栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

知財、ユビキタス、企業コンピューティング関連ニュースに言いたい放題

« 2007年3月26日

2007年3月28日の投稿

2007年4月2日 »

ちょっと前のネタですが、銀河鉄道999のセリフ盗用の件で、松本零士が槙原敬之に抗議していた件が法廷に持ち込まれてしまいましたね。はたから見ている分にはおもしろいたいへん困ったことではありますが、簡単に解説します。著作権法をちょっとでも勉強していればご存じの入門編的な話です。

一般に著作権侵害が成立するためには大きく以下の3つの要件が必要です。

1.対象物が著作物(思想・感情を創作的に表現したもの)である
2.両著作物が類似している
3.元の著作物にアクセスして真似たという事実がある(依拠性)

他にも、著作権切れしてないとか、ライセンス許諾が存在しないとか、いろいろ要件がありますが、あたり前のお話なので省略します。

1.については、今回は議論の余地はないと思いますが、「サウンドロゴは著作物か?」のエントリーでも書いたようにこれが争点となることもあります。たとえば、本や新聞記事のタイトル、データそのもの、機能本位のプログラムの画面設計などは一般に著作物ではないとされています(ただし、著作物ではないからと言って勝手にコピーしてよいとは限りません。この点についてはまた後日)。

2.については、今回はかたや「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」(槙原)、かたや「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」(松本)なので客観的には類似していると言わざるを得ないと思います。

問題は3.で、槙原側は銀河鉄道999なんて読んだこともないし、そんなセリフは知らないと言っているので、松本側として取り得る策としては、

a.槙原敬之が銀河鉄道999の当該セリフ部分を知っていたことを主張
b.当該セリフがものすごく有名であり、槙原が知らないはずはないということを主張
c.類似部分が偶然の一致ではあり得ないほど多量であることを主張

a.については、槙原が999の大ファンですと公言していた雑紙記事でもあれば別ですが、本人が読んだことないと言っているのに、いや読んだことはあると証明するのは難しいでしょう。b.については、松本氏は講演テーマで何度も使ってるので槙原が知らないはずはないと主張しているわけですが、私も今回初めて知りましたし、日本人なら誰でも知っているほど有名とまでは言えないでしょう。

問題はc.です。偶然の一致かどうかは微妙なところだと思います。ただ、私見ですが、夢、時間、裏切るという言葉は歌詞の中で一般的に出てくるものですし、「AはB、BはA」みたいな対語表現も一般的なテクニックなので、槙原側に偶然の一致だと主張されてしまうと、松本側はちょっと苦しいのではと思います。

ただ、立証可能かどうかは別として、往々にして創作活動をしていると無意識下で模倣してしまうということはあるのは確かでしょう。私も昔、作曲とかをしていた時に、いいメロディが浮かんだと思って、翌朝冷静になってもう一回聞いてみると、「ありゃ、あの曲と同じじゃん」というパターンはよくありました(これ結構凹みます)。

そういう意味でいうと、無意識下で模倣したのか偶然の一致なのかは別として、既存の有名なセリフとかメロディに似ているのであれば、スタッフが指摘してあげるべきなんでしょうね。とは言え、槙原敬之くらいの大物になると、スタッフも「槙原さん、この歌詞はxxxにあったのと同じです」とは言い出せないのでしょうけど。

栗原 潔

« 2007年3月26日

2007年3月28日の投稿

2007年4月2日 »

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

栗原 潔

栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年11月
        1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30  
kurikiyo
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


Special

- PR -
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