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(053)巨大自動車産業の競争軸の変化への対応に注目しよう

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日産のカルロス・ゴーンさんが本年2月に社長とCEOの退任を決め、グループの次世代戦略に専念することを発表して以来、
筆者は日本の自動車産業が押し寄せるITの波=デジタル革命にどう対処していくのか? 関心を持ちました。
(053)話は、世の中の変化が自動車巨大産業をどう動かすか?について考えてみます。

デジタル革命によって、消費者行動のシフト、電動化、無人運転、所有から利用へと車を取り巻く環境は激変。
2017年に入っての3ヶ月、幾つかの企業動向から、共通して見えてくることは、「自前主義を捨て、外部の技術を自社に取り込み、競争軸の変化に対応していく」という変化です。
筆者がこの3ヵ月に関心を持った企業動向記事;

1)2月24日カルロス・ゴーンさんが日産自動社の社長とCEOの退任を決め、グループの次世代戦略に専念することを発表。

2)2月28日HondaがR&DセンターXの新設発表。
「AIxBigDataxホンダの強み」 というコンセプトのもと、これまでの「モノづくり」に加え、人と協調する新たな価値をもった「モノ・コトづくりに取り組む。
オープンイノベーションを通じ、外部との戦略的な連携を図っていくという。
Hondaと取引がなくてもロボティックスとAIの研究テーマを持つベンチャー企業、大学、研究機関に加えて、アイデアを持つ個人も含めて幅広く門戸を開放して連携を図っていく。
このニュースは何故か?大きくは報道されませんでしたが、筆者は大きな意味があると感じました。

3)2月28日 日経新聞が期待の「日の丸旅客機MRJ」プロジェクトが5回目の納期延期を余儀なくされた三菱航空機の親会社三菱重工の宮永社長は、「変なプライドは捨てろ、行きすぎた自前主義はいらない] と外国人エンジニアを大量に受け入れることを断行(航空機開発に携わる従業員の外国人比率を3年前比で3倍に)と報じた。

4)3月24日、日経新聞は一面で「大企業のM&A急増」
自前主義転換の動き、ベンチャー技術・人材取り込みと報じた。
ベンチャー企業の資金調達調査会社のジャパンベンチャーリサーチ(JVR)創業者北村彰さんによると、ベンチャー企業の資金調達伸び率上位3分野は、
ロボティックス人口知能,IoT関連とのこと、またベンチャー企業が大企業に期待していることの大半は、彼らの製品・サービスの販路開拓という販売力強化であり、このへんの補完関係成立がベンチャー企業と大手企業のアライアンスのポイントなのです。

5)3月31日経営共同基盤の社長、冨山和彦さんが、文藝春秋から
「AI経営で会社は甦る」を出版

冨山さんの書籍の中で、特に参考になると感じたポイントを引用すると;

1)多くの日本企業はAIを自分たちで開発しようとする傾向があるが
すでに有効な技術があるのだから、それをパクればよい。
仮に自社開発して成功したとしても、他社の技術が追い付いてくるまでの一瞬である
2)純粋にAI的な開発領域、よりソフトウエア的、より数理的領域は旬の人材、旬のベンチャー、旬の大学研究室と時空限定的に本気で組んで、いいとこ取りをすればよい、変動的アプローチが正しい
3)最後はフィジカルな所の勝負で、デジタル革命の主戦場がカジュアル(お気軽)な世界から人間の命に係わるリアルな世界に移っていく自動車の場合、ハードとソフトの融合が大事なポイントとなる
4)コマツのケースに置き換えてみると分かりやすい
コマツは、競争領域と協調領域の判断が的確であった
ハードのメカニズムの生産技術で圧倒的なノウハウの部分は唯一無二の強みだからその核心部分は誰にも明かさないで国内マザー工場で作りこむ
一方稼働状況のモニタリングを通じた市場動向の早期把握、盗難対策、販売与信、メンテナンス、無人運転サービスについては、外部の技術を取り入れて自前のハード技術にGPSやAIといったデジタル技術を連動させて競争力あるサービスを展開している
5)AIやロボット、IoT時代のモノづくりでは、どこまでをソフトで解決し、どの部分をハードで解決するか?両者をどう連動させるか?
ある種の「すり合わせ」が発生する
6)このハード的解決については,GoogleやFacebookが生きてきたカジュアルな世界とは全く違う論理で動いているので、デジタル革命の第二段階の主役であった彼らプレイヤーがこの勝負をものにするとは限らない。両者が揃わないと社会的に受容可能なソリューションを提供できないのである
7)こうして、外部技術を取り込むことは、日本の自動車産業が築いてきた「すり合わせ技術」がITテクノロジーとの組み組み合わせの場面で発揮できる可能性が大で、AIなど自動社産業の競争軸の変化への対応で日本の自動車企業が劣勢とは言えない、むしろ強みとなろう、、というのが冨山さんの指摘です。

トヨタの内山田会長は、
「言語の違うシリコンバレーのエンジニ」と上手く伍していく必要がある
と指摘してます。
カルロス・ゴーンさんは「日産自動車は日本の企業である」というアイデンティティーを尊重して社員の心を一つにしたから日産をDNAレベルで体質改善できた。
ルノー+日産+三菱自動車のアライアンスでトヨタ、VW,GMの世界3強と肩を並べる規模に成長させました。
筆者は、グループの次世代戦略に集中することになったゴーンさんであれば、言語が違うシリコンバレーのプラットフォーマーと賢いアライアンスを組んで、この課題を解いていかれるものと確信しております。

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去る4月4日中小企業製造業向け市場開拓の件で,従業員100名規模の気鋭コンサルティング会社の若手営業役員と同行営業しました。
顧客の待合室で、冨山さんの本「AI経営で会社は甦る」を知っている?と聞いた所、今真剣に読んでおります!!という答えが返ってきました。嬉しいじゃないですか、しっかり勉強しているんだ!!
感激です。

裾野が広い自動車産業に関わっている営業の皆さんは、部品メーカー、モジュールメーカー、完成品組み立てメーカーであろうと、消費者行動のシフト、電動化、無人運転、所有から利用へと車を取り巻く環境は激変していく。
押し寄せるITデジタル革命の波にどう対処していくのか?
自動運転技術などを取り巻くプラットフォーマーとの協調動向とその背景・本質を勉強することは営業の仕事を楽しくさせ、更に営業活動の幅を広げることになるのではないでしょうか?
冨山さんの書籍「AI経営で会社は甦る」は最適な手引書であると思うのです。

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