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古いパラダイムと新しいパラダイムの衝突

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計画されていた2年間のプロジェクトがあと半年を残し、いま佳境を迎えています。300人体制で始まったこの大きなプロジェクトは初めてのSAFe(Scaled Agile Framework: スケールドアジャイル・フレームワーク)を導入したプロジェクトだったので、その成果に注目が集まる一方で、製品リリースを目前に控えた今、様々な問題が噴き出してきました。一言で言えば、古いパラダイムと新しいパラダイムが衝突する、というような問題です。

古いパラダイムとは、上級管理職や営業・マーケティング側が持つ従来(現在)のビジネス慣行です。そして新しいパラダイムとは、SAFeを導入したエンジニアリング側のSAFeを使ったプロジェクト管理のやり方です。

製品開発の初期段階では、皆がまだSAFeに大きな期待を寄せていたためか、両者のパラダイム(考え方や規範)の違いが問題になることはありませんでしたが、製品リリース時期が迫ってきた今、両者の違いが顕著になってきました。典型的な例がスケジュールの考え方についてです。

古いパラダイムでは、スケジュール上のマイルストーンや製品仕様が固定されています。製品のリリース時期や機能はすでに顧客に約束してしまったため、変更ができないのです。また株式市場(投資家)もそれを織り込んでいるため、もしリリース時期が遅れるようなことがあれば株価にも影響が出てきます。

一方新しいパラダイムでは、SAFeが定めるPI(Program Increment)の中で、次の10週間で提供できる機能だけを約束します。何故なら、できないものを約束しても顧客に迷惑をかけるだけだし、ましてや2年先の話をして変な期待を顧客に与えてしまっては申し訳ないからです。そのためSAFeはスケジュール上のマイルストーンや提供できる機能が10週間ごとに変更されることを前提として、「とりあえず次の10週間で提供できることだけは確約します」という考え方に立ってプロジェクトを進めます。

製品開発の初期段階では両者の違いはそれほど問題にならないのですが、リリース時期が迫ってくると両者の違いは決定的です。

新しいパラダイムは「できないものはできない。10週間前からそう言い続けている。聞く耳を持たないで勝手に顧客と約束する方が悪い」と主張し、古いパラダイムは「スケジュールは2年前から決まっている。何とかしろ」と言います。

別に古いパラダイムが悪いと言っているのではありません。それがウォールストリートを頂点とした現状のビジネスや投資の有り方なので、それはそれで尊重されるべきです。しかし両者が極端に走ると問題が大きくなります。きっと最適な解は両者の中間にあるのでしょう。

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