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「上司元気で留守がいい」あるいは上司は必要悪なのか?

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これを読んでいるほとんどの人が誰かの部下だろう。同時に誰かの上司でもある人もいることと思う。社員2人の会社から世界最大級の組織(カトリック教会とか中国共産党かな?)に至るまで、組織に属す以上、上司部下の関係からは逃れられない。



★部下は「上司元気で留守がいい」を目指せ

上司って何のためにいるんだろう。
管理者、監視役、連絡役、調整役、コーチ、モチベーター・・。
どちらにせよ、部下にいい仕事をさせ、組織に貢献してもらうために、上司はいる。上司がいなくたって部下がいい仕事をするならば、上司なんていらないと思う。

昔はコミュニケーション手段が限られていたから、上の会議で決まったことを下に伝えるとか、下の不満を上に上げるとか、伝書鳩みたいな役割も重要だった。今はそれはあまり価値がない。

僕はこれまでずっと、上司を「自分の能力が足らない時の補填役」として使ってきた。
自分では判断がつかないから相談に乗ってもらう。
自分では誰かを説得できないから代わりに伝えてもらう。
自分ではミスが怖いからチェックしてもらう。


そして自分の能力が上がると、上司に頼る必要は少しづつ減っていく。
ついには「上司はいざというときだけ、使わせてもらえばいいよ」という存在になる。むしろ、それを積極的に目指さなければ成長はない。

もちろん、いざという時に役に立たない上司はいっぱいいると思う。ご愁傷さまです。でも、それとこれとは別の話。上司は選べないけれども、上司がいなくてもいいように、自分が上司の役割を担おうとすることは、それとは無関係に目指せる。


そうして本当に上司の仕事を全て肩代わりできるならば、それは上司のポジションにつける、ということだ。能力主義の会社であればすぐに昇格するだろうし、そうでない会社でも数年後には上司のポジションに上がる。



★落とし穴に注意!
ただし、ここには落とし穴がある。「上司なんていなくたって、仕事は回るぜ」と思っていると、報告がおろそかになったり、本当に助けを求めないといけない時に、遅れがちになる。

A)上司がいなくても回る状態を目指す

B)やばいと思ったら上司の助けを借りてでも、仕事をやり切る
はちょうど逆向きのマインドで、バランスを取るのはすごく難しい。

僕もこれまでのキャリアで、Bのままじゃ成長はないなと思ってAにチャレンジして痛い目にあって・・という行ったり来たりをしてきた。
行ったり来たりしながら、少しづつAに近づくのが、組織人としての成長なのかと思う。
Bについては「Yellow Flag」というキーワードで随分前に記事に書いたから参考にして欲しい。




★上司も「上司元気で留守がいい」を目指せ
さて、今度は逆に上司の立場から考えてみよう。
自分の部下が「お前なんていなくってもやっていけるぜ」と言い出したら脅威ですか?でも、今の仕事をアクセクやらなくていいなら、他に色んな事できるじゃないですか。
そうならない限り、組織としての成長もない。部下が自分の仕事をどんどん肩代わりするくらいじゃないと、どうせ組織全体が競争に負けてしまう。

自分の存在意義をゼロに近づけるというのは、なんとなく変なのだが、「自分なんていなくてもいい」を目指すべきなのだ。

そのためには「自分がいなくても仕事をやってくれる人」「オレがいなくてもやっていけるチーム」を作るのが、上司の究極の仕事となる。

「部下がいつまでたっても成長しない」とボヤいている人は、ひょっとしたら単に「オレがいないと回らない症候群」なのかもしれない。


僕自身の事を書こう。
僕はもちろん「上司元気で留守がいい」がモットーで、皆に公言している。

ところで今年のお盆休み、僕は「施策一覧の作成」という、プロジェクトの鍵となる仕事を1人オフィスでやっていた。
そして本当に自分が情けなくなった。プロジェクトの立ち上げを上手くアレンジできず、この大事な仕事を部下に任せられなかったからだ。
僕はこの仕事は何度もやったことがある。でも今回もまた自分でやっていて、いつまでたっても「留守がいい」には程遠い。

道のりは遠いけれども、「留守がいい」を目指すことはやめない。



★最後に残る、上司の仕事
上司は元気で留守がいい。
でも、管理者やコーチといった「部下の能力をアップする役割」を1つずつ剥いでいき、最後に残る役割が1つあると思う。
それは、「変革リーダー」という役割だ。

「業務改革の教科書」のプロローグで「変革をリードできない管理職に価値はない」と書いた。こればかりは部下がどんなに成長し、自立したとしても、誰かが担わなければならない。

僕も上司としては無になりたいが、一方で、変革はリードできる人になりたい。



(蛇足)
まさかとは思いますが、これを読んでいる人のなかに「亭主元気で留守がいい」というキンチョーのCMを知らないほど若い人はいないですよね・・。

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