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携帯への音楽ダウンロード:どこまでがOKなのか(1)

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MYUTA関連の問題を整理するために、自分が所有するCDの楽曲を携帯電話にダウンロードして聴けるようにするという形態が、法律的にどこまでOKであるかをいくつかの例で検討してみます。話を簡単にするために、自分が買ったCDを自分で聴くために自分の携帯電話に転送するという形態に限定して考えてみます。また、当然の前提として著作権者、著作隣接権者から許諾はもらっていないものとします。ややこしい話は次回に回してまずは明白なケースから見ていきましょう。

パターン1: 利用者の家庭内で閉じた複製

1自分の家のパソコンでCDをリップして携帯電話に転送するというパターンです。いわゆる「私的使用のための複製」(著作権法30条)なので、自由に行うことができます。ただし、コピー・プロテクトされたCD(CCCD等)をプロテクトをはずして複製する等の場合は侵害行為となります(著作権法30条1項2号)。以下、コピー対象のCDにはコピー・プロテクトがかかっていないという前提で話を進めます。







パターン2: 業者による複製

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自分以外の人が複製行為を行う場合は、著作権法30条の適用を受けられません。「(略)その使用する者が複製することができる」という規定になっているからです(法律の解釈において主体(主語)がどうなっているかというのはきわめて重要です)。

わざわざ業者に頼んで携帯電話にコピーしてもらう人はいないと思いますが、たとえば、膨大なアナログLPコレクションを業者に頼んでiPodにリップしてほしいと思う人は多いかもしれません。こういう行為は私的利用のための複製ではないので、許諾がなければ違法となります。こういうリッピング代行商売がありそうでないのは、これが理由です。


パターン3: 公共の場にある自動複製機器による複製

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より正確には「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」による複製は私的使用のための複製にはなりません(著作権法30条1項1号)ので侵害行為となります。

元々は貸レコード屋の店頭に高速ダビング器を置いて借りたレコードをその場でコピーするというやり方を排除するために対症療法的に設けられた規定です。現在でも、ネットカフェにあるパソコンでiPodにリップしたりするとこの規定にひっかかる可能性があります。

さらに言うと、そもそも複製処理を行うプロバイダーは、この「公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器」に相当するのではという考え方もあります(詳しくはナガブロさんのエントリー(前半部分)を参照)。ただ、それを言ってしまうと、ネット・カフェにあるパソコンでYouTubeを見ただけでも、パソコンの(ディスク上の)キャッシュに動画コンテンツが複製されてしまうので複製権を侵害してしまうのではなどという話にもなってしまい非常にややこしいことになってしまいます。まだ、確定的な見解はないと思うのですが早く明確にしてほしいところです。なお、MYUTA事件ではこの辺がある程度クリアーになるのかと思っていましたが、判決ではこの問題については争点となっていませんでした。

細かい話は省略しましたが、だいたい基本的なところはカバーできたかと思います。ネットワークがからむパターンについては次回に書きます。

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