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マーケターとしてベンダーとして、一貫してデータの世界で生きてきた筆者による、思考と情報整理のためのメモ。

企業内コミュニケーションに SNS ツールは役に立つのか?

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Facebook や Twitter などのインターネット上のソーシャル メディアが企業のマーケティングを変えつつある、らしい。広告としては消費者の時間をどのぐらい占有できるかが勝負だから、みんなが Facebook や Twitter に時間を割いているのなら、そこに顔を出すのは筋なんだろう。もちろんその場の雰囲気に合わせることも重要だ。ビーチでトロピカルドリンクを飲みながら雑談しているところに、スーツ姿のサラリーマンが名刺を持って登場したら、そりゃ興ざめである。”コミュニティ” には “仲間” として参加するのが鉄則だ。なうなう言っているところのしきたりは守らないといけない。そう、個人的には、それ以上でも以下でもない気がするのだが、B to C は今の仕事とは関係ないのでこれ以上は言うまい。

ここでの本題は、これらを企業内でのコミュニケーション活性化に使えるのかどうか、という話である。

Facebook は使っているのでそこそこ知っている。写真も投稿できるし、インターフェースもよくできていて見やすい。この種の Web インターフェースは、企業情報ポータルでなじみがあり、企業内でも使い方に違和感はないだろう。なお、多くの日本企業では、組織ツリーに従って “部門サイト” 形式のポータルを作ることが多いが、マイクロソフトでは、もちろん部門サイトも存在しているが、プロジェクト単位で誰もが気軽に作る “ワークスペース” タイプが主流だ。情報の流れは組織戦略に従い、人の行動を制約するので、こういった違いが出てくる。組織が変わりたいなら情報の流れも変えなければならないのだ。が、話がそれてきたのでこの話はやめておこう。

勤め先がマイクロソフトなので、社内のポータルには自社製品である SharePoint を使っている。かつての担当製品だ。この SharePoint に、”個人用サイト” という仕掛けがずっと前のバージョンからあり、これがだいたい Facebook とおんなじような機能を持っている。公開ページには顔写真があり、その時々のコメントを書き込むことができ、公開しているリンクやドキュメントがある。最近のバージョンだと、SharePoint 上のコンテンツにつけたタグを一覧してくれるタグクラウドや、組織ツリー表示なんてのもある。自分専用のビューでは、自分と関係のある人、自分の専門分野や興味分野を登録しておくと、関連するトピックが一覧としてフィードされる機能もあるので、自分専用のまとめサイトとしてとても便利である。

Sp_mysite

※ SharePoint 2010 の個人用サイト。この製品を担当していたのがずいぶん昔のことのように思える。

それで、これがなんで役に立つのかという話に戻るのだが、その個人をよく知ることができる、などと言うつもりはない。もちろん知って損をすることはないんだろうが、それが日常業務で重要かというとちょっと疑わしい。でも、そんなことよりもっと大きな効果がある。特定の主題 (トピックやキーワード) を軸として人のつながりが生まれること、である。個人用サイトには、自分が明示的に宣言している専門分野や興味分野の情報だけでなく、その人が SharePoint 内に散らばる情報へのブックマークとして利用しているタグ情報もあり、その人と特定の主題や情報とのつながりが集約されている。自分が必要とする情報が遠いところにあっても、キーワードと人をたどって入手することができるようになるのだ。

Subject_network

※ こんなイメージ。テーマをキーに人がつながると知識をたどりやすい。

こうしておけば、知識をわざわざ文書化してどこかにまとめておいておく必要などない。その主題に関する知識をもつ人を見つけ、直接聞きだすことだってできる。ナレッジ マネジメントの進化形である。

一方、Twitter 的なシステムの企業内における効用は、私自身、まだ想像できない。ハッシュタグを使えば主題は設定できるんだろうが、引き出される情報が限られるし、手がかりがそれだけでは、つながりの太さや質の判断ができない。つまりすべてが雑多な情報となる。Twitter はあくまで “人” を主題として外に向かって放射状に延びている、一方通行のメディアなんだろう。いい情報を持っている人が情報を発信し、それを欲する人が受け取る。発信者は有名人か知り合い、あるいはお得情報を流してくれる企業。受け取り手のマインドは単なる暇つぶしなのか?

いや、単に私が Twitter のことをよくわかっていないだけかもしれない。実は Twitter のアカウントは持っているが、1 度しかつぶやいたことがない。だいぶ前、オフィスの同僚たちと、やっぱりこれがなんの役に立つんだろうという会話を交わし、そこで初めてアカウントを作ってみた。同僚は、眠いだの腹減っただのつぶやき、私のタイムラインにそれが届いたのを見て、ほほう、こりゃ帯域の無駄だな、と言って終わりである。初めてつぶやいたのは、Facebook と Twitter を連動させることができることを知った時。ビジネススクールの同級生が反応してくれたが、やっぱり Facebook のほうが便利な気がしてそれっきりである。よく考えたら私は、独り言だとか鼻歌だとか指で机をたたいてリズムをとったりだとか、そういったことを一切しないタイプの人間なのだ。日常生活でつぶやいていない。しかし、可能性を考える上で対象をよく知らないのはマイナスだ。これからしばらく、つぶやいてみようかと思う。

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