栗原潔のテクノロジー時評Ver2:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) 栗原潔のテクノロジー時評Ver2

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« 2007年3月1日

2007年3月5日の投稿

2007年3月6日 »

Yahoo!ニュース経由サンケイスポーツの記事によりますと、川内氏が自分の作品を森進一に歌わせないようJASRACに訴えているそうです。

これは法的には全然意味がありません。JASRACは著作権者の著作権管理を包括的に信託契約しているだけなので、特定の人に対して演奏権を許諾したり、しなかったりということはできません。川内氏ができるのは、同一性保持権あるいは翻案権の侵害として、「バース付きおふくろさん」を歌わないよう森進一側に要求する(そして、要求が通らなければ告訴する)ことだけです(ただし、曲にバースを付けるのが同一性保持権や翻案権の侵害に当たるかどうかは微妙と思われます)。いずれにせよ、おふくろさんのバースなしバージョンや川内氏の他の曲を森進一が歌うことを禁止することはできません。

もうひとつ、川内氏がJASRACとの信託契約を解除するという手もありますが、そうするとおふくろさんに限らず川内氏のすべての曲を歌うことについて、森進一に限らずあらゆる歌手が川内氏(の著作権を管理している音楽出版社)と個別に契約を結ばなければならなくなってしまい、商業音楽としては現実的にきわめて利用されにくい状態になってしまいます。

もちろん、これは法的な議論に限っての話であり、業界の礼儀として、森進一側が川内氏の許しが出るまで同氏の作品は歌わないとしたりするのはまた別の話であります。

追加:  今回の件で曲の前に「語り」をつけるのは同一性保持権の侵害に当たらないのではないかとの意見が聞かれますが、前にも書いたようにこのケースは「語り」ではありません「バース」です。通常、バースと歌の本体はひとつの曲として扱われますので、同一性保持権の侵害に当たると解釈される可能性もありかと思います(100%確実ではないですが)。

また、これは法律論とは直接関係ない個人的感想ですが、私が自分が作った曲に勝手にバースをつけられたとしたらかなり気分を害するでしょう。特に、この「おふくろさん」の例では、追加部分は「蛇足」とも私には思えるのでなおさらです。川内氏のわがままというだけで片づけられる話ではなさそうです。

追加^2(07/03/07): JASRACのWebサイトに改変バージョンが利用されることが判明した場合はおふくろさんの利用許諾できませんとのリリースが載りました。特定の楽曲を許諾しないという法的根拠がよくわかりません(なんせ、JASRAC自身のサイトに「JASRACは著作者人格権の問題には関与できません」と書いてあるくらいですし)。著作権管理事業者は「正当な理由がない限り許諾を拒否できない」とされていますので、同一性保持権侵害の疑いがあるということは「正当な理由」にあたるということかもしれません。

いずれにせよ、JASRAC的にはオリジナルバージョンおふくろさんおよび川内氏の他の楽曲の許諾を拒否したり、森進一に対してだけ許諾を拒否したりすることはできないのは当然です。ということで、もちろん、川内氏の元々の要求である「自分の曲を森進一にだけ歌わせない」という要求が通ってるわけではありません。

個人的感覚ですが、業界の重鎮である川内氏から要求が来たのでJASRAC側も(たとえポーズだけでも)何らかの対応を取らざるを得なかったということでしょうか?仮に無名の若手作曲家から同じような要求が来たらどうしてたんだろうなと思ってしまいます。

栗原 潔

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栗原 潔

栗原 潔

株式会社テックバイザージェイピー(TVJP) 代表取締役 弁理士
IT、知財、翻訳サービスを中心とした新しいタイプのリサーチ会社を目指しています。

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