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マーケターとしてベンダーとして、一貫してデータの世界で生きてきた筆者による、思考と情報整理のためのメモ。

Redmond 生活:米国トイレットペーパー考

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さて引き続き米国本社にてインターンシップ中の当方なのだが、今回はその、トイレットペーパー選びという、多くの人にとってはどうでもいい話なのである。

当方、こちらのトイレットペーパーの固さにはどうにも慣れない。形状こそ、何百メートルもあろうかという巨大なロールから日本と同じサイズのものまで多種多様なのだが、特にショッピングセンターなど公共の場のトイレのペーパーは一様に、習字の半紙みたいな感じのペラペラばかりだ。日本にてソフトな肌触りの2枚重ねペーパーと温水便座に慣れきった、部分的軟弱者な当方には、なかなかにつらい仕打ちである。よって出張の際は、念のため手荷物に 1 ロールぐらい忍ばせていることも多い。しかし今回はさすがに、数か月分ものトイレットペーパーを持参するのは合理的とは言えない。日本において公共の場所でのペーパーは薄め硬めの傾向があるので、きっとこちらでも家庭用をちゃんと選べば大丈夫だろうという希望的観測のもと、持ち込みナシで臨んだのである。

アパートに備え付けのものはアウト

当方の住まいは短中期滞在用のアパートのため、管理会社がまあまあ定期的に備品を補充してくれ、そこにはトイレットペーパーも含まれている。入居直後に確認したところ、エンボス加工が入った2枚重ねのものだったので一瞬期待はしたのだが、やはり見事に裏切られる。全くもって当方の要求水準を満たしていない代物であった。手に取った全体感としては普通に柔らかそうなのだが、肌触りは紙ナプキン並みの粗さだった。指を滑らせるとガサガサ音がする時点で、これは使うまでもなくアウトなのである。到着したての、非常におなかの調子を崩しやすいこの状況において、また中期的な視点でもまず避けておくべきアイテムである。ということで、ひととおり他の装備も確認後、足りなさそうなものをメモってまずはスーパーへ GO となった。その後、いくつか試してみたものも含めてここに感想を列挙しておく。当方と同じような、部分的軟弱者はご参考あれ。

Wholefoods Sustainably Soft

最初に行ったのが近所にあるオーガニック系高級スーパー「ホールフーズ ストア」だ。食料品も調達したかったので、まずはここを選ぶ。夜には食事の約束がありあまり時間がなかったので、その日の買い物はここで全部済ませることにした。

ホールフーズには、"365" というプライベートブランドの食料品、日用品がある。高級スーパーのホールフーズにおいては比較的安いラインである。今回購入した Sustainably Soft はそのブランドのトイレットペーパーだ。

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365 の紙製品には 2 つのカテゴリーあって、1 つは再生紙利用のもの、もう 1 つはふつうのものである。ホールフーズに来るような、セレブでエコでオーガニックな奥様的には断然再生紙なのだろうが、さすがに今回は避けておこう。再生紙ではないふつうのほうも「サステイナブリー」なソフトということで、なんだか自然にも優しそうだ。4 個入りで $3.99。ちょっとお高いが、アメリカはなぜか紙製品が全般に高いので仕方ない。パッケージには "Embossed for Ultimate Softness"、つまり究極の柔らかさを出すエンボス加工とある。横書きには、ほかの多くのトイレットペーパーで行われている塩素漂白が環境に悪影響を与えている、うんぬん。うんうん、そうだそうだ。やっぱり自然は大切にしなきゃね。

しかし、だ。。。

教訓:トイレットペーパーのブランド名が "Soft" でも油断は禁物だ。なぜなら、ほとんどのペーパーのブランド名に "Soft" が入っているからである。

そもそもなぜ「エコ」と「オーガニック」を標榜するホールフーズで、しかもそれを色濃く反映するプライベートブランドに、やわらかいトイレットペーパーを期待するという愚行を犯したのか、この時の自分の浅はかさには驚きを禁じ得ない。到着したての時差ボケと、久しぶりの日用品の単騎購入で舞い上がり、当初のビジョンを完全に見失っていたようだ。だがしかしッ! パッケージの少々オーバーな物言いに騙された感はあるものの、先進国に住む我々は、多少の不便はエコの代償として受け入れなければならないのであるッ!

Angel Soft Classic White

まだホールフーズのやつがぜんぜん残っていたのだが、別の日に洗濯洗剤を買いに立ち寄ったドラッグストアにこれが売っていて、そのパッケージに魅入られて購入した。

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6 個入りで $4.29。この同じブランドでいくつかのバリエーションがあり、棚もど真ん中のいい場所を占有している。これは売れ筋ブランドということだ。なにしろエンジェル ソフト、「天使の柔らかさ」である! パッケージ写真の赤ちゃんも、いかにも柔らかそうなタオルをふんわり頭にかぶっているではないか!! 天使のほほえみで、だ。こうはもう、ぜ~ったいに柔らかいのであるッ!!!

教訓:大原則を思い出せ! ブランド名に "Soft" が入っていても、決して信用してはならない。

またしてやられたー!! 日本だったら、こんなのもう、ほぼ詐欺なのである。ホールフーズのと大して変わらないがさがさ感。何を思ってこの会社のブランドマネージャーは Angel Soft などという名前を付けたのだろう? しかも商標登録までしているではないか。完全に名前負けである。いや、神への冒涜ですらある。実にかわいらしい赤ちゃんの笑顔が、アゲられてから落とされた当方を嘲笑する、悪魔のドヤ顔のようにさえ見えてきた。むきーッ!

