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マイクロソフトに本当の「働き方改革」実現の為にやってほしいこと

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 働き方改革が話題である。いろいろな企業が取り組みを始めている。それに伴い毎週のようにあちこちで「働き方改革セミナー」が開催されるようになった。それらの主催者は多くの場合IT系企業である。その中で時々マイクロソフトの名前を見かける。マイクロソフトは今の取り組みが「働き方改革」と呼ばれる以前から「ワークスタイル変革」としてITを活用したテレワークの推進に率先して取り組んでいたから当然だとはいえるが、そうしたセミナーで話を聞くたびに違和感も感じるのだ。

 そこでちょっと改めて何に違和感を感じているか考えてみた。確かに日本におけるこれまでの働き方には変える余地が多いと思う。変えたほうが良いとも思うし変わって欲しいとも思う。しかし今のやり方は何か違うと感じるのだ。違和感を感じる理由は、ポイントがずれているからに思える。
 マイクロソフトに限らずIT企業が開催する最近の「働き方改革セミナー」の多くは、モバイルワークやリモートワークに焦点をあてている。具体的には、Web会議を使って離れた場所からいつでも仕事に参加することの提案だ。Web会議にチャットや社内SNS(最近では社内LINEとも呼ばれる)を組み合わせて、自宅や出先などのオフィスから離れた場所から「いつでも、どこでも」仕事ができる態勢こそが「働き方改革」だと説明される。

 違和感を感じるのはここだ。在宅勤務やモバイルワークができる人って、ワーカーのうちどれくらいの割合いるだろう。確かに災害発生時のBCPなどでは役に立つだろう。しかしそんな日は年に数日しかない。多くの人は毎日会社でデスクワークをしているのだ。そしてデスクワークの際は大半の時間をマイクロソフト製のOffice系ソフトを操作することに費やしている。他のメーカーならともかくOffice系ソフトを作っている会社なのだから、そのソフトを使う場所やタイミングの前にそのソフトを使っている時の働き方を変えて欲しいと願うのだ。

 オフィスワーカの中で書類を作ること、読むことが仕事のなかで中心の人はかなりを占める。彼らの日々の作業をほんの1%でも2%でも効率化できれば、その改善効果の積み上げは相当な量になるはずだ。

 具体的に言おう。IMEをもっと賢くしてほしい。目的の変換候補が常に最初にでてくれば、資料作りがどんなに楽になるか。日本語の場合、漢字入力時の誤変換問題が常に付きまとうが、業種や業界で使う用語はある程度固定される傾向があるのだから、例えば辞書を組織内で共有して学習・成長させれば、短文登録や予測変換の効率アップで入力スピードが数パーセントは向上すると思うのだが、IMEはATOKと違い辞書配信機能すら未対応だ。WORDの校正機能も不十分だ。確かに送り仮名の揺らぎのチェック程度ははやってくれるが、誤変換らしきものの候補の提示も是非組み入れてほしい。同義語の使い分けや「社員」「従業員」などの揺らぎだって自動検出は不可能ではないはずだ。

 そもそもWORDには校正チェック機能があるが、EXCELやパワーポイントに同等の機能はない。パワーポイントで文書を記述した際に、文末に句点をうち忘れることはよくあるが、このくらい機械的にチェック出来ないものかといつも思う。

 印刷機能もいつまでたっても改善されない。EXCELを印刷すると画面で見たときは収まっているセルの中の長い折り返し文章がはみ出して見えなくなってしまう。パワーポイントでは文字が枠からはみ出したり勝手に改行されてしまうことがある。何年も前からのバグだが、バージョンが上がってもパッチが出ても全く改善されないためにお客様との会議の前にいちいちチェックする手間がなくならない。全くの無駄だ。

 日本の就業者数はだいたい6500万人いるそうだ。このうち10%の650万人が大半をPCの前で過ごすオフィスワーカーとしよう。時給も安めに見積もって1000円。彼らが毎日の誤変換や印刷ズレのチェックの為に1日1分余計に働いているとすると、日本全体で毎日約1億円分の人件費分がここに費やされて計算になる。まあこれはあくまで机上での空論みたいな数字だが、そもそもチェックや確認の作業が好きな人はすくないだろう。そんな余計な作業をやるくらいなら、アイデアだしとかお客様との会話とか、それこそ早く帰宅して他の事をやりたい人が大多数のはずだ。

 最近の「働き方改革セミナー」で違和感を感じるのは、なにか優先度を間違えているように感じるからだろう。もちろんマイクロソフトが何もやっていないなんて思っていない。現在のオフィスワーカーが多くの時間を取られているメールの処理については、Outlookで自動仕分けや優先順位付けなどを学習させる取り組みもやっているそうだし、Office365では最近校正機能もレベルアップしたそうだ。IMEは音声入力を強化するとも聞くし、既にGoogle日本語入力対抗としてインターネットを使って予測変換候補をサジェストする機能もある。でも、まだまだやることいっぱいあるだろうにと思う。

 確かに自宅からSKYPEで会議に参加したり移動中にスマホのYammerで打ち合わせをするようなワークスタイルはカッコイイ。でも僕らはそんな働き方改革を求めてるんじゃない。現実にちょっとでも早く仕事を終えて早く退社できる道具が欲しいのだ。もっと泥臭くてよい。どこかのコンサルタントのように「まずは在宅勤務をやってみれば、何かが変わる」とかいう無責任な煽りにのっかるのでは無く、「とにかく早く帰れ、仕事のノルマは変えない、やり方は自分で考えろ」と言い放つ働き方改革イコール残業削減だと勘違いしている経営者ではなくて、実際に遅くまで仕事をやらざるを得ない状況にあるOfficeユーザに向かい合って「日々の目の前の作業を、ほんのちょっとでも楽」にしてほしい。マイクロソフトはそれができる立場にいるんだし、マイクロソフト以外にその立ち位置にいる企業は無いのだから。

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