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インターネットとそのガバナンスについてつらつらと

アドレス移転、の話

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現在総務省では、IPv6によるインターネットの利用高度化に関する研究会 という研究会が開催され、そろそろ取りまとめの時期に来ています。私はこの下部会議体である、「IPv4アドレス在庫枯渇対応に関する広報戦略ワーキンググループ」というところの構成員だったりするのですが、親会である上記研究会は、できるだけ傍聴するようにしていました。

第7回は12月17日(木)に開催され、そこで、IPv4アドレスの在庫枯渇時期に関する追情報などまとめ、構成員である荒野高志さん(JPNICのIPv6分野担当理事)に発表をお願いしました。ここの旨は、「中古アドレスの使いまわしができたとしても、長くないし、需要に応じた供給を期待するのは危険である」でした。

この研究会の取材を元にして書かれた記事が、月曜日にでてきたのですが、ここでは「供給に期待するのは危険」という旨とはかなり違う方向の捉え方でして、

んー。なんとも刺激的です。

これは、我々が呼ぶところの「IPアドレスの移転」を意味しているのですが、こう書かれるとドキドキします。実際、業界の皆さんが日記やtwitterで次々に声を上げていらっしゃっています。

記者の方にすると、これは一般紙読者向けに明快な表現にしてある、というところのようです。確かに、「移転」といわれても、なんのこっちゃ、かもしれないですね。ちなみには、英語では transfer。譲渡と訳すこともできますが、もう少しプレーンに「移転」という言葉を当てています。

事実関係を申し上げると、

  • アドレスポリシは、各地域インターネットレジストリ(RIR)のコミュニティのコンセンサスをベースに制定される。
  • 北米(ARIN)、ヨーロッパ(RIPE NCC)では、既にコンセンサスにいたって、施行まで完了している。
  • 我がアジア太平洋地域(APNIC)では、この2009年8月にコンセンサスに至り、その後のラストコール、理事会承認まで含め完了している。早ければ来年2月くらいに施行される。
  • 日本では、JPNICのコミュニティのコンセンサスに従ったポリシを、JPNICが施行する。コミュニティのコンセンサスは、11月のInternet Weekに併催したJPNICオープンポリシーミーティングで得られ、現在ラストコール中。
  • ラストコールが満了したら、「実装勧告」という形でJPNIC事務局に示され、事務局で施行検討・準備に入る。但し、本件非常に大きな方針転換を含むので、念入りに施行検討を行うことになる。この辺のJPNIC事務局の考え方は、3月に、前々回のAPNICミーティングの模様を書いたときに、少し書きました。

記事を読むと、JPNICが積極的に移転による延命を推進しているように思えるかもしれませんが、そうではありません。移転を含む、需要引き当てのための再循環による効果は限定的だと考えています。

闇取引の横行などで台帳が実態を示さなくなるような状態を懸念し、台帳上の名義書き換えを実現する、という感じの考え方です。

そんなこんな書いてみましたが、やはりこれを一般紙読者層にサクッと分かって欲しいと思っても、それはなかなか難しいということになりそうです。blogのほうにたくさん書いて、それを好き好んで読んでくださる方が分かればよい、ということでもないのであれば。

今回のこの記事がひとつの例でありますが、IPアドレス在庫枯渇という問題は、IT系だけでなく最近では科学部の記者の方々からも注目されるようになって来ました。丁寧に伝えていく必要をひしひしと感じています。

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