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マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

「2013年 よげんの書」を公開します。(その4)

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 私の所属する株式会社コプロシステム 商品計画研究所が、今年の1月に開催したマーケティングセミナー「2013年 よげんの書」は、その年の消費者トレンドがテーマでした。内容はデータや事象からその年におこりそうなことを20項目挙げ解説するというものです。前回は年収や可処分所得の経年変化からよげんを5つ解説しました。今回で完結です。ご興味あるかたはこちらからご参照下さい。



【前提のおさらい】

 世帯年収とおこづかい(可処分所得)の時系列変化です。2007年〜2011年は「ブランドデータバンク」、2011年〜2012年は「ぺるそね」のデータを使用しています。

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 2012年の平均世帯年収は590万円で、2007年〜2012年の下げ幅は12.4%になります。一方平均おこづかいは2.61万円で、こちらの2007年〜2012年の下げ幅は33.4%です。平均世帯年収にくらべおこづかいは激減しています。

 基本的には収入の減少傾向は続いており、2012年に下げ止まる気配は見られませんでした。収入や可処分所得において、格差社会が進展し、多くの分野で二極化する流れが加速していると考えられます。


【20のよげん】

前回の続きから始めます。今回は予言(16)〜予言(20)をご紹介します。

 予言(16) バイタルサインの見える化で、健康管理ニーズが顕在化する。
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 誠ブログを読まれる方なら、すでにご存知のお話しでしょうが、Nikeの「Fuelband」がアメリカでヒットしています。自分自身の運動量のログがスマホに送られ、それをわかりやすく見える化することで、健康管理が手軽に、しかも楽しくできます。

 この流れが日本にもやって来ます。様々なサービスが立ち上がり、サービスと連動したデバイスが発売されます。(現在すでにいくつかのデバイスが発売されています)携帯電話ユーザーの半数以上がスマホを使っており、今後も増え続けて行くわけですから、間違いなく市場は伸びていくでしょう。

 今後利用できるセンサーが増えて、様々なバイタルサインを検出できるようになると、成人病、成人病予備軍の方達が、日常的にスマホを使って健康管理できるようになります。意外とこれがキラーサービスになるかも知れません。


 予言(17) パソコンからタブレットの流れが加速する
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 調査会社のNPD DisplaySearchによると、2013年のノートPCの予想出荷台数は2億700万台、一方タブレットは2億4000万台となり、タブレットがノートPCの出荷台数を上回る見通しとなりました。

 タブレットが普及することによって、メディアの境界線の破壊が進みそうです。雑誌、新聞などの印刷のメディアから、CD、DVDなどのパッケージメディアまで、すべてのメディアがタブレットに飲み込まれます。広告やマーケティングのメディアとして、タブレットがその中心に位置づけられるようになるのも、それほど遠い日ではなさそうです。


 予言(18) リアルタイム情報で人々が行動するようになる
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 携帯電話の普及は人々の待ち合わせの方法に変化をもたらしました。携帯電話普及以前、待ち合わせの場所と時間は、事前に詳細に決められていたのが、携帯電話登場後は、大まかな時間と場所を決めれば、その場で携帯で話して落ち合えるようになりました。

 それが今ではスマートフォンによって、場所の情報について調べることも、人との連絡も、すべてがその場でできるようになりました。さらには位置情報を利用したチェックインサービスやプッシュで配信されるお買い得情報などがリアルタイムで提供されるようになると、今、この場の情報を元に人々が行動するようになるのではないかと思います。

 ビジネスの現場でも同様のことが起こりそうです。移動中に様々なことが調べられたり、連絡がとれるようになると、外で仕事するのが当たり前になり、自分自身が所有するスマートフォンやタブレットをビジネスに使う人々が増えるでしょう。

 日本では「セキュリティ対策を優先し、柔軟なワークスタイルの実現が遅れている」と指摘される声もありますが、ビジネスマンのニーズと企業の論理のコンフリクトが今年あたり起こってくるかも知れません。


 予言(19) 協働時代への胎動が始まる
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 「イノベーションは他人との協働によってもたらされる」というのは事実だと思います。スティーブジョブズもアップルのイノベーションについて、「イノベーションの出所は、廊下で出くわしたり、夜の10時半に新しいアイデアが浮かんだからといって電話をし合う社員たちだ...」というような発言を遺しています。

 組織を超えて、企業という枠を超えて、社会の課題を解決することがビジネスになる時代が来ています。そこに必要なのは「コ・クリエーション」という発想なのでしょう。そのための考え方、環境などが整い、協働時代への胎動が徐々に拡がっていくのではないでしょうか。成果が出るのはまだ先かも知れませんが、そう言った場に、本当に専門的なスキルを持った人達が加わることで、この動きが本格化するでしょう。


 予言(20) 働き方の「再定義」が求められる
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 昨年出版されて話題になった本「WORK SHIFT」の著者、リンダグラットン氏によると、未来を形づくる五つの要因として「1.テクノロジーの進化、2.グローバル化の進展、3.人口構成の変化と長寿化、4.社会の変化、5.エネルギー・環境問題の深刻化」が挙げられています。「WORK SHIFT」では、その変化に対応するために、働き方をシフトし、主体的に未来を築くことが必要だと述べてられています。

 振り返ってみれば、日本もここ10年くらいで、人々の「働く」環境が激変しているのではないでしょうか。さらにこれからの10年を考えると、もっと激しい変化が予想されます。そんな中で、キャリアデザインまで含めた、自分自身の「働き方」を考え直す人達が増えてくるのではないでしょうか。


 と、いうことで、「2913年 よげんの書」今回で完結しました。分けて読むより、20のよげんを続けて読む方が、流れとしては面白いことに自分で気付きました。お話しやプレゼンテーションは流れが大事ですね(^^)

今回ご紹介したスライドはよげん書の半分くらいです。実際には各よげんを解説したスライドもあります。フルバージョンは下記のサイトで、過去のものも含めて、全部参照できるようにしてありますので、ご興味のある方はご覧下さい。

2010年〜2013年の「よげんの書」はこちらから参照できます。


*データは「ぺるそね」調べ。2012年6月 n=31,444
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