アジャイルや機械学習、リーンシックスシグマなど、日々の仕事の中で見て聞いて感じた事を書き留めています。

高校生の統計学とIoT事情

»

2年前、僕の息子が高校に入学した時のこと、新入生と親との初めての合同説明会で高校側が強調して説明したことが三つありました。一つ目は自分が将来就くべき職業を早く決めること、二つ目はそれに向けて進むべき大学を早く決めておくこと、そして三つ目はその大学教育費を工面するためにどのような奨学金制度があるのかを調べておくことでした。そして時給が安いアルバイトをするよりも、一時間かけて奨学金のための申込書を書く方が遥かに費用対効果が高いことをスライドを使って説明したのでした。

体育館でこれを聞いたとき、思わずのけ反り、スチール製の椅子から転げ落ちそうになりました。初めての合同説明会だったので、きっと新入生としての心構えとか、食堂の使い方とか、その程度の内容だと思っていたので、「15歳で自分の将来を設計しなくてはいけないのか⁉」と、正直驚きました。

何も息子は特別な進学校に通っているわけではありません。入学試験もない、家から歩いて10分で行ける近所の普通の公立高校です(ウィスコンシン州の片田舎)。30年以上も前のこと、自分が高校生だった頃はこれっぽっちも自分の将来など考えることもなく、のほほんと過ごしていたので、今の高校生は本当に大変だなと思いました。

のほほんとしているところが息子にも遺伝したのか、息子に何度「将来何になるつもりだ?」と聞いても、そのたびに「分からない」としか返事がありませんでした。僕は業を煮やして「自分で決められないのなら、代わりに、いつでもどこでも好きな業界に入ることができる潰しの効く職業を教えてやる。お前は統計屋になれ」と言ってやりました。すると息子は即座に「オッケー」と言って、統計学を学ぶ方向で自分の将来を決め始めました。

僕はリーンシックスシグマを生業にしているので、自分のことを「統計屋」と言っても差し支えないと思っています。その経験から、統計学が今ありとあらゆる職場・業界に広がっていて、かつビッグデータやAlを取り込んで大きく変化している現状を肌で感じています。息子が今から統計学をやっておけば、少なくともあと10年くらいは統計だけで食っていけると思ったのです。

それから2年、息子も高校3年になりました。そしてその高校では今年から新しく「地元の企業と一緒に統計を使ったプロジェクトを行う」というカリキュラムが始まりました(ちなみにウィスコンシン州の高校は4年制。日本の制度でいえば息子はまだ高校2年生)。当然息子はそのカリキュラムを取り、統計を使ったプロジェクトを地元企業と一緒に始めました。

自称「統計屋」の僕としては、息子がどのようなプロジェクトを始めたのかが気になり、息子に聞いてみたところ、これまた思わずのけぞって、食卓の椅子から転げ落ちそうになりました。

「地元のベンチャー企業から請け負ったプロジェクトなので、公けには話せないのだけれど」と念を押した上で話してくれたことは、紙のように薄いタイル状のセンサーを床に敷くことによって、どこでも、どんな面積でも、リアルタイムで、どこに人が何人立っているのかが分かり、そのタイル状のセンサーを新しく建てた建物に一時的に敷いて、「人の動きから建物の効果を分析する」というのが、高校生に与えられたプロジェクトだそうです。

息子はすでにIoTによるデータ収集や分析、客動線、スパケッティ・チャートという概念を知っていました。データ分析にはPythonを使うそうです。またベンチャー企業が何たるものか、ということまで知っていました。

父として、ここは一応「老害」を発揮しておかなくてはならないと思い、「確かに時代はPhythonだが、やはり統計はRじゃなくてはだめだ」とか「データ収集の前に仮説を立てなくてはだめだ」とか、「仮説を検証し、実行可能な改善案を導いてこそ統計学と言える」とか、「改善にはリーンやシックスシグマが必要だ」とか言ってはみたものの、逆に「フフン」と鼻で笑われて、「プロジェクトでは機械学習もやるかもしれない」と言われてしまいました。

念のため重ねて言いますが、息子が通っているのは場末の公立高校であって、決してシリコンバレーの私立高校などではありません。今の場末の高校生はここまでやるのかと知って、ショックを受けました。僕が大学で初めて統計学をやったときは紙と鉛筆と電卓で理論だけ学んだので、生のプロジェクトなんてものはありませんでした。今の高校生と比べればまさに雲泥の差です。

高校生の息子がこの調子で統計学をやっていけば、少なくとも今後10年は安泰でしょう。逆に問題なのは僕(親)の方です。こんな若い連中がたくさん出てきたら、僕は即座に首を切られ、あっという間に干されてしまうでしょう。参ったな。

Comment(0)

コメント

コメントを投稿する