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ACCS久保田が著作権ほか普段感じていること

懲役10年以下について再び

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前回のブログ(著作権法違反の罰則が「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金またはこれらの併科」に引き上げられること)に対して、いくつもコメントをいただきました。中でも、「罰則を引き上げるべきだったのか」、「懲役10年を要する侵害があるのか」という疑問を呈するコメントがありましたので、今回はこのことについて書こうと思います。

罰則の強化については、実のところ、私も同じように違和感を持っています。いただいたコメントにあるように、懲役刑が3年以下だった時代に実刑として懲役3年の刑が下された事例があったかというと、私が知る限りではなかったと思います。その段階で、5年、10年となったことにはバランスの悪さを感じます。罰則を強化すれば、それに伴って著作権侵害が減るとは思いませんし、このような意見は色々な場面で主張してきました。

ただ、例えば、企業などにおいて、巨大な規模で違法コピーが意図的に行われて損害額が莫大になるような場合には、今回の罰則は想定できるかも知れません。周知の通り、デジタル著作物はネットワークを介すと、瞬時に大規模な著作権侵害が起こり得ますし、回収も削除もできません。また、犯罪組織によって、海賊版が大規模に意図的に流されて正規ビジネスが大打撃を受けるようなことがあれば、懲役10年も理屈としてはあり得ると思います。

知財をめぐる制度は、特に「人工的」「政策的」なものであり、「こうあろう」「こうあるべき」という意思を持って制度を大胆に設計変更することは、比較的容易です。著作権侵害の厳罰化は、知財立国を目指す政府として、それが必要と判断した、ということでしょう。よほどのことがない限り懲役10年というのはないと思いますが、政府がそれほど知財を重視しているというメッセージだと受け取れば、著作権侵害に対して今まで以上の圧力を受けることになるのだと思います。

(いただいたコメントに個別に返信はできませんが、いい視点のコメントもあるので、私の意見は、おいおい本文で書いていきたいと思います。)

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