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マーケティングのはじめの一歩は消費者を理解することから。変化する消費者動向をとらえるためには仮説が大事。このブログでは消費者理解のための様々な仮説をデータに基づいてご紹介。商品開発・ブランディングのコンサルタントとして、あらゆる市場のイノベーションを目指して日々格闘している大久保惠司がお届けします。

「2013年 よげんの書」を公開します。(その3)

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 私の所属する株式会社コプロシステム 商品計画研究所が、今年の1月に開催したマーケティングセミナー「2013年 よげんの書」は、その年の消費者トレンドがテーマでした。内容はデータや事象からその年におこりそうなことを20項目挙げ解説するというものです。ブログでは5項目づつ解説していて、今回は三回目です。過去二回の記事に関してご興味あるかたはこちらからご参照下さい。


また、2010年〜2012年の「よげんの書」はこちらから参照できます。


【前々回のおさらい】

 世帯年収とおこづかい(可処分所得)の時系列変化です。2007年〜2011年は「ブランドデータバンク」、2011年〜2012年は「ぺるそね」のデータを使用しています。

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 2012年の平均世帯年収は590万円で、2007年〜2012年の下げ幅は12.4%になります。一方平均おこづかいは2.61万円で、こちらの2007年〜2012年の下げ幅は33.4%です。平均世帯年収にくらべおこづかいは激減しています。

 基本的には収入の減少傾向は続いており、2012年に下げ止まる気配は見られませんでした。収入や可処分所得において、格差社会が進展し、多くの分野で二極化する流れが加速していると考えられます。


【20のよげん】

前回の続きから始めます。今回は(11)から(15)まで...

 予言(11) 香りを売るショップが登場する
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 「香り付き柔軟剤」の登場以降、「香り」という付加価値に急速にスポットライトが当たりました。現在では日用品のすべてに香りがついてる、という状況で、「防虫剤」や「掃除器具」などにいたるまで「香り」という付加価値が競合の軸になっています。最近ではスマートフォンに香りを仕込んだり、香りを楽しむ「だてマスク」が登場したり、この流れが拡大しているようです。

 この動きが香りに対するニーズが顕在化するかも知れません。でも、日用品のすべてに香りがついてくると、それぞれの香りがコンフリクトを起こすので、これをコーディネイションするという方向に行くのではないでしょうか。香りをインテリアとして捉え、様々なフレグランスを提案するようなショップが出てくるかも知れません。洗剤や柔軟剤に混ぜて自分だけの香りを楽しんだり、アロマ等の提案をしたり。香りを手軽に楽しめる市場が立ち上がるかも知れません。


 予言(12)街コンが進化する
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 少子化、晩婚化などが地域経済に与える打撃が顕在化してきました。そこで一躍注目を集めたのが「街コン」です。地域振興と男女の出会いの場である「合コン」を目的としたイベントとして、経済効果もあることから全国各地に広がっています。「街コンまとめ」によると2011年の開催数:78カ所、動員数:47,630人だったのに対し、2012年は開催数:1,745カ所、動員数:782,876人と急拡大しています。この背景にはソーシャルメディアの普及により動員コストが下がったことがあります。ある意味このビジネスモデル、フラッシュマーケティングの延長にあるという見方もできそうです。

 今年はこの動きに拍車がかかると共に、「街コン」に便乗した販促や、「街コン」を海外に展開するなどの動きが活発化しそうです。「街コン」に協賛する飲食店は、収益のレベニューシェアと新規顧客獲得のための活動ができるわけですが、当然飲食店のみならず、その地域にあるゲームセンター、シアターなどの商業施設や、図書館などの公共施設もこれをトライアー獲得の機会として活かすことが可能となります。このビジネスモデル、これから広がりを見せそうです。


 予言(13)おにぎり女子が増える
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 少し前に、電車の中で化粧する若い女性が増えたことが話題になりましたが、最近では比較的混んでいる電車の中で、コンビニの「おにぎり」などの軽食を食べる若い女性を時折見かけるようになりました。こんな若い女性達を「おにぎり女子」と名付けてみました。この人達の大半は「おゆとりさま」のようです。

 「おゆとりさま」とは1987年4月生まれ以降の「ゆとり教育」を受けた人達で、日経の石鍋仁美さんが名付け親です。この最初の世代が社会人になり、様々な意味で話題を提供してくれています。牛窪 恵さんの著作「おゆとりさま消費 -つながり・ツッコミ・インパクト-」によれば、仲間うちで、自分がどう見られるかについては細心の注意を払うが、電車で隣り合わせただけの人にはどう思われても構わない。第三者は「関係ない人」「圏外」とみなしているそうです。個人的には、この「おゆとり様」達が今後どんな消費行動を見せてくれるのか、実は楽しみにしています。


 予言(14)「婚活降り」する人が出始める
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 少子高齢化、晩婚化を背景に、数年前から時代のキーワードとなっている「婚活」ですが、東日本大震災直後に「結婚情報サービス」への加入者が増えるなどの結果、言葉だけが一人歩きした感が否めません。ブームに流された人達が、ブームに乗ってみたけれど、目立った成果も得られないことから「婚活疲れ」を起こし、「婚活降り」する人達が出始めているのではないでしょうか。

 「婚活」に熱心な人達が結婚を望みながら、かなわず、疲れ切って体調を崩す人が増加しています。これを「婚活疲労症候群」と呼んでいるそうです。心療内科などでは「婚活疲労外来」まで開設し、その処置にあたっていると聞くと、ある種社会問題化してると感じます。さてさて「婚活降り」した人達が次にどこへ向かうのか?大変興味深くはありますが、「結婚」というライフステージの転換のチャンスをスルーする人が増えると、消費行動にも大きな変化が訪れるかも知れません。


 予言(15)スマホユーザーが半数を超える
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 今回の「よげん」の中で最も確実性の高いのはこれかも知れません。多分年内にスマートフォンユーザーが半数を超えそうです。昨年急成長した「LINE」は、この急速に増加するスマホユーザーの心を最も捉えたサービスだったのかも知れません。携帯電話をスマートフォンに変えて、大きく変化するのはネットのアクセス時間が増加することと、移動しながらのアクセスの機会が格段に増えることです。

 来年以降はスマホユーザーが多数派になるわけで、スマホがマーケティングの有効なツールとして位置づけられることだけは間違いがありません。すでに、若年層を中心としたセグメントには最も強力なメディアであると言えるでしょう。数年後には大半の人達がスマホを持つ時代が来るわけですが、もしかするとスマホは、新しいタイプのマスメディアが登場するプラットフォームになっていくのかもしれません。


To Be Continued

と、いうことで、続きは次回に、残りの予言は5個...次回完結します。

*データは「ぺるそね」調べ。2012年6月 n=31,444
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