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プログラミングでメシが食えるか!?

現場は辛いけどそれが人を成長させてくれる

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「現場」の定義は微妙ですが、システムの仕事では、設置現場、稼働現場などを思い浮かべると思います。要するに、エンドユーザを目の前にして、きちんとした状態にして引き渡す場のことです。

量産品であれば、動いて当たり前なのですが、開発ものではなかなかそうはいきません。もちろん、事前に試験環境などで十分なテストをして現場に望むのですが、それでもなかなかすんなりといかないものです。特にハードウェアや装置が関係するシステムは、実機が現場にしかないことも多く、最後に現場ではじめて本当の確認ができることも多いものなのです。

そうでなくても、システムの規模によっては間にいくつかの会社や人が挟まることがあり、エンドユーザとの意思の疎通が取れていないために、現場で大変なことになる、というケースも良くあります。

いずれにしても、お客さんとしてはお金を払うのだからちゃんと動いて当たり前と考えるもので、現場でエンジニアが試行錯誤しながら問題解決に苦しむのをなかなか理解してもらえないものです。

そんなことから、エンジニアの中には現場が苦手というタイプもいるもので、修羅場に行きたがらない人もいます。逆に普段は眠そうにしているのに、現場になると見違えるように大活躍するタイプもたまにいますが。

現場の修羅場は人を成長させてくれます。現場ではお客さんを目の前に、自分でその場で何とかしなければならないからです。準備不足で臨んだ場合は、次は決してこんな状態にはしないと思うでしょうし、その場で苦しめば、もっと実力を付けようとか、事前にできる調整やコミュニケーションをしっかりやろうと考えるきっかけをもらえるからです。そして、死にものぐるいで乗り切ったときに、お客さんや関係者との深い信頼関係が生まれるものです。

そんな現場に臨むにあたり、心に刻んでおくべきことが、「どうしましょう?」と上司に泣きつかないこと、です。開発の仕事では、当事者以外は内容を把握していないことも多く、上司と言えども「どうしましょう?」に応えられないことが多いのです。もちろん、お客さんとの関係がまずい状態なので何とかして欲しいとか、上司ならではの相談は仕方ありません。しかし、まずは自分で、自分たちでどうすべきかを考えないとならないのです。その上で判断に困ったら、上司に背景を説明し、どちらを選択すべきか、あるいは、この方針で良いかを判断してもらえば良いのです。もちろん、状況報告は必要に応じてすべきです。

私も20年も開発の仕事をしてきましたので、修羅場はたくさんありました。4徹、3徹はもちろん、どう解決して良いのか頭を抱えたり、あるいはあまりにも問題が多すぎて投げ出したくなったり、会社間の駆け引きに頭に来たり、様々なことがありました。しかし、私は入社直後からほぼ自分で何とかしなければならない立場だったため、「どうしましょう?」は記憶にある限り一度も言っていないと思います。というより、言う相手がいなかったのです。

「なんとかする」これが当社IT事業部の1つのアピールポイントです。特にベテランたちはCADシステムの開発販売での苦労や、手探りの受託開発などで、頼る人がいなくて「なんとかしてきた」メンバーたちです。なんとかするためには、技術力も必要ですが、何よりも「投げ出さない意思」が大切です。

せっかく現場で苦労して、成長が期待できる状態のメンバーたちに、すぐに助け船を出すタイプの上司もいるでしょう。基本的には、何か問題が起きているときは、上司自身が現場にいって何とかしたい気持ちになるものなのです。上手く行かなかったら責任を取らされるのは上司ですから。しかし、毎回それを繰り返していてはいつまでたっても「どうしましょう?」のメンバーから成長してくれないのです。現場の様子を想像しながらヤキモキする方がある意味精神的に辛いのですが、それでもメンバーに何とかさせる癖を付けさせる方が価値がある場合も多いものです。もちろん、お客さんに迷惑がかからない範囲で、ではありますが。

そんなわけで、私は社内でも結構冷たく、「どうしましょう?」と来られても、「自分で考えて」とあまり相手にしないことがほとんどです。もちろん、良いか悪いかの判断はします。しかし、どうすれば良いかは、私より担当しているメンバーの方が詳しいはずで、メンバーに任せる方が良いアイディアが出るものです。「小俣のメンバーへの丸投げ」は社内外で結構有名(?)なようですが、丸投げも愛の証ということで。。

今週末に、数年前に修羅場となった現場でお客さん側だった方が、来社してくれる予定です。3徹もありましたし、会社間でのもめ事もあり、現地が遠方ということもあり、純粋なソフトの仕事では私の中でトップの修羅場でした。しかし、お客さんとも正面からコミュニケーションを心がけ、プロジェクトが落ち着く頃にはプライベートの話もしあうような関係になることができました。確かきっかけは、その方が自然のムービー撮影が趣味で、カメラや映像関連も好きな私とそのあたりの話で盛り上がったあたりだったと思いますが、それと同時に、現場でインスタントコーヒーをご一緒しながら、プロジェクトの裏事情まで正直にオフレコで話し合っていたこともあります。そのプロジェクトで現場に2ヶ月以上張り付いて、一番当社側でがんばってくれたメンバーが、前述した、現場になると活き活きとするメンバーです。あの仕事で大きく成長してくれたのは間違いありません。頼りなかったメンバーが、投げ出さずにやり遂げ、自信をつけて、その後も大変な現場のある仕事をいくつもこなしてくれています。

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