オルタナティブ・ブログ > 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 >

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

「ブロガリスト」宣言

»

Blogalyst=Blogger+Analyst+Catalystだそうです(参照記事)。これは私の目指す仕事にぴったりではということで、今年は「ブロガリスト」宣言をさせていただきます。と言いつつ、Blogalystという単語はまだ米国でもそれほど定着してはいないようですし、Blogalist=Blogger+Journalistと混同されてしまいそうですが。

名前はどうあれ、ブログがITアナリストのコンテンツ提供チャネルとして重要になっている点には異論はないでしょう。米国においては、個人ブロガーが業界で評価を高めて、あたかも「リサーチファームひとり」のようになっているケースもありますし、従来型のリサーチファームがレポート販売のビジネスを縮小して、ブログにフォーカスしているケースもあります。

前者の例としては、先日やったオラクルSVPのAnthony Lye氏へのインタビューで挙げられた著名ブロガーなどがいます。同氏によれば「従来型のITリサーチファームと同等以上に信頼でき、現場感という点ではより優れているとも言える」ブロガー達です。

そう言えば、先日にSalesforce.com社のイベントDreamforceに行った時も、会場の最前列に机とネットワーク付のブロガー席が用意されていました。また、記者会見終了後に同社CEOのMark Benioffと親しげに話している人、どこかで見たことあるなと思ったらこの人(Vinnie Mirchandani)でした。ガートナーをやめて「ブロガリスト」として活躍している人です。米国では、ブロガーがITベンダーから相当に重要視されていることがわかります。

余談ではありますが、ブロガー席に座っていたら、係の人が来て「あなたはブロガーなの?何というブログをやっているの?」と詰問されてしまいました(私はその時アナリストのネームプレートを付けていました)。開いていたノートパソコンのオルタナブログの画面を指して「こういう感じでブロガーとしてもやってますから」と説明してブロガー席に座り続けることができました(私の顔写真と記事中の"Dreamforce"という単語だけは認識してくれたようです)。

従来型リサーチ・ファームがブロガリスト化したケースとしては、Redmonkという会社があります。"Analysis for the People, by the People"というのが企業モットーです。通常は有償で販売するアナリスト・レポートをブログとして無償公開し、広くネット・コミュニティで議論します。そこで得られた知見を個別のコンサルティング案件で活用し、収益はコンサルティングの方で得るというモデルです。

コンテンツを無償で提供し、個別サービスで儲けるというのはオープン・ソース・ソフトウェア的なモデルと言えるでしょう。CDを無料配布し、コンサートで儲けるミュージシャンのようなモデルとも言えるかもしれません。

このようなモデルが従来型のリサーチファームのビジネスモデルを完全に置き換えるとは思いませんが(オープンソース・ソフトウェアが従来型ソフトウェアを完全に置き換えることはないのと同じ)、少なくとも小規模リサーチファームにとっては有望なモデルであると思います。また、コンテンツはきわめて安価にコピーできること、サービス(エクスペリエンス)はコピーできないこと、「群衆の叡智」を使うことでコンテンツの価値を高めることができることを考えると長期的には理にかなったモデルであると思います。

そういうことで、2009年は、テックバイザーもこの方向性でいくつか新機軸を打ち出していく予定ですのでご期待下さい。

Comment(0)