マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

新聞市場を眺めてみた。 ー消費者データから見るブランドポジション(14)-

»
kotohajime_title.png
 今年の8月に、アマゾンのCEO、ジェフ・ベゾス氏がワシントンポストを買収したというニュースが飛び込んできて話題になりました。ご存知の通り、デジタル・ネットワークの時代になり、パッケージメディアがそのビジネスモデルを転換せざるを得ない状況は、世界的な規模で押し寄せています。

 その割には日本の新聞社が吸収合併されたり、倒産したりという話は聞こえてきません。デフレ傾向が続いてきたなかで、広告収入こそ減少傾向にありますが、意外と販売収入は減っていないようです。多分、新聞宅配という日本の特殊な状況によって、今の新聞業界は支えられているのかも知れません。

 ライフメディアの調査によると、紙の新聞をほぼ毎日読んでいる人は41%。ときどき読んでいる人を加えると約67%という結果でした。また、読んでいる人の購入方法は85%が「定期購読(自宅)」という結果だったそうです。(ご興味あるかたはこちらをご参照下さい。→ http://ebook.itmedia.co.jp/ebook/articles/1310/16/news076.html

 というわけで、今回取り上げる市場は「新聞市場」です。


【新聞ランキング@ぺるそね】

 シングルソース・消費者パネル「ぺるそね」の回答者30,473人中、購読している新聞に回答してくれた方は21,054人でした。これは全体の69.1%にあたります。ライフメディアの調査では、約67%がほぼ毎日〜ときどき読んでいるという結果でしたので、誤差が2%程度ですね。インターネットユーザーで新聞を購読している方は7割弱ということでしょうか。

 ランキングを見てみると、朝日新聞、読売新聞がほぼトップに並び、この二紙が二大全国紙ということになります。日本経済新聞が3位に入りました。ぺるそねの回答者にビジネスマンが多いためだと思います。でも日経は、経済専門紙というよりも一般紙に近いポジションになっているようです。以下、中日新聞、毎日新聞、産経新聞と続きます。

 中日新聞、北海道新聞、東京新聞、西日本新聞、中国新聞、河北新報は、地方紙、または地方ブロック紙で、エリアを限定して発行されている新聞です。例えばぺるそねで居住エリアが北海道の方1,576人中、北海道新聞を選んでいる方は840人で、占有率は53.3%となります。首都圏エリアにずっと住んでいると実感がないのですが、地方紙、地方ブロック紙はそのエリアの住民から絶大な支持を得ていることがわかります。

新聞ポジショニング.001.png


【平均年齢×平均男女比でポジショニング】

 ベスト15の新聞を平均年齢×平均男女比率でポジショニングしたのが下の図です。こう見てみると新聞が男性寄りのメディアであることがわかります。そこを狙ってのことでしょうが、スポーツ紙は完全に男性向けのメディアですね。

 地方紙、地方ブロック紙を除くとほぼすべての新聞が年齢層の高い男性のエリアに集まっています。このまま行くと、新聞というのはターゲットが絞られたクラスメディアになってしまうかも知れません。例えば「アナログ志向の強い、高年齢層の男性をターゲットにするなら、新聞が向いている」みたいな話を、広告代理店の社員から聞かされることになるような気がします。

新聞ポジショニング.002.png


【平均年齢×平均世帯年収でポジショニング】

 同じくベスト15の新聞を平均年齢×平均世帯年収でポジショニングしたのが下の図になります。平均世帯年収がダントツに高いのが日本経済新聞です。次いで、といってもかなり離れて朝日新聞が二番手に付けています。最も低いのは北海道新聞で、地方紙、ブロック紙は年収の低いエリアに集まっています。それ以外はほぼ平均付近に集中しており、世帯年収の高低と新聞購読についての相関はなさそうです。

新聞ポジショニング.003.png


【日本の新聞はどうなるのか?】

 さて、私もメディア研究の専門家ではないので、日本の新聞がどうなるかについて、公に書けるようなネタはないのですが、生活者が欲しいメディアと新聞社が提供しているメディアにギャップがあることだけは感じています。それは、デジタルか印刷物かだけの問題ではないような気がします。新聞が今のような形になって、一体どのくらいの年月が経っているのでしょうか。まず、新聞自体を再定義することが必要なのかも知れません。

 2009年のTEDで、新聞に関して興味深いプレゼンテーションがありました。「デザインは新聞を救えるか?」。話題になったプレゼンテーションなので、見た方は多いかも知れませんが、ポーランドのデザイナー、ジャチェック・ウツコさんの新聞のリ・デザインに関するプレゼンテーションです。


 彼が目指した新聞はポスターのような新聞でした。彼のデザインによって東ヨーロッパでの新聞発行部数が驚異的に伸びていきます。日本で同じような方法が通用するかどうかはわかりませんが、少なくとも「アナログ志向の高齢の男性」以外の層にもしっかりアピールできるのではないでしょうか。

 情報があふれかえる時代。本来の新聞の使命がいまほど求められている時はないのかも知れません。洗練されたメディアとしての新しい新聞の姿を、ぜひ見てみたいものです。


*データは「ぺるそね」調べ。2013年8月 n=30,473
*「シングルソース・消費者パネル ぺるそね」は30,000人の150問にわたるアンケートをデータベース化し、あらゆる角度から分析できるサービスです。利用料金は3,500円〜と手軽にお使いいただけます。
*無料でぺるそねの分析機能を利用できる「フリープラン」のサービスを開始しました。
*「シングルソース・消費者パネル ぺるそね」の詳細はこちらへ。

Comment(1)

コメント

若島正浩

ウツコ氏のプレゼンテーション映像をみましたが、それほど斬新なデザインだとは感じなかった。記事では「ポスター化」と言っていますが、最近増えているデザイン重視の雑誌と何が違うのか、という感じですね。デザインの要素はマーケティング上重要なことは否定し難いですが、週刊誌や月刊誌ならともかく、毎日々々(日本の新聞社の多くは1日2回!)ニュースを放り込んでる新聞でこうしたポスター的なデザインを定型化するのは、少なくともニュース面では物理的(時間的)に至難のワザでしょう。日曜版とか1.5報以下のまとめ記事のような紙面など、編集期間が少なくとも数日取れる面でないと、いくらデザイナーを大量に投入しても無理でしょうね。この際、一次ニュースを捨てるというなら可能かもしれませんが、それは速報性を捨てることを意味します。それなら週刊誌になればいいわけで、新聞の存在意義の重要な柱の一つを放棄することになりかねない。悩ましい問題です。

コメントを投稿する