「ITmedia マーケティング」(7月17日オープン予定)の立ち上げに向けて現在、準備作業にいそしんでいます。最新のマーケティング・テクノロジーに驚嘆し、伝統的なマーケティング思想の奥深さに感嘆する日々です。

「ゲーミフィケーション」がマーケッターを幸せにする3つの理由

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 「ゲームフィケーション」という言葉を耳にして、ぱっと頭に思い浮かんだのは澁澤龍彦のことでした。彼のエッセイには、ヨハン・ホイジンガの「ホモ・ルーデンス」やロジェ・カイヨワの「遊びと人間」を引用したものがわりとたくさんあります。

 澁澤が強調する「遊び」の特徴として最大のものは「その行動自体が目的である」というものでした。人間のさまざまな活動は「遊び」の要素と密接に結びついている――つまり、人間というのは「遊ぶ人」(=ホモ・ルーデンス)であるというホイジンガの思想に澁澤は深く共感していたのだと思います。

 「ゲーミフィケーション」とホイジンガ(=>澁澤)の「遊び」の概念は、その装いこそ違うものの、その本質においては同じ種類のものだという気がします。ただ、不思議なのは、なぜ21世紀のいまになって「ゲーミフィケーション」という言葉、あるいはその言葉に表象されるコンセプトが力を持つことになったのかということです。カイヨワはいまでも時々読まれるかもしれませんが、ホイジンガを繙こうという奇特な人はそれほど多くないと思います。

 そんなことを考えていた時、「AdExcahger.com」で「Gamification Is Good: How Winning Is Changing the Web」というコラムを見つけました。筆者はデジタル・マーケティング・エージェンシー「Essence Digital」のAlastair Cole さんです。「ゲーミフィケーション」という言葉がいまになって台頭し始めた理由は、彼によると3つに絞られるようです。すなわち、
  1. ゲーム産業(たぶんソーシャルゲーム)が世界的な盛り上がりを見せていること
  2. 業務効率を追求した結果、企業の基幹業務システムがオンライン(=クラウド)に移行していること
  3. 僕たちが日々接する機器には電気信号(デジタル・パルス)が通っていて、デジタル・ゲームを想起させやすい環境が整っていること
 現代という時代には、人々がゲーム的なる状況、あるいはゲーム的なる考えをすんなり受け入れる土壌があると言えそうです。数年前(2009年)、YouTubeに「Piano stairs - TheFunTheory.com - Rolighetsteorin.se」という動画がアップロードされて世界中で話題になりました。地下鉄の階段をピアノの鍵盤に見立て、その上を歩くと音が出るようにしたらどうなるかという実験映像です。通常よりも階段を使う人が66%も増えたそうです。
 

 人間には日々の生活を「より楽しく」「より積極性を持って」行いたいという正の欲求があります。そのような欲求を具体的な言葉で表現すると、3つのキーワードに分解できるとCole さんは書いています。それが「挑戦」「達成」「協働」の3つです。 

Challenges: continually accomplishing small goals in order to reach a larger objective is a key motivation for 'players'  

挑戦:小さな達成の積み重ねは、より大きな目的の実現に向けた動機づけになります

Achievements: the rewards we receive when successful are at the core of what makes games addictive

達成:成功によって得られる報酬こそがゲームに没入する重要な要素です 

Collaboration: social teamwork and winning with others is innately appealing and easy to facilitate in today's networked world 

協働:チームワークや他人と協力することで得られる勝利といったものは、今日のようなネットワーク型社会を上手に生きるうえではとても重要な要素であるといえます

 このような「ゲームフィケーション」(=「挑戦」「達成」「協働」)のコンセプトはマーケッターにも少なくないメリットをもたらします。この点についてもCole さんは3つのポイントに絞ってメリットをまとめています。それが以下の3点です。

1.「ゲーミフィケーション」は新しいタイプの広告表現を生み出します
 
 「ゲーミフィケーション」にもとづいたインタラクティブな広告表現は、顧客との間により強い感情的な繋がりを生み出すことができそうです。ARを利用した「iButterfly」というiPhoneアプリがありましたね。日本全国の仮想空間を飛んでいる蝶をiPhoneで「捕まえ」てコレクションできるという楽しいアプリです。蝶にはクーポンが付いていて、飲食店の販促ツールとしても使われました。
 
 
2.「ゲーミフィケーション」に基づく広告は、これまでにない素晴らしいデータを生成します

 購買に至るモチベーションのトリガーといった、これまで収集するのが難しかったデータの収集が可能になりました。消費者が短時間で行う細かいアクションの追跡、計測も「ゲーミフィケーション」によって実現しています。

3.「ゲーミフィケーション」は顧客のライフサイクルにおけるどんな段階でも"エンゲージメント"を作り出します

 「ゲーミフィケーション」は、人がコンテンツをシェアしたり、推薦する欲求を刺激します。このような「一歩踏み込んだ」アクションの実現は「挑戦」「報酬」という「ゲーミフィケーション」の要素に基づくと考えられます。

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 「ゲーミフィケーション」をマーケティング活動に応用する研究はいまだ過渡期にあると思います。ただ、これからどんどん楽しい広告表現が生まれて来るのは間違いないことでしょう!
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