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40代で同人デビューしてしまった著者がその現場を体験しつつ腐女子を自認する立場で観察する幻の腐女子市場(マーケット)。はたしてそこに市場はあるのか、ないのか。デビューは10代が当たり前なコミケの現場などで突き当たる難問に頭を悩ませ、時に大失敗しつつの体験談を含めた、観察ブログ。

発酵する共同幻想~キャラ萌えと腐女子の間で~

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「火のないところに煙をたてろ」とか偉そうなことを言いながら、
かなり大きな焚き火といっていいジャンルに引っかかっている倉澤である。
不惑を過ぎてこんなわかりやすいものにハマるとは、我ながら不覚...。 
もうこーなったらオタクとして開き直るしかない...orz というジャンルだ。

公称130万部を売り上げたという
国擬人化ゆるキャラコメディ漫画の自国キャラにハマったのだった。
なんたって萌えの対象は「自分が住んでる国」なのだから、
日常生活の、日常の風景のいたるところで萌えられる。
脳内合成機能はフル回転で、いつでもトリップでき、
ひとり勝手に幸福感を味わえる、という、
ほとんど社会生活不適合者の状態であった。
ちょっと横道にそれるが、一般人からオタクが嫌われるのは
この「自己完結型脳内幸せ回路」がしゃくに障るせいじゃないかと思う。

しかし、
その時点ではまだ、単なる「キャラ萌え」でしかなかった。
(コレクターレベルのキャラ萌えとか、
 度をこした漫画やアニメ好き、
 というだけなら、腐女子とは言わない。
 それだけなら「オタク女子」なだけだ。
 非腐女子のオタク女子の方々はこのあたりを混同されると
 困ると思われるので、補足しておく)
単体でわが国の歴史や文化と絡めて遊ぶこともできるキャラではあるが、
だんだんと腐女子の嗜好が頭をもたげる。
様々な嗜好のサイトの中から、自分の選択するものはおのずと絞られてくる。
「このカップリング(※)はなんだか納得できないけど、これは萌えだ」
とかなんとかぶつぶつ言いながらファンサイトを巡っていると、
それぞれのサイトマスターもまた、サイト内の日記などで
自らの萌えについていろいろと語っているのだった。

そういった「萌え語り」の中で、
彼女たちはそれぞれにキャラ論やカップリング妄想などを展開する。
原典をリスペクトしつつ、その隙間に自分の妄想を挿んでみる、
という各自の脳内で行われている作業は、ネット上に記録され、
それを目にした嗜好を同じくするものたちがまた、
それについての妄想を語り...というシステムで、
それぞれの妄想は共有され、補足され、増幅され、
やがて、特定のキャラやカップリングについての
共通認識ができあがっていく。
ひとりひとりの「萌え語り」は小魚の大群のように、
ゆるやかにうねりながら、共同幻想を形作り、
その共同幻想をもとにした二次創作が、細分化された市場に出回るのだ。

そうして、いくつかの共同幻想に触れて、
単体キャラ萌えから始まった私のサイトもまた、
ある一定の腐った傾向が表れてくるのだった。

 


※カップリング
 BLにおける受け攻めの組み合わせのこと。
 おもに「×」で表され、攻め×受けと表記される。
 この左右が違うだけで大騒ぎになる。

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