪かき担当がいないとプロジェクトの成功がおぼつかないことhttp://blogs.itmedia.co.jp/magic/2013/01/post-70df.html
道路の雪かきみたいな、誰の仕事でもないようなことを率先してやる人がいないとプロジェクトは成功しないよ、というような内容だ。

だが、それはそれとして、やはり仕事には、
・難しい領域とそうでない領域
・全体への影響が大きい領域とそうでない領域
・面白い領域とそうでない領域
があると思っている。

例に出した人事のプロジェクトで言えば、人事評価に使うコンピテンシーを考案する仕事は難しい。一方で寮社宅の「制度改革に踏み込まないシステム構築」は比較的簡単(制度改革に踏み込み始めると、途端に難易度が跳ね上がる)。そしてプロジェクト管理上の大事なこととして、寮社宅は、システムアーキテクチャー上も業務設計上も「福利厚生が失敗すると、プロジェクト全体がコケる」みたいなコアな部分ではない。


★ソロは第1オーボエが吹く
全体への影響が大きい領域とそうでない領域がある時に、前者をスキルが高い人がやり、後者をスキルが低い下っ端がやる、と言うのは仕事の世界では当たり前のことだ。
オーケストラには同じ楽器の担当者が何人もいるけど、ソロや主旋律を吹くのは必ず第1ホルン、第1オーボエの人だろう(あまりクラシックには詳しくないが、NHK交響楽団とか見ているとそう見える)。プロフェッショナルの世界では、うまい人が大事な仕事をする。「たまには第2ホルンにソロをまかせてみようか」という楽譜はないんじゃないだろうか。そうしないとトータルとしていい演奏にならないから。

寿司屋で修行を始めたら、握るのは何年も先で、まずは鯵の骨抜きとかをやる(15年くらい前からたまに行く寿司屋では、大将の息子が店で働き始めてから10年くらいしてようやくランチの時だけ握るようになった)。
ウチの会社では教育のために、新入社員にでもいきなり小さくとも一皿任せることにしている。ひたすら議事録ばかり取っていても成長スピードが遅いので、1回の会議、1つの領域をなるべく持ってもらう。たしかそれを言い出したのは僕だったと思うが、正直プロフェッショナルとしては「ちょっと甘いな」と思うこともある。

そういうところから考えると、誰だってプロジェクト全体の命運を握るような仕事をする前に、そうでもない仕事をするのは当然だ。「しょせん福利厚生」と言ったものの、実は僕自身も昔は福利厚生を担当していた。
その上で、各メンバーがより難しい仕事を担当できるようになれればいいなあと思っているし、そのための支援もしている。そちらの方が面白いし成長するし、お客さんに貢献出来る。


★プロジェクト管理の肝はメリハリ
戦争でも経営でもプロジェクト管理でも同じなのだが、勝負する時は大事なところに重点的に資源を投入しなければならない。
プロジェクトではよく「限られた人的資源をどこに投入するか?」という判断を迫られる。この領域も心配、こちらは既に遅れ始めている・・。そういう時に最悪なのは、どの領域にも少しずつ戦力を投入して、「みんな頑張って」というマネジメントスタイル。それよりも、「全体に影響を与えるので、絶対に遅れてはならない領域」を決めて、重点的に人を投入する必要がある。

本来、良いチームを作るためには、
・メリハリを効かせた資源配分

・各人の仕事へのリスペクト(モチベーション維持)
を両立させるべきだ。
当たり前のことだが、第2ホルンは第2ホルンなりにベストを尽くさないといい演奏にならないから。だから僕も本当は「しょせん福利厚生」などと口に出すべきではないのかもしれない。

それでも僕があえてそういうことを口走るのは、僕も含めて大抵の人は平等、公平に資源を配分することに慣れすぎていて、メリハリを効かせるのが苦手だからだ。うかうかしていると、ついあれもこれも、となってしまう。僕はそうならないよう自分を戒めるためによく「ここは目をつぶろう」「放置」「こんなの後からどうにでもなる」と口に出して言うようにしている。
人事のプロジェクトで言えば、福利厚生は目をつぶる対象になりやすい。とはいえ、本当は口に出さない方がモチベーション管理上は有益なのだろうが、口に出せば流されにくくなるし、リーダーとしての判断プロセスを同僚に見せることも出来る。

日本人はいい人が多いので、モチベーションへのケアだけが得意な人が多い。一方で僕は、メリハリを効かせた資源配分にはかなり気を配っているが、モチベーションケアが苦手。バランスを取るのは難しい・・。
「タスクに貴賎はなし」だけで済む話ではないと思ってます。

*******************追記
公開してすぐに「第2オーボエもソロ吹くよ。知らねえくせに比喩に使うなよ」という意見を書かれました。そうなんですね。確かに詳しくない領域を比喩に使うとこういう誤りを生む可能性ありますね。とはいえ僕が知っている領域での比喩は思い浮かばなかったんですよね・・。サッカーみたいなスポーツはニュアンス違うしね。

この記事でいいたかったこととはほぼ無関係なので、このままにしておきます。

Comment(1)

コメント

iso

暴言を吐くと、「モチベーションへのケアだけが得意な人」というか、(新規事業も含めて)ともかく波風が立たないようにすることだけが得意な人、しかもプロジェクトを推進する人に対してだけは敵対的な人が多すぎて、PMBOKとかそういうテクニック以前の問題が多すぎます。
昨日までの仕事を明日も続けたい中間管理職の気持ちはわからなくもないですが、プロジェクトチームからはそういう人は外れてほしい、しかし得てしてそういう人がキーマンというかキーになる組織の長だったりして、中小企業では代替の人物もみつからないとくる。
プロジェクトのスケジュールを考える上で、そういうモチベーション維持だけが得意な人がどんどん無駄な工数を生み出してくるのは、仰る通り切って捨てる必要があるのでしょうけど、身内同士だと明日からの仕事にも差し障りが出てくるし・・・正直外部コンサルタントはこういう時に使うものじゃないかと思います。

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