オルタナティブ・ブログ > プロジェクトマジック >

あるいはファシリテーションが得意なコンサルタントによるノウハウとか失敗とか教訓とか

クライアントに「正直がっかりした」と言われた時にした2つのこと、あるいはピンチの時に真っ先に言うべき言葉

»

面と向かってお客さんから「がっかりした」と言われることって、めったにない。とは言え長くコンサルタントをやっているとたまには起こる。
「ガツーンと先制パンチを食らわす」みたいなのをコミュニケーションスタイルにしている人もいるから。

プロジェクトのコアメンバー(お客さん+ウチの社員)が偉い人に、改革施策を説明して今後の協力を求める趣旨の会議だった。
その会議に僕はたまたま出席できなかったのだが、一通り説明したら「このプロジェクトには期待していたのに、正直がっかりした」と言い放たれたという。
その場に自分がいれば、色々とやりようはあるのだが、いなかったので、会議の様子を聞いて、どういうアクションをしたのかを紹介したい。



★なにはともあれ「ほほう・・」
僕らは自分たちを「プロジェクトの成功請負人」だと思っているが、コンサルタントとして単純にサービス業でもあるので、「顧客満足度が低い」「サービスレベルが低い」と言われるのは一大事だ。
そして今回は、単にコンサルタントがどうこう言われているだけでなく、お客さんも含めたプロジェクト全体がやってきた事を否定されている。結構ピンチ。

今回に限らず、ピンチになると僕は必ず「ほほう・・。そう来たか」とつぶやく事にしている。「なるほど。困りましたな」の時もある。
元々は漫画のセリフっぽくて面白いからふざけて言ってたんだけど、今では口癖になって自然に言ってる。

これ、一見バカバカしいけど、本当にオススメです。騙されたと思って、今度ピンチが来たら言ってみて。なぜいいのか、一応解説しよう。バカバカしいけど。

・状況を楽しめる様になる(思考がこわばらない)
・状況を客観的に見て、対策を考えられる様になる


ピンチの時に一番マズイのは、「俺のせいだ」とか「俺、今、最高ヤバイ」とか、自分をパニックの真ん中においてオタオタすることだ。こんなマインドで、状況を打開するいいアイディアなんて浮かばない。
でも「ほほう・・」というセリフは、それと逆のマインドに自分を連れて行ってくれる。このセリフは漫画とか映画では常に、上から目線の登場人物が口にするからだ。悪役のボスとか。長老とか。
上から目線って基本的にネガティブな言葉だけれども、良く言えば「俯瞰的」である。ピンチを打開するのはこれが大事。状況を客観視さえできれば、対策は自然に見えることが多い。
余裕があるから余裕なセリフが出るのではない。余裕なセリフを口にすると、心に余裕が生まれるものなのだ。



★そして方針転換を決める
で、「ほほう・・」と言って余裕を持った後に考えたことは、このプロジェクトでは「計画の質」を上げるのはもうストップしよう、という方針転換だ。
これもちょっと解説が必要だろう。

「正直がっかりした」と言われたものの、実は僕自身、プロジェクトで検討してきた事に自信を持っていた。きちんと現状業務を分析し、大胆かつクリエイティブな改革施策を立案できていた。大きなコストをかけずにプロジェクトゴールを達成できる目処も立っていた。
だから、「がっかりした」と言われても、「じゃあ、もっといい施策を考えないと!」とは全く思わなかった。そうではなくて、がっかりさせてしまったのは、説明不足とか、施策が大胆過ぎて腹落ちが足りてないことが原因なはずだ。


ただ、これはこれで捨て置けない状況である。業務改革プロジェクトを計画する際に、気にしなければならないことが2つある。

a)計画としての質
b)態勢としての質

a)は「計画書」として、よく書けているか?という意味だ。きちんと何をどう改革し、そうするとなぜ良くなるのか、結果としていくら儲かるのかが明瞭に書いてあるということ。
b)は組織とか人の話である。計画書が書き上がった時に、プロジェクト関係者が全員、「このプロジェクトうまくいくよ」「よっしゃ、早くやろうぜ」というマインドになっているか。計画を実行に移す態勢ができているか。

コンサルタントが参加して改革の計画を立てると、a)ばっかりが重視される。キレイなパワーポイントに何十枚も絵が書いてあったり。もちろんそれは大事なことなんだが、マズイのは、b)も同じくらい大事なのに、軽視され続けてきたことだ。「あとはお客さま次第です」とか言って。プロジェクトを本当に成功させ、成果を刈り取るためには、絶対必要なことなのに。


このプロジェクトも、そうなりかけていた。a)の計画としての質はかなり高くなり、効果的な施策がいくつも見えていた。残りの数週間で、僕らは更にこれを磨こうとしていた。だが、「正直がっかりした」と言われて、目が覚めた。このプロジェクトでは、一部のプロジェクト関係者だけじゃなく、もっと広く、改革の中身と意義を訴えないと、b)の態勢の質が高まらないってことか・・。


だから、施策の細部を詰めるタスクは途中で殆どやめて、ひたすらプロジェクトについて説明する事に時間を使った。同じ事を何人にも何度も説明する。その上で議論する。
正直飽きる。だが、そうして対面で説明していかないとプロジェクトを応援してもらえない。結局の所、プロジェクトは成功しない。
もちろん丁寧に説明すれば、懸念点やいいアイディアを貰えることもある。そうして少しずつa)計画としての質も高められる。



プロジェクトが実装段階に入れば、決めた計画を粛々と実行に移す要素が強くなるが、今日の記事に書いた計画段階では、こういうちょっとドラマチックな場面があり、日々軌道修正していかないといけない。
まあ、それが面白いんだけどね。

そういえば。
「がっかりした」と言った方は、きちんと時間をかけて説明したら、もちろん分かってくれました。プロジェクトの良き支援者になっていただけると期待しています。



※計画の質と態勢としての質については、「業務改革の教科書」も参照されたし。

  

Comment(1)