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おそらくアメリカ人は、トイレットペーパーの柔らかさになど全く価値を置いていない。鈍感なのだ。当方にとっては雲泥の差でも、ヤツらには大した差ではないのだろう。だからこんなシロモノに Soft を名乗っても、だれも文句は言わない。まあソフトなんじゃないの so what ? hahaha ぐらいのもんだ。

まったくの余談だが、先のホールフーズでオリーブオイルを調達した。揚げ物用に普通のものがほしかったのだが、20 種類ぐらいあるオリーブオイルがすべて Extra Virgin でびっくりした。仕方なく Extra Virgin の中でも比較的安価で大容量なものを 1 つ購入したのだが・・・Extra Virgin のくせにぜんぜん生絞りの香りがしない。日本で買うふつうのやつと大して変わらないレベル。ここから、アメリカ人は肌触りの柔らかさと同様、オリーブオイルの搾りたての香りも区別できないことが推測される。本来 Extra Virgin オイルは用途が限定されるのだが、この地では、味や風味で区別できないがゆえに「一番いいやつ」ぐらいの、下品な扱いなのだ。

そうだ!そうだった。どんな高級なレストランに行っても、サラダには必ずでっかいペッパーミルを持ってきて、自慢げにゴリゴリやり始め、こっちから「ストップ」って言わなきゃいけないような下品な国である。真冬なのに半袖短パンで外をうろうろしている、昭和の小学生みたいな大人がごろごろいる国である。お尻も舌も鼻の粘膜も、あらゆる表皮が分厚くて鈍感この上ないのだ。

Charmin Ultra Soft

今度はさすがに反省し、ネットで調べてから出動したのである。Good Housekeeping という日用品のレビューサイトにトイレットペーパー特集があったのだが、近所のスーパーにあったラインアップを記憶しておいた中から、これに目星をつけた。テストした中では最もソフトなものの一つ、とある。いや無論、アメリカ人の XX な五感の絶対値など、もはや 1 ビットたりともアテにはしていない。しかしさすがに「自分比」は正しいだろう。つまり、たとえ当方にとっての Level 1 と Level 100 が、ヤツらにとっての Level 1 と Level 2 であったとしても、そこにある序列に変わりはないはず、ということである。

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Charmin Ultra Soft は 9 個入りで $10.99。一見高いのだが、これは「メガロール」というやつで、幅は普通だが径がだいぶ大きい。最初のホールフーズのやつが 11.8㎡、こいつが 27.7㎡なので、幅が全く一緒だとして 2 倍以上の長さがあるのだ。そう考えると単価はだいぶ安い。なお同じシリーズに "Ultra Strong" というラインもあるのだが、まさかのお尻に超ハードアタック、なわけではなく、水に強いとかの耐久性がハードなだけのようである。

教訓: 今の時代、行動する前に一度ネットで調べるぐらいは常識である。

ウルトラソフト! まあ正直、日本基準でいうと「ふつう」の上、ぐらいなのではあるのだが、日常使いでは十分以上だ。ずいぶん回り道してしまったが、これでようやくトイレの平和が守られた。塗り薬のお世話になるリスクは回避されたのだッ!!

日本の製紙技術はすばらしい

専門知識は全く持ち合わせていないので間違っているかもしれないが、硬さの好みや感受性の問題はともかく、アメリカのトイレットペーパーが硬いのは、製紙技術のレベルが低いからではなかろうかと推察している。

日本だと、ネピアに「〇〇セレブ」というちょっとお高めのシリーズがあるのだが、そのトイレットペーパー、とっても柔らかいかわりに、紙の繊維くずが舞い散りやすい。袋から出すだけでも飛散するし、使っているとペーパーホルダーまわりが粉粉としてくる。つまりここから、ふんわりとした肌触りにするためには、できるだけ紙の繊維同士の絡みつきをなくし立体的に構成する必要があるのではないか、という仮説が導き出される。その分繊維同士の接着性が落ち、ちょっとした刺激で飛散しやすくなるのであろう。

そして Charmin にもややその傾向が見受けられたのだ。日本では Charmin と同等の肌触りのものでは飛散など起きないことを合わせて考えると、日本の製紙技術が優れているといえそうだ。この仮説の確からしさは、先のレビューサイトにおけるその Charmin へのコメントからも確認できる。Charmin のネガティブ要素として "Low weight per roll (meaning not a lot of TP for your money)" という記載がある。同じ大きさ、厚さ (むしろ Charmin は厚いという評価あり) で軽いということは、繊維間の空間が大きいということに他ならない。そして、日本の「普通」のトイレットペーパーが、あの柔らかさと接着性の高さを両立しているのは、より高い技術力のなせるわざと言えるのである。ちなみに最初のホールフーズで、ティッシュボックスも大と小を 1 つずつ購入しているのだが、プライベートブランド 365 の小さいティッシュはやはりガッサガサ。一方、大きいクリネックスのティッシュはやたらしっとりしていい感じなのだが、よく見たらこいつはローション入りだった。こちらでのティッシュは用途が化粧室周りに限定されているので、ローション入りが多い。しっとりやわらかだからと言って、決して紙質がいいわけではないのである。

それはそれとして、だ。先のレビューコメントの () の中もまた、ずいぶんヒドい話である。ふんわり仕上げているから軽いのに 「払ったお金に対してゲットできるトイレットペーパーの量が少ない」 のでマイナスなのだと言う。どう考えても評価基準がおかしい。これぞまさに、アメリカ物質文明の極み、である。

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