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時事ネタ、マーケットや経済の話を、ファイナンシャルプランナーの視点で難しい話もなるべく専門用語を使わずにできるだけわかりやすく解説します。ときどき、思いついたこともそのまま書くこともあります。よろしくお付き合いください。

ユーロは崩壊するのか!?

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 昨年末からユーロが大きく値を下げています。今年に入って、ユーロは崩壊するという論調に代わってきています。山岡消費者担当大臣は「ユーロは崩壊する」「中国のバブルは崩壊する」と発言し物議を醸しだしています。本当にユーロはもうだめなのでしょうか。 

 アメリカにとってヨーロッパの通貨統合は、決して歓迎するものではありません。アメリカの基軸通貨体制を揺るがすものですから、できればユーロは排除したい存在です。ユーロ誕生時から、政治的統合なくして通貨の統合はあり得ないと、ユーロを非難してきました。そもそも世界の金融不安を作ったのはアメリカで、サブプライムローンによる証券化商品をヨーロッパの金融機関に売りさばいたのもアメリカです。リーマンショック後のこの時期に、ギリシャの粉飾の内部告発が発覚するのも不思議です。一気にヨーロッパ不安が勃発します。アメリカの格付け会社による格下げ攻撃、米英の投機筋の売り仕掛けにより、ヨーロッパはガタガタです。ユーロ崩壊のムードを作ったのは、アメリカの外交戦略を担うCFR(外交問題評議会)発行の「フォーリン・アフェアーズ新年号」の「ユーロの失敗」という記事によるもののようです。

 これだけユーロが下落しても、当のヨーロッパからは何の動きも聞こえてきません。金利が7%を超えたイタリア国債を、あれだけ国債を買うことを嫌がっていたECBが、踵を返して、イタリア国債を買い支えています。 昨年末はイギリスだけが反対している中で、独仏中心に、財政統合を前へ進めています。CDS取引に対する規制も行い、あとは金融取引課税(ドーピン税)が決まれば、投機筋に対抗することができます(イギリスの昨年のたった一国の反対票の原因がこれです)。

 もしユーロが崩壊したらどうなるのか。アメリカは喜びはするでしょうが、アメリカの金融機関もユーロにはかなり投資しています。何より中国が困ります。ユーロ崩壊の次は、中国のバブル増長による崩壊の画策です。それを知って中国は「ユーロは崩壊しない」と盛んに国際舞台で叫んでいます。山岡消費者担当大臣のユーロや中国への発言は、このタイミングで言うこと自体、言わされていると勘繰りを入れたくなります。 

 確かにヨーロッパの失業率はアメリカの比ではありません。しかし、アメリカもリーマンショック後はこうでした。ひどいものでした。それが考えられない量的緩和で乗り切っているのです。今のヨーロッパがまさに、アメリカをしのぐ規模の量的緩和を行っています。当然、ユーロが下落するのは当たり前です。その政策を知って投機筋が売り仕掛けを行うのも当然です。日本ではあまり報道されていませんが、同じ規模の量的緩和をヨーロッパは2月にも行うようです。今から投機筋が売り仕掛けをするのは当然ですね。 

 この1~3月は、ほんとうに1ユーロ=1ドルまで、ユーロが下落するかもしれません。それに対抗してドルも下げてくるようにするでしょうから、円独歩高になりそうです。確かにユーロにとっては正念場です。ここをしのげば、ユーロにとっても違う景色が展開されるのではないでしょうか。 
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