あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

「要するにこういうこと」と言う人こそがリーダーである、あるいはアイディアを蒔く土壌について

»

僕は三枝匡さんの「変革三部作」の大ファンだ。
企業経営や変革プロジェクトのロジックとパッションの両方がぎっしり詰まっているので、今でもたまに読み返す。
ちなみにこの三部作を担当している日経新聞のの編集者に、僕の1冊目2冊目の編集もお願いした。特に1冊目は実際の企業変革を当事者が物語形式で振り返る本なので、「三部作の中間管理職版」だと思って書いた。三枝さんと違って、僕らの本はすべて実名だけれども。

その三枝匡さんがCEOとしてミスミの改革を振り返った本が出たので、早速読んでいる。

ザ・会社改造 340人からグローバル1万人企業へ

まだ途中だが今の時点で一番ぐっときたのが、

・ビジネスの混沌を読み解き、「この課題って、要するにこういうことでしょ」と言え
・これは、企画書の1枚目(変革の出発点)として、極めて重要
・これを言う人こそがリーダー(未来を示し、導く人)である

という箇所。



似た話は工業デザイナーの山中俊治さんも書いていた。

自分の言葉で専門家に「要するにこういうことなのですね?」と説明し、

「まあ、そうです」と言って貰ったら、アイディアを練るためのスタートラインに立ったといえる。

デザインの骨格


デザイナーもクライアントの課題を、デザインのちからを使って解決するのが仕事だ(山中さんの有名な仕事の一つは、改札口でSUICAをかざす角度をデザイン的に解決した仕事)。
課題解決にはアイディアが必要だが、アイディア以前に、正確な課題認識がないと話にならない。間違った課題認識のもと、間違った解決策をCoolに提示しても、実際には何の意味もない。

僕の仕事も全く同じだ。僕は企業の業務改革の専門家なので、お客さん組織の状況を見て、まずは「要するにこういうことなんですね」と言う。そこから、変革の施策アイディアを考えていく。
「要するにこういうことなんですね」がうまく表現できたら、「じゃあ、こうすれば良くなりますよね」とすぐに言えることも多い。


例として、かつて僕がプロジェクトで言ったことを挙げておこう。

「要するに、業務プロセスや商品ごとにシステムが分断されていて、それを人間が必死に繋いでいるんですよね」
⇒システムの分断で無駄な仕事があるのなら、ちゃんとつなぐだけで、仕事は楽になるのでは?


「要するに、チームで分業しながら商談を進めるノウハウがない個人商店型営業。1人に仕事が集中するから残業が多い割に、お客さんからみるとスピード感がない」
⇒フロント営業をフォローする支援者を置き、社内外への作業依頼の管理を委ねては?


「要するに、事業部ごとに経営判断するようになった現在でも、工場ごとの詳細な人件費計算を、コストを掛けて名残でやっているってことですよね。昔はあった経営合理性がいまはもう失われているのに」
⇒事業部単位で人件費計算の基準を標準化しましょう。

などなど。

そして、「専門家に説明し、まあそうです、と言ってもらう」という部分もポイントだ。
部外者がざっくりと「要するに」とまとめる訳だから、ポイントを外している場合もある。「要するに」はあくまで仮説だから、状況を把握している人にぶつけ、議論しながらブラッシュアップしていく必要がある。時には全くスットコドッコイな「要するに」のときもあるだろうし。
もちろん、この手の「そう思います」だけで変革プロジェクトを進めるのは危険なので、実際には事実を集めて裏とりするのだけれども、それは後付でもいい。まずは「こうではあるまいか」を口にすることが大事なのだ。


ところで、僕はこの「要するにこういうことですよね」を、特別なことだと思ってこなかった。
何か新しいキラキラしたことを思いつくわけではなく、単に状況を要約しているだけだから。やろうとすれば誰でもできるというか(実際にやる人は少ないのだが)。
しかし三枝匡さんは「要するにこういう課題だ、を言う人こそがリーダー(未来を示し、導く人)である」とまで書いている。

変革が必要なくらいだから、ビジネスは混沌としている。

その状況から適切な情報を選び取り、最も大事なことをピックアップする(ノイズは大胆に捨てる)。そして周りの人に分かりやすく示すことが、変革のスタート地点になるから、ということだろう。

確かに、現在の問題を適切に切り取ることができないと、間違った方向に変革を進めてしまう。何も言えなければ、そもそもスタートできない。

確かに、リーダーシップとは、そういうものかもしれない。
だから最近は、プロジェクトを一緒にやる人に「要するにこういうこと」という形式で、この状況を表現してみて、とお願いすることにしている。リーダーが増えてほしいから。

Comment(1)

コメント

TETSU

「要するに」は確かに便利な表現方法ですね。
メタ思考法だったかな
現実から離れた方が、より新しい思考が出やすくなるし、他の事例との共通項を見つけやすくなり問題解決に役立つことも多いです。
ちなみに理系の学者さんと話すと、だいたいそんな感じで考えてる人が多いです。でもそれが強すぎると、一般の人と話が通じにくいということもwww(具体的な説明できる人の方がわかりやすいからw)
これが得意な人は数学もできるようになるというメリットもあります。

コメントを投稿する