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循環型「俺のせいじゃない」あるいは組織のいがみ合いを防ぐ方法

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「あの部署がダメだから、仕事が上手くいかない」って、思ったことありません?あなたがサラリーマンならありますよね?

大企業病かというと、僕の観察する限り、そんなこともない。例えばウチの会社にだって「マーケがいい案件を作れないから、営業のやりようがない」とか言っているヤツがいましたからね。当時社員数50人くらいだったのに。10年以上前の話ですが。
お互いの顔が見えないともっと起こりやすいけれど、見えていても人間が分業している以上は、起こると思っておいたほうが良さそうだ。。



★循環型俺のせいじゃない
それで、「あの部署がダメだから」と自分が考えていたら、1歩下がって状況を観察して欲しい。こうなっているケースがほとんどだ。

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お互いが、隣の部署を非難している。「自分の仕事が上手くいかないのは俺のせいじゃない。あの部署のせいだ」と言い合っている。
僕はファシリテーション型コンサルタントという客観的、中立的な立場で組織を観察させてもらう事が多いから、こういう構図が見えやすい。実に不毛だ。
この例は事務と企画と営業だが、物流と営業とか、人事とサービスフロントとか、この手の構図は至る所で起こる。

どこかの部署がガンなら、分かりやすい。会社としてそこに資源を投入し、直せばいいのだ。そうしたら周りの仕事もうまく回るようになるから、みんなハッピーだ。
でもこの構図がツライのは、組織同士の歩み寄りが必要なことだ。この構図に陥っている責任が自分たちにもある事を実感して、みんなで変わる必要がある。

こういう構図を示してもなお、「まずは奴らが変わらないと、どうしようもない」と強硬に主張する方々が必ずいる。いやだから、そういう「アッチが悪いんだから、まずはアッチが直すべき」という発想自体がダメなんですってば・・。アッチだって同じこと言ってますよ?



★どうすればいいのだろうか?
どうすればいいんでしょうね。難しいです。
今一度、なぜ「循環型俺のせいじゃない」が起こるかというと、みんながみんな、自分の責任範囲を狭く捉えているからだ。

例えば、「業務をもう少し標準化できれば、システムで自動化できるのに・・」という状況で、システム部門の人が「うちのユーザーは、取りまとめ能力が低いんだよな~。それさえやれば、彼らが楽なのにさ」と言っているケース。
その通りなのかもしれないが、標準化の取りまとめが効率化の鍵だと気づいているのだから、システム部門がやればいいと思う。「ユーザーがダメだ」と言う暇があるなら。

「ユーザーの仕事なのに、自分が口を出すべきではない」という考え方もあるだろう。組織ではよくそういう話を聞く。でも、僕自身はそうやらないとプロジェクトが成功しない場合は、誰の責任領域だろうが、口を出す。そして結果として大変感謝される。社外の人間が口を出す事を、社内の人間が口を出せないという理屈はないだろう(やりにくいとは思うが・・)。


★中立者を立てる作戦も
コンサルタント、または社内のコンサルタント的な部門に中立の立場から問題を解きほぐしてもらうのも、ひとつの方法だ。
逆に言えば、こういう状況を当事者が気づき、問題を口にし、解決に向けて行動するのは、かなり難易度が高い。社内に敵を作りやすいから。そしてどこまで行っても「お前だって」が付いてくる。

どんな問題解決にもコンサルタントが有効だとは思わないが、比較的外部の力が有効な場面だと思う。
とはいえ、「雇ってくれた部門の手先」に成り果てているコンサルタントも多いから、そういう場合は何の解決にもならない。そもそも敵を作りそうなことは口にしないだろうし。全社最適で考えないコンサルタントなんて、高いだけで意味がないから雇うのやめた方がいい。


★分業を小さくする?
ミスミ会長の三枝匡さんは「創って作って売る、が一通り揃って初めて事業と言える。このサイクルに責任を持つことが経営だ」という趣旨のことを著書に書いている。
また、京セラ稲森さんが唱えている「アメーバ経営」も、小グループで採算管理を徹底することが肝だ。
2つとも、「循環型俺のせいじゃない」を防止するための方法なんだと僕は理解している。小さくとも経営に必要な要素が一通り揃っているチームを任されたら、成果が上がらないのを他人のせいにはできない。だから自分でなんとかしようと工夫する。
たったそれだけで、ずいぶん仕事は前向きになり、実際に業績は上がると思う。


★明日からできること
これを読んでいる99%の人は経営者ではないだろうから、いきなり「明日から我が社もアメーバだ!」という訳にもいかない。
そういう場合、まずは、「組織って、こういうもんだ」と認識するのが大事だと思う。
(いきなりソリューションがショボくなって申し訳ない)
この構造を認識しさえすれば、自分を客観視しやすくなる。まずは「あいつらのせいで」と思っている自分に気付くことができる。他の部署から「あいつらのせいで」と思われていることにも、気付くことができる。

まずはそっからじゃないですかね。

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