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「ポパイ」のリニューアルで考える時代の変化----シティボーイは復活するのか、ホントに

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 そのとき、その場所で生きる人たちの好き嫌いの指向性が時代という区切りを生む。時代の変化を敏感に察知する存在として、雑誌というのはいまでも「それなりに」機能しているのであって、リニューアルしたポパイを見ながら僕は、時代の"潮目の変化"を感じたのだった。

 ポパイの創刊は1976年6月。堀内誠一が創刊号のアート・ディレクションを担当したことでも話題になったこの雑誌は、"Magazine for City Boys"というサブタイトルを掲げ、主にアメリカ西海岸のライフスタイルを日本に紹介することで、ひとつの時代を作りあげる大きな役割を担った。

 ということを書きながら、しかし、1970年代生まれの僕がポパイに接していたのは高校生くらいで、1990年代のはじめ頃――バブル経済が崩壊する直前にありながらビジネスマンの多くが眼前に迫る危機を無視して浮かれていた頃――だった。お金に縁のない高校生にとって、バブル景気は日々の生活にまったく影響を及ぼさなかったけれど、ポパイのような雑誌を通じてその時代の空気を確実に吸っていたように思う。

 当時のポパイには、女の子の口説き方とかモテるための方法みたいな記事がたくさん載っていた(てゆうか、それしか載ってなかった気がする)。クリスマスの時期はどこそこのホテルに泊まり、何をどういう風にプレゼントすれば彼女が喜ぶかという感じの特集もあったな。要するにデートのノウハウ雑誌だったのである。"Magazine for City Boys"というコンセプトに合致していたとは思えないし(ある意味合致していたのか?)、当時の感覚を思い出してもそんなコンセプトの雑誌だという印象はない。

 つまり、一口にポパイといっても、時代によって雑誌の性格はまったく異なるわけで、あるいは、雑誌の性質が次の時代を準備するといってもいいのだけれど、どっちが先かはよく分からないのだが、何が言いたいかというと、今回のポパイのリニューアルは、何度目かの時代の変わり目にあたる時期での"変身"なのだと云うことである。

 では、21世紀始めの時代の特徴をポパイはどのように定義したのか。

 コンセプトは創刊当時にわりと近く、原点回帰の意味も込めているのだろうが、まずはリニューアル第1弾と銘打って「シティボーイのABC」なる特集を組み、新しい時代と切り結ぼうという意思を全面に押し出した。リニューアル前のポパイが、メンズノンノを仮想ライバル視するファッション誌だったことからすると、かなり大きな方向転換だといえる。

 しかし、そもそもシティボーイってなんやの? 

 そんな疑問がわくのは当然のことだ。僕もそう思った。シティボーイって。ねえ......。

 そんな疑問を想定してか、リニューアル第1弾では、ほぼ全誌面を使ってシティボーイの定義づけを行っている。アイコンとして引き合いに出されるのは、「植草甚一」「伊丹十三」「片岡義男」「YMO」「小津安二郎」「加藤和彦」「スパイク・リー」「ポール・オースター」「タモリ」「スパイク・ジョーンズ」「テレンス・コンラン」「岡本太郎」「古今亭志ん朝」「小沢健二」「山下達郎」などだ! 

 ......。凄いね。僕は凄いと思ったよ。このアイコン群を見て「ああ、はいはい。まあね、そうかも。シティボーイって云ったらこの人たちだよね」と涼しい顔をして受け流すのがどんな人なのか全然想像できない、という意味で凄いと思った。

 ともあれ、いまは「こんな時代」なのだ。少なくとも、マガジンハウスというメジャーな出版社が「これからはシティボーイですよ」と堂々と提案するような時代だと云うことだ。

 ちなみに、次号のポパイは「サマーボーイと西海岸」という特集で世のシティボーイのご機嫌をうかがう予定だそうだ。これは見逃せない(マーケティング的に)。

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