オルタナティブ・ブログ > 歌は世につれ >

ブログ初心者が徒然に思うこと、感じたことを書き始めます。

ソフトウェアの時代は終わりなのか?

»

salesforce.com CEO Marc Benioffの社内メモ 日本語版

ソフトウェアの時代は終わりなのか?

ちょうど3週間前、ビル・ゲイツ(Bill Gates)氏がMicrosoftの会長としての日常的な業務から退き、チーフ・ソフトウェア・アーキテクトの肩書きと責任を後任のレイ・オジー(Ray Ozzie)氏に移譲すると発表した。彼はなぜMicrosoftでは比較的新参者のオジーを選んだのか?オジーの考え方は「The Internet Services Disruptionインターネット・サービスの破壊力)」として広く知られている20051028日の社内向けメモの中に述べられている。そのメモの中で、彼は次のように述べている。将来のIT社会で主流となるのはこれまでMicrosoft社が提供して来たようなソフトウェアではなく、新しいパラダイムを提供することによってソフトウェア・ゲームを永久的に変えつつあるGooglesalesforce.comのような企業によって提供される「サービス」となるだろう。

GoogleYahooの両社は同じ時期に、彼らの一般消費者向けemailサービスを業務用にバージョンアップしたサービスを提供することでMicrosoft Exchangeに挑戦する意向を明らかにした。Gmail for Domains (http://www.google.com/hosted)Yahoo Business Email (http://smallbusiness.yahoo.com/email/) は、従来のemailサーバー・フランチャイズにとって強力な競合相手である。それだけではない。Microsoft Excelスプレッドッシートに対抗するものとして(http://www.google.com/googlespreadsheets/tour1.html)(www.numsum.com)(www.irows.com)、またMicrosoft Wordの対抗馬としての(www.writely.com)(www.writeboard.com)(www.tracker.com)Microsoft Officeソフトウェアの強力かつ有力な代替ソリューションとしての地位を獲得しつつあることも見逃せない。オジーは正しかった。スティーブ・バルマー(Steve Ballmer)は公然と「オジーは、誰かにペテンにかけられないだろうか」と悩んでいたが、実際にMicrosoft社は「すべての人にペテンにかけられつつある」のだ。

今年の1月、salesforce.com世界初のオンデマンド・アプリケーション・プラットフォームAppExchange (http://www.appexchange.com)をリリースした。すでに200を超える独立系ソフトウェア・ベンダーが、300以上の異なったSaaSアプリケーションを提供している。これらのアプリケーションは医療、教育、不動産、および製造業等の様々な分野における販売、サービス、サポート、ユーティリティ、ツール等、広範囲にわたっている。既に数千の顧客が、これらのアプリケーションを、単純に既存のsalesforce.comアプリケーションに追加するだけで使い始めている。日本においてだけでも既に40AppExchangeアプリケーションが提供されている。(※ http://www.salesforce.com/jp/appexchange/ を参照)

Business ObjectsAdobeSkypeなど、多くの企業が、様々なSaaSアプリケーションを提供しつつある。さらにOracleSAPの両社も、彼ら自身のオンデマンド・サービスの提供に加えてSaaS市場に本格的に参入することを明らかにしている。そして、ようやくMicrosoftは、Liveブランドの下、ビジネスソフトウェアのホスティングを開始することを発表した。

世界は変わった。誰もがサービス提供者になり、あらゆるものがサービスになりつつある。

多くの会社や企業幹部がSaaSへのムーブメントを無視し、SaaSの市場は、技術的に制約がある企業、あるいはスモールビジネスのような特定の市場セグメントに限られていると主張していたのは、それほど遠い昔のことではない。今では誰でもがソフトウェアの未来は、No Software(ソフトウェアのない世界)であり、伝統的なオフィスで生産性向上からインダストリー別、VOIPERPおよびCRMシステムに至るあらゆるものを提供する数万もの異なるサービスが主流となるだろうという見方で一致している。いまや、全ての会社および企業幹部が、認めているのだ。この広範囲に及ぶ変化の終焉の時に生き残っているソフトウェア・アプリケーションは1つもないだろうということを。市場セグメント、地理的条件に関わらず、あらゆる顧客が、彼らが望むカスタマイズやインテグレーションを加えつつ、これらのサービスを利用するようになり、その傾向は今後ますます強まるだろう。

すべてをひとまとめにしたものとしてどんなサービスがあるのだろうか?それが、The Business Web である。革新性と創造性に富み、そして最も重要な要素として顧客の成功を保証するThe Business WebMicrosoftを待っていてはくれない。

我々はすでにeBayAmazonのような企業が成功を収めているconsumer Webの存在を目の当たりにしてきた。そして今、The Business Webの主流となるだろう数々の新しいSaaSアプリケーション(http://itredux.com/blog/office-20/my-office-20-setup/)を目の当たりにしている。(しかし、これは始まりでしかない。我々は大きな変化のごく初期の段階にいるに過ぎないのだ。

The Business Webは特定の会社やアプリケーション、あるいは地理的条件によって支配されることはないだろう。なぜなら、Business Webは複合的なアプリケーションを容易に作成できる能力、つまり現在一般的に「マッシュアップ(mash-up)」と呼ばれている能力を持っていることで最もよく知られているからである。このことは、Google mapscraiglist.orgによって駆動されるマッシュアップであるhttp://www.housingmaps.com/、またはsalesforce.comGoogle mapsによって駆動されるマッシュアップであるwww.bikramfinder.comのような消費者向けサイト上でよく知られるようになった。ポイントは単純である。ビジネス・アプリケーションの将来像はお互いに会話を行い、データを共有する複数の異なるアプリケーションの集合体である。

世界中で数千人におよぶシスコシステムズ社の営業担当者のすべてが現在salesforce.com上で作業を行っていたり、メリル・リンチ社がシーベル社(CRMのプロバイダ)のソリューションを放棄する決定を下したりしたことから明らかなように、あらゆる規模の顧客がSaaSの選択を決定している。ほんの数年前までは、そんなことは聞こえても来なかった。しかし今、salesforce.com22,700社、444,000人のユーザの誰かに聞いて見てほしい。きっと同じ話を聞かされることになるだろう。

誰も時間を戻すことはできない。パンドラの箱は今開かれたのだ。Sand Hill Road(カリフォルニア州でベンチャーキャピタルが多く集まっている地域)で資金を調達できている新しいベンチャーの多くは、ソフトウェア会社ではなくサービス会社である。そして、世界中の起業家達が、The Business Webを創り出すこの新しい絶好のビジネス機会を獲得するために、自身の会社を立ち上げ始めている。

Comment(0)