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憑依のススメ、あるいはコミュニケーションの勘所

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仕事で想像力が大事だとよく言われる。
僕は想像力のなかでも、「憑依力」が特に重要なんじゃないかと思っている。
憑依。だれか他の人になりきることである。

★コミュ力の大半は憑依力なんじゃないか?
コミュニケーション力が大事という話は、もううんざりするくらい言われている。あまりにも言われているので「そんなものいらない」と言いたい所だが、プロジェクトを成功させるためには、残念ながらコミュニケーション力がやっぱり必要となる。

コミュニケーションにも質問して引き出したり、目と目で通じあったり、色々な局面がある。その中で「自分の考えを相手に伝える」に絞ったとしても、コミュニケーション力とは、何かをペラペラと流暢にしゃべる能力のことではない。
ペラペラ喋れたとしても、ビジネスではほとんど役にたたない(新卒採用の面接官には多少好印象を持ってもらえるかもしれないが)。

仕事で必要なのは、
・相手の土台に合わせて、
・相手が理解できることを、
・相手が関心がある切り口で、
伝える能力なのだ。

仕事において、何かを伝えるのは、相手に何かをして欲しいからだ。
自分の企画に賛成して欲しいのか、財布を開いてもらいたいのか、手伝って欲しいのか、ノウハウを教えて欲しいのか。いずれにせよ、相手に行動を起こしてもらいたいから、自分の考えを伝えるのだ。

だとすると、話す内容・トーンは相手に合わせなければならない。
相手に合わせるためには、相手の状態を想像する力が必要。
それを憑依力と呼ぶ

僕自身が今よりコミュニケーション下手だった時に多かったのは、
・相手が知らないことを知っているものとして話してしまう
・相手にとって当然ではないことを、前提にして話を進めてしまう
・自分ではそのことに気づいていない
などで、よくムッとされた。
こっちは普通に話をしているつもりでも、話している相手がよく怒っていたり、言っていることが伝わっていなかった。何度も痛い目にあって自分なりに考えたところ、相手の状態を全く想像していないことに気づいたのだ。

そこで話をする前に、相手の状態を想像する(憑依する)ことに時間を割いて、伝わるかどうかチェックするようになった。段々慣れてくると、話しながら相手に半ば憑依して、話す内容を微調整できるようになってくる。

★お気に入りの成長TIPSは「上司憑依法」
「こうやればあなたの能力がメキメキアップします」という必勝法はないと思うのだが、僕が社会人1年生の時から心がけている事を一つ紹介したい。

組織の一つ上の立場のつもりでモノを考え、判断すること
つまり、上司に憑依すること

例えば、今あなたが係長なら課長のつもりで考える。
プロジェクトのチームリーダーならプロジェクトマネージャーのつもりで、日々の仕事を判断したり、プロジェクトマネージャーに方針案を提案する。

毎日の仕事のなかでこれをやっていると、
・自分の担当タスクについて1段高い視点から判断するので、仕事の品質が上がる
・上司の悩みどころも理解できるようになるので、ブツブツ文句
  言いながら仕事しなくてすむ
・自分が昇格した時のシミュレーションになるので、昇格後に慌てずにすむ
などなど、良いことがたくさんある。

良いこと尽くめなのだが、この話の大前提として「上司の立場を想像する力=上司に憑依する力」がなければならない。

★憑依力を身につけるには、たくさん憑依するればよい

僕は「○○力を身につけるには、○○をすれば良い」という命題を信じている。
例えば、走力を身につけるには走れば良い。思考力を身につけるには、考えれば良い。

それにのっとって言えば、憑依力を身につけるには憑依すれば良い。
子供の頃から物語を読むことは、仕事をする上でも極めて役に立つと思うのだが、理由の一つとしては、憑依の訓練を積めるからである。
「あしながおじさん」を読みながら、女の子に憑依してときめいてみる。次に読んだ時は、あしながおじさんの側に立ってみる。

もっと仕事に直結して鍛えるなら、これまで書いてきたように、話す時に聞き手に憑依してみることや、上司の立場に立ってみることがやはり手っ取り早いだろう。

「憑依」という言葉はちょっと気持ち悪いけれども、「相手を思いやる」と言い換えれば、チームで仕事をする上では当たり前のことですよね。

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